文:小牟田亮
1877年にノルウェーの港町、モスにて創業された〈HELLY HANSEN〉。再来年で創業150年という、長い歴史を持つブランドだ。
2025年は、ノルウェーと日本の国交が樹立して120年という節目の年だそう。今回のノルウェー紀行は〈HELLY HANSEN〉からのお誘いにより実現している。というわけで、オスロの中心地にある〈HELLY HANSEN〉の本社を訪れた。
テクニカルな素材の開発などで、今もなお数々のイノベーションを生み出している〈HELLY HANSEN〉。展示製品のなかで最も古いアイテムは、1924年に〈HELLY HANSEN〉が開発した、画期的な防水素材「LINOX(リノックス)」を使用したコート(のレプリカ)。光沢があって美しい生地の表面には防水加工が施されており、これまでの防水製品のような油のべとつきがないのが特徴。原材料は企業秘密として厳重に守られているそう。発表から30年以上にわたりベストセラーを続けた、ブランド初期の代表作である。
このあとも、フリースの原型とも言える「ファイバーパイル」や、1970年代に他に先駆けてベースレイヤーの概念を確立した「LIFA®」を発表するなど、革新的な活動を続けてきた〈HELLY HANSEN〉。その歴史の一端はこちらで確認できる。最近では薬剤を使用せずとも撥水するという画期的な素材「LIFA INFINITY PRO™」の開発に成功している。
日本ではこうしたイメージはそこまで浸透していないかもしれないが、本国ノルウェーではれっきとしたイノベーションブランドという立ち位置なのである。毎年ドイツのミュンヘンで開催されている世界的なスポーツ産業展示会「ISPO」にて、直近5年間でもさまざまな賞を受賞していることが、それを裏付けている。
その技術力を活かした商品開発で、多くの人の生活を支えているラインのひとつに〈HELLY HANSEN work wear〉がある。日々タフな環境で働くプロフェッショナルなワーカーに向けた、最先端テクノロジーを搭載した高機能ウェア群だ。船上作業員や、漁師、港湾作業員、建設・土木系の作業員、救助隊などの公共サービスに従事するひとたち、そして林業、農業のプロも採用しているという。
なんとマタニティ用のワークウェアも販売されている。いかに広い層に受け入れられているかが実感できるというものだ。ちなみに、ワークウェアの各所に配されるリフレクターには容量の基準があるそうだ。また、安全性に配慮し引っかかり防止のためにループを作らないようにしているなど、シティウェアとは全く別の考え方で、開発されていることがよくわかる。
救難、応急処置、災害支援などに携わる組織、「Norsk Folkehjelp(ノルウェー人民援助)」とパートナーシップを結び開発、ユニフォームに採用されているジャケット。スポンサーシップではなくパートナーシップであるということを力説していたのが印象的だった。
「REDNINGSTJENESTEN」とはノルウェー国内の救助活動ネットワークシステムの総称。
かように、多種多様な団体やチームとパートナーシップを組んでいる〈HELLY HANSEN〉。ワークウェアから始まったブランドの歴史は、セーリングやスキーなどのスポーツウェアの開発を経て、そして今なおさまざまなプロフェッショナルワーカーをサポートしている。