about ADULT ORIENTED ROBES
「アダルトオリエンテッドレコーズ」が、“Sound Clothes”という新たなアプローチで製作するユニセックスクロージングブランド。「洗練された大人」をテーマとし、80年代に確立した音楽ジャンルAORの象徴でもあるジャケット&トラウザーのセットアップを中心としたラインナップで展開される。最大の特徴は各々の洋服に音楽が付属していること。
PROFILE
「アダルトオリエンテッドレコーズ」主宰。土岐麻子のアルバム『乱反射ガール』や一十三十一のアルバム『CITY DIVE』のアートディレクションを手がけるなど、アートディレクターとしての一面も持つ。2018年6月、代々木上原に「アダルトオリエンテッドレコーズ」をオープン。2021年11月、“Sound Clothes”という新たなアプローチで製作するユニセックスクロージングブランド〈アダルトオリエンテッドローブス〉をスタート。
ファッションディレクター、スタイリスト。英国の雑誌『モノクル(MONOCLE)』では創刊よりファッションページの基礎を構築。2015年にはファッションディレクターに。2012年より2018年秋まで『ポパイ』のファッションディレクターを務めた。
フイナム:今回は長谷川さんが、「アダルトオリエンテッドレコーズ」の弓削さんと一緒に最近作ったというスエットの話なんですけど、ちょっとだけ話が入り組んでるので、お二人に説明してもらえたらと。
長谷川:はい。前に弓削さんが新しくブランドを始めるっていう話があって。で、そのときになにか一緒に作れたらいいですね、っていう話をしてたんですよね。
弓削:そうですね。少し前の話になりますが。
長谷川:で、それとは別の話で、フルーツサンドを作ってる友達のTOMOちゃんが、弓削さんのお店「アダルトオリエンテッドレコーズ」の近くで、友達とイベントをすることになって。
フイナム:11月21日(土)から「Tefu YOYOGI UEHARA」にて開催される「POTKUCK」ですね。
長谷川:そう。主に食べ物関係のイベントで、「AH.H」でも紹介したモロッコ絨毯とかを取り扱う「BONCHIC MAROC」とかも出るみたい。そこでTシャツでも作ったら?なんて話をしてたの。で、思いついたのが、最近ある友達がTシャツというか、グラフィックを作り始めていて、その彼に今回のTシャツを作ってもらったらいいなって思いついたんだよね。
フイナム:なるほど。
長谷川:で、まずフルーツサンドの写真を白川くんに撮ってもらって、その友達にデザインしてもらってたのね。そしたら弓削さんから、新しく始めるブランドのポップアップをやるから、何か作れないですか?っていう相談をもらって。
フイナム:ようやく弓削さんが出てきましたね(笑)。
弓削:はい(笑)。僕は僕で、「アダルトオリエンテッドレコーズ」が洋服のブランドをスタートすることなってて。〈アダルト オリエンテッド ローブス〉っていうんですけど。
フイナム:「アダルトオリエンテッドレコーズ」と同じく頭文字がAORですね。
弓削:そうなんです。そのローンチのイベントを、渋谷パルコのオープン1周年に合わせて、友達のお店「M.I.U.Nº2」でやるんです。今回長谷川さんにお願いしたのは、このイベントで販売できるアイテムを何か作れませんか?ってことで。
長谷川:プリントスエットを作ろうって話だったんだけど、時間が全然なくて。で、どうしようかなと思ったときに、そういえばフルーツサンドの写真ならあるなって(笑)。
フイナム:TOMOさんのイベント用に作ってたやつですね(笑)。
長谷川:そう。ただ、写真というかモチーフは一緒なんだけど、グラフィックは変えていて。今回いろいろデザインをやってもらってたら、正方形にレイアウトしたくなってきて、レコードジャケットみたいな感じでいいねって話になってたとこだったの。
弓削:そうなんですよね。
長谷川:そういうのも含めて、弓削さん用のアイテムにはちょうどいいかなって。TOMOちゃんの方とは、もちろん文字というか、コピーも違います。弓削さんの方は、ADULT ORIENTED ROBESっていうブランド名が入っていたり。
フイナム:このスエットのボディ、肉厚ですごくいい感じですね。
弓削:いいですよね、これ。アメリカの〈ライフ ウェア(LIFE WEAR)〉っていうところのやつなんですけど。
長谷川:最初にその名前を聞いたときに、なんか見たことあるなって思ったけど(笑)。
フイナム:たしかに(笑)。
弓削:当然、そこのやつではないんですけど(笑)。なんか聞くところによると、アメリカのペンシルヴァニア州で親子二代でやってるメーカーで、綿の栽培、染色、縫製まで全部自分のところでやってるみたい。
長谷川:気になりますよね、すごく。
弓削:ね、いいですよね。ボディとしては結構高い部類に入るとは思うんですけど、すごく気に入ってます。要するに〈チャンピオン〉のリバースウイーブみたいな感じなんですけど、独自に作ってるっていう。
長谷川:うんうん。最近、いろいろ見ていて思うんだけど、ボディはやっぱりいい方がいいですね。全然違う。いいものだと後々まで着れるし。南くんがつくった永井さんのTシャツとかすごくよかったし。プリントにも凝ってたから、25000円くらいしたけど。
フイナム:弓削さんはどこでこのボディを見つけたんですか?
