AKIO HASEGAWA. HOUYHNHNM

2022.3.3 Up
EXPERT CHATTING

vol.2 松任谷正隆

東京と服。その2
長谷川さんが近年親交を深めている、作編曲家、音楽プロデューサーの松任谷正隆さん。 前回の対談にて、その博学、博識ぶりがわかってもらえたのではないでしょうか。今回は二人にとって大事なブランド〈ラルフ ローレン〉の話を中心に、ファッションの話を色々と。横道に逸れながら。

PROFILE

松任谷正隆

作編曲家、音楽プロデューサー。20歳の頃プロのスタジオプレイヤー活動を開始し、バンド“キャラメル・ママ”“ティン・パン・アレイ”を経て、数多くのセッションに参加。その後アレンジャー、プロデューサーとして多くのアーティストの作品に携わる。松任谷由実のコンサートをはじめ、様々なアーティストのイベントを演出。また、映画、舞台音楽も多数手掛ける。

長谷川昭雄

ファッションディレクター、スタイリスト。英国の雑誌『モノクル(MONOCLE)』の創刊より制作に参画、ファッションページの基礎を構築した。2015年には同誌のファッションディレクターに就任。2012年から2018年秋まで雑誌『ポパイ』のファッションディレクターを務めた。

Chapter2
Ralph Laurenに魅せられて。

長谷川:松任谷さんは、なにかものを作りたいっていう欲求はずっとあるんですか?

松任谷:そうだね。でも、俺の場合は音楽になっただけで、誰でもあるんじゃない? 承認欲求じゃないけど、元を正せばそういうものだと思うし。

長谷川:音楽ではないものをやりたいって思ったこともあるんですか? あ、でも今もいろんなことをやられてますもんね。

松任谷:やりたいことはいっぱいあるよ。…こんな話をすると、この企画にはふさわしくないかもしれないけど。

長谷川:いや、ぜひ聞きたいです。

松任谷:でも長谷川くん的な話ではあると俺は思ってるんだけどね。

AIがもたらす未来。

松任谷:今ってさ、誰もが未来を見なさすぎてるなって思ってて。想像しにくいということはわかるけど、それでも未来は必ず来るわけで。

長谷川:はい。

松任谷:未来では本当に想像もできないくらいに、ものすごくAIが発展していると思う。ひとつの言葉から10くらいのものを作れる。ある人が何か言っただけで、その人が言いそうなことを解析できるというか。今はまだ、1に対して1ぐらいだけど、それがもっともっとできるようになって、いろいろ考えることもできるようになっていったら、人にインタビューをしたい。例えば、俺が長谷川くんにインタビューしてその音声をAIに流し込んでおくと、いろんなものを解析してくれるよね。そのうちにホログラムもできるようになるから、長谷川くんが死んじゃっても100年後くらいに長谷川くんと話ができる。間違いなくそういう時代が来るのに、誰もやらないよね。誰も写真を保存しないし。そういう管理をしたいなって思ってる。特別な人だけではなく、普通の人、誰もがそういうことをやったら、自分の祖先と話ができるわけだよね。生きてはいないけど、AIが生かしてくれている。

長谷川:そうですね。

松任谷:そしたらいろんな時代の、いろんな話ができるでしょ?

長谷川:たしかに。御供さん、いいこと言ってたよな、ってたまに思うんですけど、具体的な言葉はもう忘れちゃってて。今、会いたいなって思っても、もう会えないですからね。

松任谷:そう、それが会えるようになるわけだから。絶対そういう時代がくるよ。

長谷川:発言とか書いたものから、この人ってこういうのが好きなんだろうなってわかりますもんね。

松任谷:そうすると、また作品にも影響が現れる気がするんだよね。例えば80年代のリメイクみたいなことをいっても、これは違うでしょっていうことってあるじゃない。けど、さっきの話みたいなことができれば、もっとリアルなものをピックアップできたりもするわけで。

長谷川:そうですね。

松任谷:こないだびっくりしたんだけど、ある服がミリタリーっていう風に書かれてて、どこがミリタリーなんだろうと思って読んでいったら「肩章がついてるから」って。それは違うだろうって(笑)。

