PROFILE
作編曲家、音楽プロデューサー。20歳の頃プロのスタジオプレイヤー活動を開始し、バンド“キャラメル・ママ”“ティン・パン・アレイ”を経て、数多くのセッションに参加。その後アレンジャー、プロデューサーとして多くのアーティストの作品に携わる。松任谷由実のコンサートをはじめ、様々なアーティストのイベントを演出。また、映画、舞台音楽も多数手掛ける。
ファッションディレクター、スタイリスト。英国の雑誌『モノクル(MONOCLE)』の創刊より制作に参画、ファッションページの基礎を構築した。2015年には同誌のファッションディレクターに就任。2012年から2018年秋まで雑誌『ポパイ』のファッションディレクターを務めた。
Chapter1
ファッション今昔物語。
Chapter2
Ralph Laurenに魅せられて。
Chapter3
最近はとにかくドメスティックブランド。
長谷川:今日、僕が最近やってる〈ノーティカ〉のシャツを持ってきたんですけど、ぜひ松任谷さんに着ていただたくて。
松任谷:〈ノーティカ〉ってアメリカの?
長谷川:はい。リブランディングをやっているんです。〈ノーティカ〉のボタンダウンシャツを持ってきました。
松任谷:こういうの、北村さん大好きだよ。
長谷川:少し大きめで作ってるんですけど。サイズ違いで持ってきました。
松任谷:ありがとう。超嬉しい。行き着くところはやっぱりこういうシャツだよね。けど、〈ノーティカ〉買ったことないんだよね。アメリカではいつも見るんだけど。
長谷川:僕も買ったことなかったんです。僕の世代ではヒップホップの人が着る服っていうイメージでしたね。縁があって仕事をするようになって、いまはプレッピー的なアプローチで作ってるんです。
松任谷:俺、長谷川くんが作った白い靴下も持ってるよ。
長谷川:本当ですか。ありがとうございます(笑)。ちなみに靴は何を履かれるんですか?
松任谷:色々履くけど、やっぱりスニーカーは増えちゃったかな。
長谷川:〈ニューバランス〉はどうですか?
松任谷:好きだよ。ダサいシリーズが好きで。「2040」だったかな。田舎のおじさんが履きそうなやつ。
長谷川:時代が巡って、ああいうのを今若い子があえて履いたりしてますよね。
松任谷:へぇ、そうなの? けど、あのダサい親父の靴は本当に面白いよね。ミネアポリスの空港とかで、田舎から出てきたアメリカのおじさんが、おもむろにラップトップのPCを出して仕事をしてる、みたいさ。
フイナム:本当に今もなお、たくさんの服や靴を買われてるんですね。
松任谷:買ってるね。
長谷川:由実さんもそんな感じなんですか?
松任谷:いや全然違う。女性の服はバリエーションが多いでしょ。だから、保守的なのかな。
長谷川:それはコンサバ、っていうことですか?
松任谷:いや、買うのは変なものを買うんだけどね。着方わからないのに買う、みたいな。今でも、大事なときだと俺がスタイリングするから(笑)。
長谷川:衣裳は別ですか?
松任谷:衣裳も俺がディレクションしてる。あとは大事なイベントとかのスタイリストも俺が決めてる。
長谷川:そうなんですね。あ、そういえばエヴァンゲリオンの歌、由実さんの曲(注:「VOYAGER~日付のない墓標」)が使われてましたよね。違う方が歌われてましたけど。
フイナム:綾波レイ役の声優の方が歌われてましたね。
長谷川:オリジナルの、由実さんの方のレコードを買いました。
松任谷:なんと!(笑)
長谷川:そしたらシングルしかなくて。「VOYAGER~日付のない墓標」はアルバム「VOYAGER」には入ってないんです。調べたら、映画の公開が遅れてしまってレコードが先に出ることになってしまったから、タイトルに「VOYAGER」って入ってるけど、曲は入ってないみたいで。
松任谷:へぇ。そういうの全然覚えてないな、プロデューサーなのに(笑)。
日本のブランドとの邂逅。
長谷川:最近好きなブランドとかあるんですか?
松任谷:最近は日本のブランドばっかりだね。日本の方が面白い。
長谷川:〈オーラリー〉とか行かれるんですか?
