AKIO HASEGAWA. HOUYHNHNM

2025.10.15 Up
Style of Authentic

ノルウェーの普通。

Case 144
フグレンのファウンダー、アイナールさん。
ノルウェーのオスロでスタートした「FUGLEN」は今や日本、韓国、インドネシアに店舗を構えるグローバルなコーヒーショップに成長した。その先頭をひた走るのが、ファウンダーのアイナール・ホルテさんだ。

文:小牟田亮

オスロの市街から少し離れた場所に、焙煎所が併設された「FUGLEN COFFEE ROASTERS」はある。この近辺には他にも、人気のピザ屋があったり、クリエイティブエージェンシーのオフィスがあったりして、なんだか気がいい場所だ。

市街地にある「FUGLEN」とはまた違った雰囲気で、開放的でリラックスしたムードが漂っている。

世界中を飛び回っているアイナールさんに会いたくて、なんとか少しだけ時間をとってもらった。

アイナールさんはノルウェーにおける2007年のバリスタチャンピオン。その年のコーヒーの世界大会が東京で開催されることになり初来日し、そのときに見た日本の文化や風土に感銘を受けて、いつかこの国でお店をやりたいと固く心に誓ったそう。

帰国したアイナールさんは、1963年に創業した街の小さなカフェを買い取って、今の「FUGLEN」をオープン。その手法は斬新かつ鮮やかで、コーヒーだけではなく、バーのコンセプト、そして家具の部門をミックスさせ、クラシックなカフェだったオリジナルの「Kaffefuglen(カッフェフグレン)」を大胆にリブランディング。コーヒーが中心にあるカルチュラルなスペースをオープンさせた。そして初志貫徹とばかりに、オスロの次に東京にお店をオープンすることになったのが2012年。以来13年間で、日本のお店は6店舗にまで数を増やしている。ノルウェー発の「FUGLEN」が日本でこんなにも進化、発展したのは創業者の熱い想いがあったからなのだ。

ちなみに、元々はエコノミクスの世界にいたようで、その手の戦略立案はお手のもの。いまはサプライチェーンの構築などにも気を配っているそうだ。

「FUGLEN」でコーヒー豆を調達して焙煎しているのは、ノルウェーのオスロと、日本の登戸の2箇所。これだけでも「FUGLEN」にとっての日本という国の重要性がわかるというものだ。ここで焙煎した豆は、オスロで使うだけではなく、韓国・ソウルのお店にも送られているそう。長い時間をかけて異国に届けられるわけで、生豆を保管する倉庫は空調と湿度が細やかに管理されている。

ちなみに「FUGLEN COFFEE ROASTERS」で焙煎を行う日は決まっていて、月曜日と木曜日の週2日。この日は焙煎日ではなかったけれど、店内には香ばしくもフルーティな香りが充満していて、コーヒー好きにはたまらない空間となっている。

FUGLEN COLD BREW 60クローネ(900円)

「FUGLEN」のコーヒーは”浅煎り”。コーヒー豆が本来持つ果実味や花のような甘い香り、透明感のある後味が楽しめる。初夏のわりにはかなり暑かったこの日は、みんなでCOLD BREW(水出しアイスコーヒー)をいただいたのだけど、これが本当に美味しかった。ほのかに甘くて、クリーンで、フレッシュな味わい。

浅煎り、中煎り、深煎りそれぞれにファンがいるとは思うけど、ノルディックスタイルはライトローストの浅煎りが一般的だそう。浅煎りをするとなると、豆そのものの質が良くないとコーヒーとして成立しないというのを聞いたことがある。長い時間煎っていると、繊細な風味は消えていってしまうという理解で合っているのだろうか。ラーメンは塩ラーメンが一番難しいなんていう話を思い出した。

今でこそ豆にこだわるコーヒー屋さんはたくさんあるけれど、「FUGLEN」は最初からその信念がまったくブレていない。高品質の豆があってこそ、という力強いメッセージは今後もきっと変わらないだろう。

このお店の家具も、もちろんノルウェーのヴィンテージもの。柔らかさと力強さが同居した独特な味わいがある。

この日、アイナールさんが着ているのは〈HELLY HANSEN〉の大定番、オーシャンフレイジャケット。街でも着られるし、海上でも当然のように大活躍できる、ブランドを象徴する一着だ。

ノルウェーでの〈HELLY HANSEN〉は、日本で思うよりもずっと国民の生活に深く根付いている。一家に一着、必ずレインコートが置いてあるほどだ。幼い頃から当たり前のようにそれが家にあるわけで、ある種の原風景のようなものなんだと思う。そして実はプロユースのワークウェアなんかも作っていて、働くひとたちの暮らしをしっかりと支えている生活必需品でもあるのだ。

海外にも出店し、国外でも活躍するアイナールさんも、地元に戻ったら自国のブランドである〈HELLY HANSEN〉のジャケットを着て、美味しいコーヒーを飲んで、リラックスした時間を過ごす。グローカルという言葉があるけれど、まさにそれを地で行くようなライフスタイルなんだろうなと感じた。

防水透湿性のある2層構造の生地には、リサイクルナイロン(リサイクル原料率53%)を使用し、環境に配慮している。襟部分の前立てが高く、保温性や水の入りにくさが向上、首まわりのフィット感を調節しやすいのも魅力だ。〈HELLY HANSEN〉オーシャンフレイジャケット ¥40,700(HELLY HANSEN)

1930年代の建物をリノベーションして、2018年にオープン。金曜日にはライブなども開催される。2階はコミュニティスペースとして活用されている。

「Gamlebyen」は旧市街を意味するノルウェー語。

アイナールさんは日本から時間の大切さを学んだという。四季の移ろいを大切にし、自然を慈しむということ。コーヒーを通じてサステイナブルな社会を形成するという「FUGLEN」のミッションの根底には、日本的な思想があったのだ。

お店ではさまざまな国籍のスタッフが働いている。コーヒーが媒介する、ゆるやかなコミュニティスペースは、どこまでも風通しが良いのだった。

INFORMATION

HELLY HANSEN www.hellyhansen.jp
FUGLEN COFFEE www.fuglencoffee.no

STAFF

Direction & Styling _Akio Hasegawa
Photograph_Seishi Shirakawa
Coordination_Rico Iriyama
Production & Text_Ryo Komuta

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