フイナム:もっと情報を正確に伝えることができるようになりますね。

長谷川:松任谷さんはいつも本当に最先端を見てるんですね。

松任谷:いやいや全然。いつも言ってるんだけど、最先端が1号車だとしたら、俺が乗ってるのは8号車くらい。1号車に誰が乗ってるのかはわからない(笑)。

長谷川:笑。松任谷さんは原稿をお書きになったり、ラジオで人にインタビューしたりで刺激が多いから、頭の中が活性化されるんですかね。

松任谷:いやぁどうだろうね。あんまり活性化はしてない気がする。自分のなかの老化ばっかり気になっちゃう。

長谷川:でも記憶力はめちゃくちゃいいですよね。

松任谷:ううん、逆。覚えてるものは覚えてるけど、覚えてなきゃいけないものはどんどん忘れてる。どうでもいいことは覚えてるのよ。変な南米のブランドの名前とか(笑)。

80年代のRalph Lauren。

長谷川:昔の洋服には今でも愛着があるんですか?

松任谷:そうだね。やっぱりその時代の空気なんかが服にはあるよね。自分が経験した時代なんだけど、服を捨てちゃえばきっと思い出すこともなくなると思う。けど持ってると、その前後の記憶が思い出されるんだよね。

長谷川:どういう風にしまってあるんですか?

松任谷:今度見せてあげる。

長谷川:すごそうですね。

松任谷:クローゼットはすごいね。

長谷川:飽きたら入れ替えて、みたいな。

松任谷:うん。別宅に持っていったり。

長谷川:靴は、靴・靴・靴…っていう感じですか?

松任谷:そうだね。

長谷川:それは(松任谷)由実さんのものも一緒に、ですか?

松任谷:由実さんのは別だね。由実さんは由実さんで。

長谷川:なんか、昔の服の方が生地とか良さそうですよね。アメリカものとかはとくに。

松任谷:というよりも、昔のものは重いね。いいとか悪いとか以前に。現代の進化は服が軽くなったことじゃないかな。なんでも重かったし。それゆえの質感っていうのはあるんだけど。

長谷川:重いコートとかかっこいいですよね。

松任谷:ね。

長谷川:最近の服って、とにかく軽いですよね。

松任谷:うん。軽いものを着ちゃうと、重いものを着れなくなってくるよね。

長谷川:〈ラルフ ローレン〉も昔の方が重いんですか?

松任谷:どうだろう。今日、初期に買ったセーターとか持ってきたけど。

40年近く前に購入したという、松任谷さんの私物のセーター。心がポッと暖かくなるようなチャーミングな図柄は今見ても唯一無二。そして、状態がものすごくいいことに驚かされる。

長谷川:わ、噂の! 渋谷西武の館を繋ぐ通路で買われたという。

松任谷:そうそう。

長谷川:おぉ、なんか違いますね。

松任谷:今のとは違うよね。当時は新作が出ると毎年たくさん買ってたからね。靴下もあって、これも見せたかったんだよね。買ってから履いてないやつもある。

ウルグアイの職人がハンドメイドで編み上げたソックス。現地の歴史、風俗、文化が濃厚に香ってくる。溢れんばかりの服を持つ松任谷さんをして宝物と言わしめた、単なる服飾品を超えた一品。

長谷川:本当ですね、デッドストックもありますね。これはどこ産なんですか?

松任谷:どこだっけな、ペルーか、ウルグアイか。。

長谷川:あ、ウルグアイですね。

松任谷:ラルフ・ローレンが手作りで作らせたっていう靴下で、これが俺の宝物かな。すごい好きなんだけど、40年間ほとんど履いてない。

長谷川:もったいなくて履けないんですか?

松任谷:そうだね。

長谷川:こういうハンドメイドの感じっていいですよね。このときはこういう柄とかがよく出てたシーズンなんですか?

松任谷:どうだっけな。80年代だと思うけど。カントリーのラインを始めるちょっと前じゃないかな。

長谷川:〈ポロ カントリー〉よりも前なんですね。当時はこういうのはなかったんですか? ブランドでこういう世界観をやるっていうか。

松任谷:どうだろう。でも、形だけ真似たやつはあっても、スピリットをちゃんと知ってて作るのでは全然違うじゃない。スピリットをここまでわかってて作ってたところは、ほかに絶対なかったと思う。文化をえぐるっていうと変だけど。〈ブルックス(ブラザーズ)〉がちょっと迷走し始めてて、そこに〈ラルフ ローレン〉が一気に出てきて顧客を奪っちゃった、みたいな感じじゃないかな。