松任谷:行くね。〈オーラリー〉好き。
長谷川:あ、今日僕が着てる〈ボーディ〉の服も、買われてましたね。
松任谷:買ったね。もうじき届くんじゃないかな。〈ボーディ〉も好きだね。なんかアメリカのブランドって、服作るのに飽きちゃったんじゃないかって思うんだよね。デパート行っても精彩を欠いているというか、やる気がないというか。そこへいくと、日本のブランドはすごく面白がって服を作ってる感じがするから好きだな。
長谷川:たしかに。あんまり勢いみたいなのは感じないですね。
フイナム:いつ頃から日本のブランドを着るようになったか覚えてますか?
松任谷:えーとね、、ロサンゼルスに「ネイキッド」ができてからだね。
長谷川:「ネイキッド」って洋服屋さんですか?
松任谷:そう。「マックスフィールド」にいたスタッフが作ったお店なんだけど。「ネイキッド」で初めて日本の服を買ったの。
長谷川:どんなブランドを買われたんですか?
松任谷:〈アンダーカバー〉のTシャツとか、あとは〈PPCM〉とかかな。
長谷川:〈PPCM〉懐かしいですね。じゃあ90年代ですね。
松任谷:そこで日本の服を初めて、正確には中学生のとき以来買ったの。「ネイキッド」はピーター、スティーブっていう二人が始めたんだけど、行くと色々な話をして。「アメリカの服はつまんない」っていう彼らの話に洗脳されちゃったのかもしれない。「マックスフィールド」はブランドばっかりでしょ。そういうのにも連中は飽きてて。
長谷川:「ネイキッド」はまだあるんですか?
松任谷:もうないんだよね。スティーブはその後、財布作ったり、ベルト作ったりしてた。
絶えることのない服的好奇心。
長谷川:けど、松任谷さんが〈アンダーカバー〉って意外ですね。
松任谷:そう? 大好き。
長谷川:そうなのですね。先日、仕事で関わることがありまして、あらためて見て、カッコいいなって思いました。ジョニオさんって、仏教っぽいの好きじゃないですか。
松任谷:あぁ、そうかもね。お茶とかやってるって言ってたしね。
長谷川:はい。だから意外と好みが合うのかもしれないなって思って。よく考えると、昔に作務衣みたいなものをコレクションで作ってたなとか。
松任谷:作務衣といえば、中村さんとどっちが早かったんだろうね。
長谷川:中村さん、、〈ビズビム〉のですか? 〈アンダーカバー〉の方が先だと思います。
松任谷:そっか。中村さんが後か。
長谷川:〈ビズビム〉もお好きですか?
松任谷:うん。もうかなり初期から買ってて。
長谷川:いいですよね。
松任谷:藍染と泥染とかにハマる前からだね。今だと、セーターが80万とかあるよね。
長谷川:ありますよね。カブトガニの血で染めたブランケットとかあって(笑)。しかも青いんです。カブトガニの血って青いんだ、って(笑)。
松任谷:すごいよね、ああいう世界は(笑)。けど、未だに買ってるね。
長谷川:〈ビズビム〉も〈ラルフローレン〉に通じるものがありますね。ロマンがあるというか。
松任谷:そうだね。けど、深いところに入りすぎてるよね。着物とかはもう勘弁してくれっていう感じなんだけど(笑)。
長谷川:僕もこないだGジャン買いました。
松任谷:そうなんだ。俺、デニムはほとんど〈ビズビム〉かな。「501」とかではなく。
長谷川:ドライデニムとかやってますよね。
松任谷:いろいろあるよね。形も01、02、03、04ってあるもんね。
長谷川:はい。でも、お話聞いてると本当に最近はドメスティックブランドが多いんですね。
松任谷:今はそうだね。でも、そうでないものも着るけどね。ちょっと前は〈アイ〉が好きだった。〈ロエベ〉のやつ(注:アイ ロエベ ネイチャー)。
長谷川:あぁ、アウトドアのシリーズの! あれもいいですよね。〈コモリ〉とかはどうですか?
松任谷:〈コモリ〉は買ったことがないんだよね。縁がなくて。
長谷川:じゃぁ今度、展示会に!
松任谷:ちょっとハマってみたい感じはある。
長谷川:他のブランドよりもすっきりしてますけどね。色も暗めというか。でも生地がいつもしっかりしていて、僕はすごく好きです。
松任谷:あと最近ちょっとハマったのは、大丸(隆平)さんがやってる〈オーバーコート〉かな。
長谷川:なるほど。でも、本当にファッションお好きですよね(笑)。
松任谷:馬鹿ですよ(笑)。
長谷川:松任谷さんとお話ししてると、洋服屋の人と話ししてるような気持ちになるんですよね。とても音楽の人とは思えないです(笑)。
松任谷:(笑)