PROFILE
〈グラフペーパー（Graphpaper）〉、〈フレッシュサービス（FreshService）〉、「ヒビヤ セントラル マーケット」など、様々なブランド、ショップを手がけ、ファッション、カルチャーにまつわるあらゆる領域を手がけるクリエイティブディレクター。「alpha.co.ltd」代表。
ファッションディレクター、スタイリスト。様々な媒体、広告のディレクションを手がけるなか、英国の雑誌『モノクル（MONOCLE）』では創刊よりファッションページの基礎を構築。2015年にはファッションディレクターに。2012年より2018年秋までは『ポパイ』のファッションディレクターを務めた。
フイナム：「イエスグッドマーケット」でのトークショー、お疲れさまでした。そのときに読者の皆様からリアルなハガキとインスタグラムのDMの両方で、お便りを募集したんですが、運営側に手違いがありまして、ハガキの方を読むことができませんでした。せっかく書いていただいたので、今回いいなと思った質問のハガキを読ませていただきます。
南：はい。
長谷川：お願いします。
ペンネーム：そのちゃん
質問：お二人の下着（パンツ）を選ぶ基準やこだわりを教えて下さい。
※個人情報にあたる箇所は削除しております。以下同様
長谷川：俺はボクサーブリーフしか履かないかな。
南：あ、俺も。
フイナム：銘柄のこだわりはありますか？
長谷川：昔は〈カルバン クライン〉とかで、一時期〈無印（良品）〉のネイビーのやつがあったからそれをずっと履いてたんだけど、あるときから上にラインが入るようになって、それがいやでやめて。で、そこからまた〈カルバン クライン〉とか〈ラルフローレン〉とか買ってるんだけど、これだっていうのがまだ見つかってない。全くの無地のネイビーのが欲しいんだけどね。
南：パンツ作ろうかな。。俺は〈サンスペル〉が好きなのよ。海外のって大きいからさ。無印って、XLでも小さくて。
長谷川：あー、わかる。小さいよね。
南：でね、〈サンスペル〉のすごいいい生地のがあるんだけど、結構（値段が）するのよ。
長谷川：三万ぐらいしない？
南：だっけなぁ。とにかくまぁまぁするのね。でも俺はすごい好きなの。けどやっぱり高いし、もうちょいできるだろうっていう気持ちもあって。だから〈グラフペーパー〉でパンツ作ろうかなって思ったこともあるんだよね。
長谷川：世の中のパンツは安すぎるよね。俺の好きだった無印のは、500円とかで買えるんだよ。デザインとフィット感が好きだったんだけど、とはいえ、そこまで激安なものが欲しいわけじゃないんだよ。普通の値段でいい。なんなら少しくらい高くてもいいって思う。ただ、ロゴだけは絶対にいらない。なんで宣伝しなきゃいけないんだよって思う。
南：トランクスの少しの余裕と、ボクサーブリーフのフィットする感じがうまいこと融合されてて、肌触りが良くて、なおかつ洗濯にも耐えられるっていうのがいいんだよね。ただ下着って下着の工場があって、カットソーではないんだよね。だからロットが結構大きかったりして、二の足を踏んでたんだけど、最近本気で作りたいなって思ってて。
長谷川：いいね。
南：ね。せっかくやるなら本気で作りたいよね。高すぎるのもちょっと違うんだけど、安いやつってすぐボロボロになるからさ。
長谷川：俺はとにかく何も入ってないのがいいな。
南：いくらくらいがいいんだろうね？
長谷川：5000円くらい？
南：うーん、、おそらくいい糸を使って作ると、もうちょっといっちゃうかもね。
長谷川：まぁいってもいいけどね。パンツって結局ずっと履くし。
南：そうそう。いいのって結局持つからね。耐久性が全然違う。
ペンネーム：おうちゃん
質問：今までで一番印象に残っている買い物体験は？
南：印象に残ってる買い物ね、、ていうか俺の場合はまず買い物するのが仕事なんだよね。仕入れしなきゃいけないから。
長谷川：まぁそうだよね。
南：それでいうと、ヨーロッパに行ってマーケットとか骨董市とかでゴミみたいなもののなかから、「おぉ！」っていうものを見つけたときが一番アガるよね。あとは値下げ交渉に失敗したり、あれ買っておけばよかったなーっていうことはいまだによく覚えてる。よかったことって意外とそんなに覚えてなくて、ダメだったことの方が印象に残るんだよね。偽物つかまされたときとかさ。
長谷川：なるほどね。たしかに南くんみたいにバイイングしているひとの方が、そういう経験に出くわすよね。衝撃的なものに出会って、それを買うわけだもんね。普通の買い物で、そこまで印象に残ることってそんなにないかな。
南：ないよね。意図しないものに出会うことって、やっぱりそういうときだもんね。けど古着屋とかはあるんじゃない？ あ、古着屋行かないか。
長谷川：うーん。。あ、こないだビオワインを買ったときにね。。元々、俺はワインばっかり飲んでるんだけど、自粛期間中はさらにワインばっかり飲んでたの。つっても、何も詳しくないんだよ。ワインの味が好きなだけど無知なんだよ。でも、一人で一日一本飲んじゃってたの。で、数日に一回、買い込みにいくんだけど、だんだん好みのワインがある酒屋かどうかがなんとなくわかり始めて、いつからか同じ酒屋にしか行かなくなってしまったの。そこでビオワインばっかり買ってたら、好みまで覚えられてしまってさ。ある時から店に入ると、俺にはビオワインばっかり薦めてくるようになったの。で、ついこの前“これぞ真のビオワイン”っていうのを薦められたの。保存料？みたいなものが一切入ってなくて、有機栽培した葡萄で、、とか。決まりで入ってるって書かなきゃいけないから、一応そうやって書いてるんだけど、本当は入ってないんだって言うんだよ。それを聞いたときは「おぉー」ってなったよ。