長谷川:ブランドっていうと、たいていデザイナーが作る世界観があると思うんですが、それが完全にオリジナルじゃないからいいんですかね。何かをうまくまとめてくれている、編集してくれているからこそ、魅力を感じるというか。

松任谷:写真で見ると、ラルフ・ローレン本人っていつもピタピタなものを着てるけど作ってる世界は逆でしょ? なんでなんだろうっていつも思うんだよね。誰かがストーリーを書いて、それを元に服を作ったらこういう感じになりました、そんな人がいるのかもしれないなって思ったこともある。あの頃は本当に夢中だったからね。日本にもまだお店はなかったし。

長谷川:このときは西武のバイヤーさんが買い付けてきたんですか?

松任谷:なんだったんだろう。すぐに終わっちゃったんだよね。ポップアップだったのかな。でも、当時はそういう考え方もなかったはずだしな。

長谷川:何度か行かれたんですよね。

松任谷:うん。売り場の感じは覚えてるけどね。そんなに広くない空間に、ひとつショーケースがあるだけで。

長谷川:当時、松任谷さんの周りで〈ラルフ ローレン〉に夢中だったのは近藤さんぐらいですか?

松任谷:そうだね。俺が知る限りでは近藤だけだったかな。近藤が柄違いでセーターを持っていて。

長谷川:このセーター、意外とない柄ですよね。

松任谷:そうね。カヌーに乗って鴨を撃ちに行く、っていう。

今もなお、熱狂的なファンを持つ「ビッグポロ」。鮮烈な広告ビジュアルに誰しもが魅せられた。最近、度々復刻されており、当時のファンのみならず、新しいファンをも獲得している。

松任谷:あと持ってきたのは、まずこれは当時の「ビッグポロ」。

長谷川:おー!

松任谷:新しいのじゃなくて、オリジナル。

長谷川:いい色ですね。もともとこういう褪せた色なんですかね。

松任谷:どうだっけな。全色持ってたけどね。「ビッグポロ」の広告を見たときはえらく興奮したな。

長谷川:しますよね。

松任谷:その次が「ビッグオックスフォード」だったかな。

長谷川:いいですよね。松任谷さん、ポロシャツのサイズ、Mなんですね。

松任谷:元々が大きいからね。

長谷川:でも身体が大きいから、Lなのかなって。

松任谷:他は全部Lだけどね(笑)。

80年代後半から90年代初頭にかけて存在したライン、〈ポロ カントリー〉のレザージャケット。このラインが後の〈RRL〉の誕生に繋がっていく。今となっては非常に貴重な一着。

80年代後半から90年代初頭にかけて存在したライン、〈ポロ カントリー〉のレザージャケット。このラインが後の〈RRL〉の誕生に繋がっていく。今となっては非常に貴重な一着。

80年代後半から90年代初頭にかけて存在したライン、〈ポロ カントリー〉のレザージャケット。このラインが後の〈RRL〉の誕生に繋がっていく。今となっては非常に貴重な一着。

80年代後半から90年代初頭にかけて存在したライン、〈ポロ カントリー〉のレザージャケット。このラインが後の〈RRL〉の誕生に繋がっていく。今となっては非常に貴重な一着。

松任谷:これは、ちょっと特殊というか。

長谷川:〈ポロ カントリー〉のジャケットですね。お似合いになりそうです。

松任谷:あんまり着たことないんだけどね(笑)。でもなんかネイティブアメリカンのラインは大好きだから。これはアメリカから電話がかかってきて、こういうのちょっとだけやるから欲しいか?って言われて買ったやつ。だから少量しかないと思う。

アメリカンカジュアル、アメリカントラッドの真髄が凝縮されているローファー。エネルギッシュな若々しさと、堂々たる品格とが違和感なく同居しており、有り体に言えばオーラがある一足。

松任谷:こっちの靴はすごく〈ラルフ ローレン〉っぽいと思うんだよね。

長谷川:どこが作ってるんですかね?

松任谷:どこだろう、わからない。〈コールハーン〉?

長谷川:これ、型押しですか?

松任谷:いやいやクロコ。当時は型押しとかないと思う。

長谷川:あぁ、そうですよね。最近こういう靴あんまりないですよね。もうちょっとさらっとしちゃってて。すごく綺麗に履かれてたんですね。

松任谷:そうだね。裸足で履いてた。

フイナム:今は〈ラルフ ローレン〉では買い物しないですか?