弓削:これはまた別の仕事でやり取りしている人から教えてもらったんですけど、あまりにも気に入ったので、今は自分で仕入れています。その仕入れてる会社の担当の方が、ずっと野球をやってる方で、嬉しくなっちゃって野球の話ばっかりしてます(笑)。
長谷川:というのが、だいたいの今回の流れです。
フイナム:ちなみに、このスエットに書いてある、“SOUNDLY MADE GARMENTS”というのはどういう意味なんですか?
弓削:これは〈アダルト オリエンテッド ローブス〉のキャッチコピーというか。要するに音楽付きの洋服っていうことです。
長谷川:そうそう。それぞれ洋服に違う曲が付いてるんですよね。
弓削:はい。このタグはサンプルなんで入ってないですけど、製品版にはこのダウンロードコードタグが書いてあって、「バンドキャンプ」の「アダルトオリエンテッドレコーズ」のページでそれを入れると、曲がダウンロードできる仕組みになってます。
フイナム:なるほど。それは新しいですね。このパッケージもレコードっぽいしつらえっていうことですよね。
弓削:そうなんです。
長谷川:これいいですよね。シュリンクパックっていうか。
弓削:だいたいレコードのアルバムサイズになってて。なんか〈MXP〉でも、自分でシュリンクできるパックみたいのがあるらしいんですが、これはそれの〈アダルト オリエンテッド ローブス〉版ですね。
長谷川:今回作ったスエットもこれに入るんですか?
弓削:まだ試してないんですけど、、多分入らないかも(笑)。とにかくすごいごついんで、このボディは。
フイナム:〈アダルト オリエンテッド ローブス〉で作るアイテムが、このパッケージに入るってことなんですね。ちなみにどんな服を作ってるんですか?
弓削:ジャケットとトラウザーのセットアップが中心です。
長谷川:弓削さんが好きな、軽い感じのセットアップですよね。ソフトスーツみたいな!?(笑)
フイナム:アルマーニ的な(笑)。
弓削:こないだ長谷川さんにルックも撮ってもらいました。
長谷川:撮ったのはこの前の金曜日ですよね。北海道へ行く日に、朝6時に祐天寺に集合して(笑)。
弓削:はい。ウィメンズのスタイリングは一ツ山佳子ちゃんにお願いして。まぁ友達つながりですね。
フイナム:ウィメンズもあるんですね。
弓削:というか、ユニセックスなんです。サイズが1から5まであって、自由に着てもらえたらいいかなと。
フイナム:なるほど。バラでは売ってないんですか?
弓削:基本、セットアップで売ろうと思ってます。値段もあんまり高くしたくなくて、6万円アンダーにはしたいと思います。
長谷川:なんかすごく面白い感じの服でしたね。パジャマっぽくもあるし、アルマーニっぽくもあるし、ギャルソンぽくもあるし。
弓削:一応1と2がウィメンズサイズですけど、1でもけっこう大きめなので、本当に好きに着てほしいですね。ちなみにルックで着てるのはサイズ4です。
フイナム:〈アダルト オリエンテッド ローブス〉に付いてる曲についてもう少し教えて下さい。そもそもどなたが作ってるんですか?
長谷川:山下達郎さんです!(笑)
弓削:いやいや(笑)。今回は「アダルトオリエンテッドレコーズ」のレーベルから音源を出している「Poor Vacation」の楢原隼人くんです。
フイナム:今回は、ということは今後いろんな方が作っていくことになるんですか?
弓削:その予定です。〈アダルト オリエンテッド ローブス〉は洋服ごとに付いている曲が違うんです。例えば洋服のイメージが「BLEEZE」だったら、それに合うような曲がダウンロードできるという感じで。
フイナム:なるほど。
弓削:今回はセットアップだけじゃなくて、靴下とかTシャツを合わせると15型くらいあるので、15曲作ってます。ちなみにこのスエットに付く楽曲のタイトルは「マスカットサンドイッチ」です。
フイナム:以前からこういう服と音の融合みたいなことは考えていたんですか?
