フイナム:いよいよクリスマスですね。
長谷川:実は全く興味がないんだよね。表参道のイルミネーションを見ても、なんとも思わないし。
フイナム:ちっともくすぐられない?
長谷川:うん、全く。ケンタッキーのクリスマスメニューみたいなのがあるでしょ。あれは少し気になるけど。その程度かな。
フイナム:ずいぶんと冷めてますね。
長谷川:でもヴィジュアルを作るのは面白いけどね。設定としてのクリスマスは。
フイナム:というわけで、制作したこのヴィジュアル。まず目が行くのがパンチの効いたセーターです。
長谷川:昔、〈ラルフローレン〉でトナカイ柄かなんかのセーターを着ている広告があったんだけど、ホリデーシーズンに手編みのセーターを着るっていう気分なのか、伝統なのかは、日本にはないムードでいいなって思ったんだよね。スキー場とか別荘とかで着るような想定なのかな。それを今の時代に落とし込んでいくと、こういうアグリーセーターみたいなことになるんじゃないかな。そう思うと、さらに違う意味で面白いよね。あえてクラシックに着るのも面白そう。
フイナム:アグリーセーター? 初耳でした。ウィキで調べてみると、”欧米では、たいていの人間が「おばあちゃんからのクリスマスプレゼント」として、着るのが恥ずかしい悪趣味な手編みのセーターをもらった経験がある”、と(笑)。
長谷川:ファッションでホリデーシーズンていうか、クリスマスシーズンを楽しむのはいいよね。あくまで外側だけ。でも、ロマンチックな気分でクリスマスを楽しもうっていう気持ちは全然ないんだよね。
フイナム:昔はクリスマスってもっとロマンチックなものでしたよね。
長谷川:そうだね。パートナーがいなかったら絶望的みたいな感じだったからね。
フイナム:今ではパートナーがいても、それぞれ別に過ごすカップルも普通にいますしね。
長谷川:例えばさ、『明石家サンタ』ってテレビ番組あるじゃん?
フイナム:はい。25日にやっているやつ。
長谷川:あれって、一人ぼっちでクリスマスを過ごしている人に向けた番組だったと思うんだけど、もはやその設定が崩壊しているよね。
フイナム:一人でいることが決して恥ずかしくない。そう思うとクリスマスのあり方も変わってきましたね。
長谷川:うん。
フイナム:クリスマスの普通が変わりつつある今、なかなかアップデートしないのがクリスマスソングです。
長谷川:マライア・キャリーとワム!とジョン・レノンと山下達郎。あとは昔のポップスとか。
フイナム:そうですよね。そこで、クリスマスソングの普通を探るべく、「Adult Oriented Records」の弓削さんに山下達郎のレコードをお借りしてきました。
フイナム:まずはドゥーワップやオールディーズのカバー集『ON THE STREET CORNER』シリーズ。なかでもVol.2の「サイレントナイト」からの「ホワイトクリスマス」は、クリスマスにうってつけです。
長谷川:TATS YAMASHITA名義なんだね。たしか『ビッグウェイブ』もそうだったけど、これなんだろうね?
フイナム:弓削さんに聞いてみたところ、初期の作品によく用いられているみたいです。
長谷川:へー。
フイナム:このシリーズは、2,000円前後で手に入るのも魅力です。
長谷川:いいね。お買い得。
フイナム:そしてご存知「クリスマス・イブ」。これは1983年にシングルカットされた12インチです。
長谷川:JRのCMはいつなんだっけ?
フイナム:初リリースから5年後の1988年です。7インチが1986年に出ているので、注目曲ではあったと思いますが、人気が爆発したのはJR東海のCM「クリスマス・エクスプレス」ですかね。
長谷川:そっか。1983年の時点で”一人きりのクリスマスは寂しい”ってことだったのかな?
フイナム:一人ぼっちのクリスマス=なんか恥ずかしい、みたいな概念は、この曲に植え付けられたのかもしれないです。
フイナム:撮影でケータリングを提供してくれるTOMOさんにもCDをお借りしました。ケンタッキーのクリスマス特典として制作されたミニアルバムで、山下達郎と竹内まりやの作品を収録しています。
長谷川:そうそう。さっき俺が興味あるって言ったのは、まさにクリスマス・バーレルのことなんだよ。一度買ってみたいと思ってた。
フイナム:調べてみると、1999年の予約特典のようです。ケンタッキーと山下達郎・竹内まりや夫妻の結びつきは深く、今年もクリスマスのキャンペーンソングに竹内まりやの「すてきなホリデイ」が起用されています。
長谷川:うんうん。
フイナム:では、クリスマスにおける普通の過ごし方とはなんでしょうね。
長谷川:家で1人でレコード聴いたりするのが楽しいんじゃない。ワインでも飲みながらさ。最近、突然紅茶にハマってるから、紅茶飲んだりするのもいいかも。
フイナム:となると、クリスマスティーですか?
長谷川:なにそれ?
フイナム:スパイスや柑橘系のフルーツの入った紅茶をヨーロッパでは”クリスマスティー”と呼んで、この時期によく飲むそうです。
長谷川:知らなかった。そういうのもいいし、もっと普通のでもいいんじゃない?
フイナム:長谷川さん、たしかに最近よく紅茶を飲んでいますよね。
長谷川:元々、紅茶の方が好きなんだよね。子供の頃から飲んでいたし。ティーパックの処理とかを考えると、持ち歩きには向かないんだけど、家で飲むならいいかもね。それこそクリスマスとかに。
フイナム:お気に入りの銘柄とかあるんですか?
長谷川:この〈マリアージュ フレール〉はいいよ。手土産として買ったのが最初なんだけど、自分用にも買ってみらすごく美味しくて。
フイナム:調べてみると、フランスの老舗紅茶専門店のようですね。”紅茶の種類は500種類以上にのぼる”とあります。
長谷川:フレーバーティーがここのシグネチャーみたいなんだけど「普通のが飲みたいです」って言ったら、この「ダージリン ヒマラヤ」を勧めてくれたんだよね。「実はダージリンにも力を入れているんです」って言ってた。フレーバーティーのベースに使っているのがダージリンとか言ってたような気がする。
フイナム:普段使いには少し贅沢ですけど、クリスマスは、このぐらいの特別感がちょうどいいかもしれませんね。
長谷川:うん、そうかもね。