松任谷:いや、何ヶ月か前に表参道のお店で「ビッグオックスフォード」と「ビッグチノ」を買ったよ。「ビッグポロ」も買ったかな。リバイバルがあまりに嬉しくなっちゃって(笑)。

長谷川:今度、またビッグシリーズが出るんです。「ビームス」別注で。ちょっとしか変わらないんですけど、ポニーのマークの位置が反対側だったり、ビッグチノの腿のあたりにマークが入ったりとか。それを僕がアイデアを出して作ってて。今度ぜひ見てください。

松任谷:ありがとう。すごいな〈ラルフ ローレン〉。というか「ビームス」がすごいのか。

Ralph Laurenというブランドの特異性。

フイナム:長谷川さんは〈ラルフ ローレン〉とどんな風に出会ったんですか?

長谷川:僕が子供の頃って、DCブームだったんです。

松任谷:何年生まれだっけ?

長谷川:1975年です。

松任谷:あぁ、じゃぁ1985年とかそれくらいかな。

長谷川:そうですね。なんかテレビでそういうのを見てたと思います。で、中2くらいのときにアメカジというか渋カジみたいなのが出てきて、その頃に自分で服を買うようになったんです。

松任谷:初めて買った服って覚えてる? それか、覚えてる初めての服でもいいんだけど。

長谷川:なんかジーンズ屋みたいなところで買ったロンTのボーダーだったと思います。なんてことないやつです。そのあと意識的に買うようになったのがアメカジの服でした。それこそアメ横に買いに行ってました。一緒に行った友達はMA-1を買ってて。

松任谷:「中田商店」とかそういうところ?

長谷川:それが「中田商店」の近くの「アメリカ屋」っていうところでした。

松任谷:またベタな名前の(笑)。

長谷川:その路地で中学生二人があーでもない、こーでもないって(笑)。何度も行きましたね。

松任谷:でも中学生でMA-1を買うのってすごい。時代だよね。

長谷川:丈が短すぎるんじゃないか、いやこんなもんだ、兄貴がこんな感じだった、とか色々話しながら、でした。

松任谷:WEP(G-8)じゃなくて、MA-1なんだね。

長谷川:はい。いや、どうだったかな。。

松任谷:MA-1もインナーがオレンジじゃないやつもあったよね。

長谷川:ありましたね。ちょうどその頃『トップガン』とか流行ってて、トムクルーズの。僕はその頃「501」とか買うんですけど、まだ〈ラルフ ローレン〉は全然知らなくて。

松任谷:「501」が先なんだ。

長谷川:『ポパイ』を見て買ったんです。それで『ポパイ』を見てたら〈ラルフ ローレン〉っていうブランドがあるんだ、ということを知って。アメカジって言ってるのに、なんでブランド物を勧めるんだろうってずっと思ってたんです。

松任谷:〈ラルフ ローレン〉はブランドになってたんだ。俺のなかでは全然違うよ。〈ラルフ ローレン〉は全然ブランドじゃない。ブランドものは、ヨーロッパものって決まっていて。

長谷川:なんだったんですか? プロダクトというか?

松任谷:なんだろうね、、全然違うけど〈ユニクロ〉みたいな。〈ユニクロ〉って存在自体が〈ユニクロ〉じゃない。あれと同じで〈ラルフ ローレン〉っていう世界だった。

長谷川:なるほど。。それで〈ラルフ ローレン〉ってなんなんだろうって思ってて。ただ、家にバスタオルがあったんです、誰かからのお中元か引き出物だと思うんですけど(笑)。

松任谷:それ、俺の〈アーノルド パーマー〉と一緒だね(笑)。

長谷川:そこから徐々に知っていった感じですね。

松任谷:なるほど。俺が〈ラルフ ローレン〉から離れていったのは、親父の休日着になっちゃったからなんだよね。全然オシャレじゃない親父が〈ラルフ ローレン〉を着て、子供と公園で遊んでいるような光景を見て、どんどん醒めていっちゃった。長谷川くんが言ってるのって、その時代だよね? もう日本にもお店あったでしょ?

