AKIO HASEGAWA. HOUYHNHNM

2025.11.14 Up
Style of Authentic

ノルウェーの普通。

Case 151
ノルウェージャンファニチャーについて知りたくて。
北欧諸国のなかでもインテリア、家具のイメージがあまりないノルウェー。でも、「FUGLEN」にあったノルウェーの家具はどれもこれも素敵だった。実際のところはどんな状況なのか知りたくて、オスロ市内にあるヴィンテージ家具屋さんを訪れた。

文:小牟田亮

北欧家具とはよく聞く言葉だけど、その多くはデンマークやフィンランドの作家、メーカーのことを指すことが多く、ノルウェー家具についてはあまり知られていないのが現状だ。

2012年に現在の形となった「FUGLEN」は、コーヒー、バー、そして家具の三本柱でできている。その流れで、ミッドセンチュリー期の家具を含めたノルウェーデザインの良さを改めて認識してもらおうということで「NORWEGIAN ICONS」というプロジェクトを立ち上げているのだが、まだまだその知名度は限定的だ。今回、オスロの家具屋「Botanisk Hage Møbelforretning(ボタニスク・ハーゲ・モーベルフォルレットニン)」を取材させてもらった。

ノルウェーのものを中心としたヴィンテージの家具に、レトロなテイストの照明、雑貨などが揃う。ノルウェーでも他の北欧諸国と同様、家具が大きな輸出産業だった時代があるそうだ。ただし、それは1960年代に北海油田が発見されるまでで、それ以降はハンドクラフト的な第一次産業はどうしても減ってきてしまった。ただ最近では、若者を中心に手仕事の大切さに気づき始めていて、自国のデザイン、ブランドの価値を再発見しようという動きもあるようだ。

ノルウェーにおける最も有名なデザイナーともいわれる、イングマール・レリングが1965年に発表した「SIESTA(シエスタ)」のハイバックチェア。無駄な飾りを排した、シンプルなデザインで、世界中の美術館、博物館に収蔵されている名作チェアだ。アメリカのホワイトハウスにも納入された実績があるとか。

張り地にはノルウェー中部の「gudbrandsdalen(グドブランズダーレン)」というエリアに生息する羊から取ったウールを使っており、メイドインノルウェーのへのこだわりを貫いている。こうして、家具の世界でも、その土地の素材を使って、ものづくりをすることに注目が集まっているそうだ。

真鍮製のノルウェー産のアンティークライト。種類も豊富に揃う。

このお店では、ノルウェーを中心に世界中から家具を集めてきて、リペアを施しながら店頭に並べている。以前はヴィンテージに興味を持つひとも少なかったけれど、最近は古い家具にみんな興味を持ってきていて、だんだん集めるのも難しくなってきたそう。この国の場合、環境問題のことを考えて古いものを求めるような人が多いようだ。

エレガントで力強いフォルムが特徴な「FALCON CHAIR(ファルコン チェア)」。ファルコンが翼を広げたようなシルエットということで、この名が名付けられたそう。手掛けたのはノルウェーのデザイナー、シガード・レッセル。北欧デザインを代表するラウンジチェアの一つ。

60年代のランプ。「FUGLEN」にも同じものがあるそう。

北欧諸国は寒い季節が多いから、室内で過ごす時間を大切にする=家具文化が発達したという話があるけれど、ノルウェーも当然その流れのなかにある。それに加えて、ノルウェー人は自然と共に過ごすということがアイデンティティのひとつにあり、多くの人がヒュッテ(山や森、湖のそばに建つ小屋)を持っている。別荘というような高級なものではなく、代々受け継いだもうひとつの場所といった感じの、より親しみを感じるようなスペース。そこで使う家具なども、代々受け継がれた古いものを修理しながら使っているようで、環境については皆が皆かなり高い意識を持っている国なんだと思う。

この店に並ぶ家具は、ノルウェーのひとたちにとっては、実家に一つはあったような椅子やランプだから、何が新鮮なのかわからないという人もいるらしいけど、懐かしさと、モダンさが同居したような家具には、きっとこれからますます注目が集まっていくことだろう。

Botanisk Hage Møbelforretning
住所:Nordahl Bruns gate 15, 0165 Oslo
Instagram:@bhmobler

STAFF

Direction _Akio Hasegawa
Photograph_Seishi Shirakawa
Coordination_Rico Iriyama
Production & Text_Ryo Komuta

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