弓削:はい。レコードを買うと音源をダウンロードできるっていうのがここ数年当たり前になっていて、それを応用できないかなと思ったんです。というか、そもそもこういうことがやりたくて、「アダルトオリエンテッドレコーズ」を作ったんですよね。洋服を売るためのレコード屋というか。まずはレコード屋自体でも一定の評価をいただかないと難しいかなと思っていたので、2年くらいかかりましたけど。
フイナム:では念願のプロジェクトなんですね。
弓削:洋服を気に入って買ってくれる人にとっては、音源はおまけみたいなものでしょうけど、自分の好きなアーティストが作った音源が付いている服となると、逆の現象が起きるわけですよね。音楽が欲しくて洋服を買うっていう。自分はその音楽と洋服の両軸で勝負したいなって思ってるんです。
長谷川:あと個人的に前から思っていたことがあって。例えばメルカリとかで「AH.H」で撮影した画像や俺の原稿を勝手に使われているのを見ると、そもそも著作権侵害だし、なんかいやだなっていう気持ちになってたんだけど、画像を使われることがまた別の意味を持ってれればいいのかなって思っていて。
フイナム:というと?
長谷川:例えばレコードのジャケットの画像を勝手に使ったとしても、そこにはタイトルとかアーティスト名が入ってるわけで、二次使用をされてはいるけれど、一方で宣伝にもなるわけじゃない。
フイナム:なるほど。それは面白いですね。
長谷川:だからレコードのアルバムのグラフィックを作れないかなって最初思ってたんだよね。ファッション写真でありながら、レコードのビジュアルでもあるっていう。そういうことをやれないかな、って思ってたところに今回の話があったので、タイミングも良かったんだけど。
フイナム:ところで、弓削さんのところで売るスエットと、TOMOさんのところで売るロンT、写真は同じなんですけど、ちょっと感じが違いますよね。弓削さんの方は影が入ってる感じで、本当にレコードジャケットっぽくなってます。
長谷川:そうそう。ちょっと変えてます。ちなみにマスカットのサンドイッチを載せているお皿は郷古さんのところで買わせてもらいました。
フイナム:このときに紹介したものですね。
長谷川:うん。あのイメージでもう一回撮って。(エットーレ)ソットサス的な。ポストモダン。だから偶然にも今回いろんなものが繋がったんだよね。ソットサスと、フルーツサンドと、弓削さんが好きな。80年代的な世界観と、〈アダルト オリエンテッド ローブス〉の感じが一致して、いいハーモニーになったなって。
フイナム:確かに統一感ありますね。
長谷川:レコードのアルバムの写真って、ついまじまじと見てしまうと思うんだけど、それに対してTシャツとかの場合は、それを着てどこかに行ったとかの思い出があれば、同じように思い入れが持てると思うんだよね。
フイナム:意味が出てくるというか。
長谷川:そうそう。そういうことがないと、ただのTシャツでしかないし、それがつまらないなって思っていて。もっと意味のあるものである方がいい。だから音楽が聴けるっていう弓削さんの服は、意味とか深み、重みがあっていいなって思うんです。
弓削:バタバタでしたけど、なんとか間に合いそうですし、よかったです。
長谷川:はい。色々と今後楽しみですね。
長谷川:ちなみにこれは、最初に話した友達が始めようとしているブランド?というかレーベルで〈MANVAN〉っていうやつです。まだサンプルしかできてないんだけど、一応撮影してみました。
フイナム:これも肉厚ですね。
長谷川:こっちのボディは〈ロサンゼルス アパレル〉みたい。この〈MANVAN〉にすごい食いついている友達がいたんだよね。
フイナム:たしかに気になります。インスタの投稿もなんかすごくいい感じですよね。
長谷川:〈MANVAN〉は正しくは「MAN WITH A VAN」っていう意味みたいで、ようするに作業員付きの引越し屋さんっていうことなんだって。
フイナム:なるほど。例えばこういうことですね。まぁ〈MANVAN〉の話はまた今度にしましょうか。とりあえずは、今日から「渋谷パルコ」で始まってる弓削さんのイベントと、週末から始まるTOMOさんのイベントのご紹介という回でした。
弓削:はい。ぜひよろしくお願いします。
長谷川:カレンダーと、専用の額のオーダーなんかも受付ける予定なので、是非。
ADULT ORIENTED ROBES LAUNCH STORE
期間:2020年11月19日(木)~11月21日(土)
会場:M.I.U.Nº2
住所:東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷パルコ7F
電話:03-6452-5973
POTKUCK
会期:2020年11月21日(土)~11月23日(月)
時間:21日12:00~17:00 /22日11:00~17:00/23日11:00~16:00
会場:Tefu YOYOGI UEHARA @tefu.official
住所:東京都渋谷区西原3-1-10