長谷川:はい。けどまだその頃はそんなに流行ってる感じではなかったような気がします。いつだったか紺ブレが流行り始めたときがあって、それで〈ラルフ ローレン〉のを着てる人がいたんです。まぁ憧れでしたね。あとはみんなチェックのバッグ持ってたり。

松任谷:どんなの?

長谷川:緑のチェックのやつで、高校生がみんな持ってました。

松任谷:あぁ、ブラックウォッチのね! うちにあるよ。親亀、子亀みたいな。旅行用バッグ。

長谷川:今、またあれがいい気がするんですよね。

松任谷:それも持って来ればよかったね。昔、うちのかみさんが買ってた。捨てるっていうから、俺が引き取ったんだけど(笑)。

夢があった舶来もの。

長谷川:〈ハンティングワールド〉とかはどうだったんですか?子供たちの間では流行ってましたけど、大人たちの間ではどうでした?

松任谷:流行ってたよ。これも今度見せてあげるけど、俺が1980年に初めて海外に行くことになったときに近藤がくれたんだよね。バチュークロスと、あとブラウンのやつがあったの知ってる?

長谷川:ブラウンもあったんですか? カーキではなくて?

松任谷:カーキはバチュークロスでしょ? ブラウンのはもっと普通のやつなんだよね。そのブラウンの〈ハンティングワールド〉、使い古しだったんだけど、くれるっていうからもらって。それもまだ持ってる。40数年前のバッグ。〈ハンティングワールド〉は、やっぱりちょっと〈ラルフローレン〉寄りのイメージだよね。冒険というか、ワイルドライフ的な感じというか。

長谷川:そうですね。〈ハンティングワールド〉も、今いいんじゃないかなって思うんです。

松任谷:あと、しばらくしてできた〈バナリパ(バナナリバブリック)〉も、最初はよかったんだよね。冒険家のための服だったでしょ? 途中からなんかおかしくなっちゃったけど。

長谷川:〈バナリパ〉、かっこよかったですよね。プリントTが流行ってましたね。バックプリントに動物のプリントがしてるやつ。

松任谷:あぁ、そうだね。あとそういう意味では初期の〈パタゴニア〉か。まだシンチラっていってたときの時代。

長谷川:ピンクとか色々ありましたね。

松任谷:うん、それはフューシャっていう色だね。〈パタゴニア〉の本国には当時知り合いが勤めていて。まだ日本では買えなかったからカタログを見て紙に書いて、注文書を送ってた。あれも〈ラルフ ローレン〉の世界にちょっと通じてると思ってる。

長谷川:なんか目白で売ってましたよね。

松任谷:それは最初にできたお店だね。その前は直接アメリカにオーダーするしかなかったから。

長谷川:そういうときの方が楽しいですよね。ワクワクして。

松任谷:そうだね。レトロパイルカーディガンとかは、初期からあったよね。…なんか、そういうことばっかりやたら覚えてるんだよね(笑)。だから記憶力いいって言われちゃう。

長谷川:けど早いですよね。当時ほかに着てるひといなかったんじゃないですか?

松任谷:いなかったね。その知り合いっていうのが、本国でデザイナーをやってて。彼女がデザインしたものもいくつか買ったな。旦那さんがシーカヤック協会の日本代表みたいなことをやってて、二人で一緒にパリダカとかに出てたりして。そういう夫婦。

長谷川:最近は〈パタゴニア〉はもう全然ですか?

松任谷:いや、また買ったりしてる(笑)。

長谷川:笑。何を買うんですか?

松任谷:こないだはバックパックを買ったかな。〈パタゴニア〉に行くと、やっぱり血が騒ぐよね。

長谷川:昔、パンツとかよく買ってました。キャプリーンの。

松任谷:あぁ、アンダーウェア。いいよね。こうして話してると昔は昔で面白かったね。今は今で面白いけどね。

長谷川:けど、セレクトショップは昔の方が面白いですよね。

松任谷:そうかもね。今はどこにいっても同じような感じだもんね。昔は不便な分、それぞれ色があったよね。情報もこんなに行き渡ってないから。〈ザ・ノース・フェイス〉は山専門店でしか買えなかったし。

Chapter3に続く。

STAFF

Comment_Masataka Matsutoya
Photo_Seishi Shirakawa
Direction&Comment_Akio Hasegawa
Illustration_NAIJELGRAPH
Edit_Ryo Komuta,Shun Koda

CONTENTS

TAG SEARCH

ARCHIVES