AKIO HASEGAWA. HOUYHNHNM

2025.8.6 Up
Style of Authentic

普通の服、普通のスタイル。

Case 139
銀座の夏、スヌーピーの夏。
「Ginza Sony Park」で開催中の、
『スヌーピーは、今日も語る。 - PEANUTS 75th Anniv. -』。

「Ginza Sony Park」で開催中の『スヌーピーは、今日も語る。 - PEANUTS 75th Anniv. -』に参加している。展示にはヒコロヒーさんや青葉市子さん、平野紗季子さんなど著名人がそれぞれの表現をしている。僕は全25巻になる『完全版ピーナッツ全集』という本を全巻託され、2週間近く寝る時間を惜しみながら、苦しみ、もがき、スヌーピーやチャーリー・ブラウンをはじめとする登場人物たちの言葉を選りすぐった。この選ぶ作業は、本当に洒落にならないくらい大変で、途中でやっぱり断ろうかと思ったほどだ。イベントを企画したソーくんと自分で、スエットにシルクで刷ったものを展示している。展示しているスエットは抽選でプレゼントをする予定だ。老若男女、全ての人が楽しめるような展示だから、一人でも家族とでも友人とでも、もちろん恋人とも。全人類に観に行ってもらいたい。

日本ではスヌーピーとして親しまれているけど、実は作品名は『PEANUTS』。可愛らしい絵はいつの時代にも魅力的で、永遠に愛してしまう存在だ。でもだからこそ、この漫画は言葉も面白いのだ。可愛らしいキャラクターが発する言葉は常に強烈でシャープ。その愛らしいルックスを最大限に活かして、見る側を油断させ、めちゃくちゃ重い言葉を贈りつけてくる。どんな言葉でも、こんなかわいい子供に言われたら、うっかり受け止めてしまう。

「そうだな....個人が組織と対立したときは、いつも組織の勝ちになる傾向があるんだ!」とはチャーリー・ブラウンの言葉。そんなことを言う子供がいるだろうか。可愛らしい絵だからこそ受け入れてしまうが、愛らしい幼児がとんでもないことを言っている。このTシャツは、この展示に合わせ、販売用に作ったもの。

好きなブランドは何かと聞かれたら〈GIORGIO ARMANI〉、そして〈RALPH LAUREN〉、〈COMOLI〉、〈SSZ〉、〈WTAPS®〉、〈C.E〉、〈VISVIM〉、〈PORTER CLASSIC〉、他にもいろいろあるけど、それぞれの良さは全く違う。そして全てが唯一無二の存在だ。

穿いているパンツは、セットアップで買った〈GIORGIO ARMANI〉。言わずもがな、ゆったりしたフォルムが美しいブランド。でもそれだけなら他にもあるかもしれない。アルマーニの服は、着ている人が歩くと生地が揺れて、止まっているときとは違う、ゆったりとした美しいシルエットを見せる。その揺れて動く姿は、エレガントそのもの。アメリカのカジュアルウェアに着慣れていると少し照れが入ってしまうが、アルマーニはそれとは全く違う出自であることが、着たときにすぐわかるくらい違う個性を持っている。でもそれを無理やり自分のテイストに落とし込んで、アメリカものと合わせて着たくなる。それはスタイリストという職業ゆえなのだろう。

僕がここまで愛してやまないアルマーニ。でも実際に着ている人は周りにあまりいないし、愛をもって接する人に今まで会ったことがほとんどない。当然、話をして盛り上がれる友人も少ない。きっとそれは少し上の先輩たちの服でもあるからだろう。そしてアルマーニをよく知っている人は、間違いなくその魅力をしっかりと理解している。

身近でその魅力をもっとも理解しているのは僕の師匠。少し前に師匠と某アパレルの重役の方と、3人で寿司屋に行った。正確には連れて行っていただいた。そこでは近況報告もあったのだが、当然、アパレルならではのファッション談義もあった。江戸前を堪能し、近所でお茶をしようとなって、酒も飲まずに服の話をした、ある夏の夜。

かつて、紀尾井町の目抜き通りにアルマーニの店はあった。ブランドのブティックとして君臨しているかのような威風堂々とした存在に僕にには見えていて、誰がどうみても眩しすぎる存在。恐れ多くて、僕は店に入ることもできなかった。

当時、その店のある通りを歩いていた僕の師匠は、店から出てきた客の男とすれ違ったという。その男は鋭い眼光で、力強い印象。明らかに常人ではない存在感だったという。そしてその男の持つ色気が、着ている服を魅力的なものに魅せていたという。その服はおそらくアルマーニ。いや、間違いなくアルマーニだっただろう。一歩前に出るたびに揺れて動くビスコースは、まるでショーを見ているかのごとく、アピールが強く魅力的。その男とその服、それぞれが魅力を引き出しあって、一つの世界を作っていたという。

揺れて動いて美しく見えるというアルマーニの服の魅力は、この撮影の時にも感じた。生地の選び方とパターン、その組み合わせが生む美しいドレープ。歩くと立体的にシルエットを作りだすなんて服は他に見たことがない。

正直、このパンツはすごく高い。ジャケットも合わせたらファッション業界の人ですら引く金額だ。だからかなり迷ったが購入した。ファッションの仕事をする者として、そんなことでビビってたら、誰がこの服の魅力を伝えられるのか。実感を伴わない提案は何の価値もない。実際に着て判断する、それが大事だと僕は思う。ちなみにこれはシルク100%。化学繊維が多いこのブランドにおいて、天然素材であったことも購入した大きな理由かもしれない。

合わせているのは今回のイベントのために作ったフォトTシャツ。イラストのTシャツはあったとしてもフォトTというのはなかなかないだろう。いつも一緒に仕事をしているフォトグラファーの白川青史によるもの。おじさん二人でぬいぐるみを持って街を彷徨い、撮影をし、モノクロで重厚な写真を撮った。

スヌーピーものの服は世の中にたくさんあるけど、着る人のことを全く考えてくれていない。たいていおじさんが着ていたら恥ずかしくなってしまうものしか出回っていない。だからこれを作った。写真の下に書かれているのはスヌーピーの言葉。「誰にだって希望は必要だ…」。もちろん、子供や女性が着てもかわいいに違いない。そもそもこの展示は子供からお年寄りまで、男女問わず楽しめるはずの企画だから。

このTシャツは、6月に開催された世界最大級のメンズファッション国際見本市「ピッティ ウオモ」に行ったときに、フィレンツェのお土産物店で購入したもの。細かいボーダー地がちょっと洒落た一着だ。こう見えて「MADE IN ITALY」。「AH.H ONLINE STORE」にて販売予定。

スヌーピーは、今日も語る。 - PEANUTS 75th Anniv. -

会期:2025年7月16日(水)〜8月11日(月・祝)

開園時間:7月16日(水)-7月28日(月) 10:00-20:00
7月29日(火)-8月6日(水) 11:00-19:00
8月7日(木)-8月11日(月) 10:00-19:00
1/2 (Nibun no Ichi) は11:00 - 21:00 (LO 20:00)

場所:Ginza Sony Park : B3/B2/3F/4F

入場:日時指定前売券 一般 1,300円 中学/高校生 800円 小学生以下無料
当日券 一般 1,500円 中学/高校生 1,000円 小学生以下無料

https://www.sonypark.com/activity/010/

INFORMATION

Ginza Sony Park www.sonypark.com/activity/010/

STAFF

Direction & Styling & Text_Akio Hasegawa
Photograph_Seishi Shirakawa
Hair & Make-up_Kenichi Yaguchi
Production_Ryo Komuta

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