気になる服とか人とか。

「朝九時半に京都駅にお迎えに上がります」

毎年、印刷のディレクションをお願いしている「GRAPH」さんに、印刷の現場を取材に行きたいと伝えたところ、連れていっていただけることになり、先日、京都まで行ってきた。

いつもは兵庫県の都心からずいぶん離れた場所で刷っていると聞いていたのだが、今回は印刷の難しい紙ということで断られてしまい、京都某所にあるシルク印刷工場で印刷をお願いすることになった。

いつも遅刻しがちな自分も、この日は早起きして京都に到着。一時間前に到着してしまい、駅構内の「辻利」で抹茶を飲んで時間を潰した。

「GRAPH」の方と合流し、印刷所に到着すると、偶然にも友人の家の近く。観光のエリアではないものの、The Kyotoでありながら、昭和ムード漂う、庶民的な町にあった。

印刷所に着くと、すでにテスト印刷を始めているという。シルク印刷で3版を使って仕上げていくため、まずは平日を黒で、その後、祝日を白で、最後に日曜日をシルバーで仕上げていく。

印刷所の代表の方が、アシスタントの方と2人で印刷機を調整しながら印刷し、奥の方でお父さんがサポートしての3人体制で作業は進んでいった。数週間前に紙とインクの乗りのテストをしてくれていて、この日はそれを元に「数枚、再度テスト印刷をして確認してから本番の印刷をする」ということを3回繰り返して仕上げていった。

「（数週間前の）テストのときはもう少しマットやったんですけどねぇ」。と代表。

インクが乗りにくい紙であるため、乗りが良い種類のインクで印刷を行っていった。テストで数枚刷ってみると、テスト用の印刷機ではマットな黒だったのだが、本番の印刷機では、同じ調合のインクで印刷しているのに光沢が少し強く出てしまっているとのこと。数分、議論をし、「もう少し時間を置いて乾いてくればこのマットに近づくけど、それを待っていると今日中には終わらない」とのことで、もう少しマットになっていくだろうことを想定し、このまま進行することになった。

個人的には光沢はそこまで気にならない。美山さんがどこまでこだわるかということになるのだが、まぁおそらく大丈夫な範囲だろうということでこれで進行してもらった。

そうこうしているうちに午前中が終わり、僕らは近所へランチへ。

午後になって印刷所へ戻ってくると、代表はランチには行かず、歯医者へ行っていたという。ところが詰め物の入れ方を歯医者がミスったとかで、口が閉まらず、やり直ししてるうちに1時間半もかかってランチに行けなかったという。「絶対、一手間忘れとってん」とのこと。どうでもいい世間話を一生懸命に話してくれる、京都人の愉快な日常を垣間見れた。そんな印刷所だった。

ランチの後は白の印刷。2色目の印刷には、トンボの位置がズレていないかを確認するのが大事。印刷したあとに乾燥機で乾かし、その後、刷っていくのだが、その段階でどうしても紙の縮みが起こる。そうするとどうしてもトンボの位置がズレていく。そうなると文字の位置もズレてきてしまう可能性がある。そうならないように、代表とアシスタントさんが機械を微調整し、ズレてないか確認しながら進めていく。ちょっとはズレてしまうのだが、ある程度は許容範囲。ゴーして印刷を進めていった。

最後はシルバー。2種類のインクを試した。数週間前のテスト印刷のときに使ったものは、すぐ乾いていいのだが、「綿飴みたいなるからダルいな思ったんですよ」と代表。途中でインクが絡まってきて紙に張り付いてしまうのだそう。そのため、乾くのに時間がかかる、もう一つの方を試したのだが、そちらは乾くのに時間がかかりすぎるうえに輝きが若干、鈍い。印刷機を回してみて、問題なければ前者の方でいこうという話になった。

結果、代表の言う「綿飴」はできなかったため、そのまま進行。できあがる頃には日は暮れていた。寒い工場ですっかり足が冷えた。駅前のカフェで写真をセレクトし、この日は解散。なんかだるいなと思ってたら翌日、熱が出た。その日から2週間以上経ち、やっと体調が戻ってきた。周りは風邪とインフルの患者だらけ。今年の病は長そうだ。恒例の忘年会は見送ろうと思う。