南：（笑）。
長谷川：「買います！」って。で、すぐ飲んだ。
ペンネーム：西
質問：自宅で使う座椅子を探してるのですが、何かオススメはありますか？
南：座椅子は京都の「グラフペーパー」のお店に置いてるやつが一番好きかな。えーと、、「天童木工」の藤森健次さんのやつ。ローズウッドのタイプのもの。
長谷川：いいね。これなんで穴空いてるの？
南：座布団置くための穴だね。
フイナム：なんだか早くも正解めいたものが出たので、せっかくなのでお二人に好きな椅子の話も伺いたいです。
長谷川：最近オーダーした椅子で、「カール・ハンセン＆サン」のモーエンス・コッホの折りたたみ椅子があるんだけど、それはすごくいいね。座り心地が良くて気に入ってる。
南：椅子ねぇ、、なんだろうなぁ。椅子ばっかり買ってるからなぁ。最近は日本のデザイナーさんのが好きかな。剣持勇さんとか坂倉準三さんとか。あとはイタリア系だと、高濱和秀さんのもかっこいいなぁ。みんな建築家だけどね。なんか最近は日本人が作ったものが気になってて探してます。
ペンネーム：田舎育ちのシティーボーイ
質問：バイクに乗るときにいつも白Tを着るのですが、汚れてしまいます。
なにかオススメの服はありますか？
南：ん？ これはどういうこと？ 汚れない白Tを教えて欲しいのかな？
フイナム：いや、白T以外でもいいんじゃないですかね。
長谷川：うーん、、汚れるからいいんじゃないの。
フイナム：あら！ いい答え出ましたね。
南：たしかにね。昔はさ、汚すのが前提みたいなところあったよね。靴でもスニーカーでも、新しいのが恥ずかしいっていうのがあるじゃん。
長谷川：そうそう。そう思った方がいいよ。そりゃすごく高いTシャツを着てたときに、ラーメンの汁とか付いたらすごく嫌だよ（笑）。でも、あんまりそういうことに過剰になって、周りにいる友達のことよりも、服の汚れを気にするような人間になりたくないんだよね。そんなの生きてる意味がないじゃん（笑）。だからもし汚れてしまっても、最悪しょうがないなって思える人でありたいと思ってる。たかが物であって、自分の身体とは関係ないしね。死ぬわけじゃない。物が無くなったり汚れたりすることに対しては、どうでもいいって思って生きていきたいと思ってる。ただ、仕事の時は全く逆だけどね。アシスタントが借りてきた服をなくしたり、汚したり、雑に扱うのは、全然、許せない。
南：まぁね。けど機能性みたいなことでいうなら、最近よく着てるんだけどダイワのやつ（DAIWA PIER 39）はいいよ。バイクのときとか、パンツの裾をキュッとやればいいしさ。
長谷川：あと、黒T着ればいいんじゃないの？
南：そうだね（笑）。
ペンネーム：ケッペキにいさん
質問：お二人は下着は何を着ていますか？ タンクトップはありですか？
南：下着っていうのは、Tシャツの下に着るってこと？
フイナム：かもしれないですね。
南：いるよね、そういうひと。Tシャツの下にタンクトップ着てる人。
長谷川：シャツの下に着る下着のことなのかな？
南：あぁ、それで言うと俺はまた〈サンスペル〉になっちゃうんだけど（笑）。シーアイランドコットンのやつが好きで。けどそれはTシャツだね。タンクトップって持ってないな。
長谷川：俺は、下にタンクトップ着てないとTシャツ着れないんだよね。たまにタンクトップなしで着ると、なんか寒い気がしちゃって。
南：今も着てるの？
長谷川：着てる。着ないとなんか不安になっちゃうんだよね。
南：下着ってシャツのときぐらいしか着ないんだけど、それは半袖のTシャツだなぁ。あといま実はインナーを開発中です。半袖のTシャツとタンクトップ、っていう感じで。それと同時に、さっき話に上がったパンツを作ってみてもいいかもね。アキオ氏はタンクトップにこだわりはあるの？
長谷川：リブのやつしか着ないかな。〈ヘインズ〉とか〈フルーツ（オブザルーム）〉とか。夏とか汗かくから、Tシャツがびしょびしょになっちゃうのがいやなんだよね。
南：それはピタッとしてるの？
長谷川：うん。XLとかでもピタッとしちゃうんだよね。出張とか行くと、一週間分ぐらいのタンクトップを持っていかないといけないから、それだけですごい荷物が多くなるんだよね。
南：わかるわかる。
ペンネーム：エクストリームジェンツ
質問：エコバッグとショッパーについてのお二人の考えを聞かせてください。
南：俺は海外に行くことが多いから、逆になんで日本ではタダなんだろうって思うんだよね。
長谷川：確かにそうだね。
南：向こうって袋買うのって普通じゃない。だから、最初自分のお店（グラフペーパー）の袋も有料にしようかなって思ったんだよね。結構高いから、あれ。お店をやる側としては、きちんと作るとまぁまぁ（値段が）するからそういう風にも思うんだよね。
長谷川：俺、エコバッグとかってお店に行くとなんか買っちゃうんだよね。だから家にものすごいたくさんあるの。で、結局撮影のときに革靴とか小物を入れたりするのに使うんだけど、買い物には一切使ってない。
南：そもそも持って歩いてないもんね。
長谷川：だからお店に行ったら、普通にお金払ってビニール袋に入れてもらうことが多いんだよね。
南：買い物に言ったときに限って、そういうエコバッグみたいなのって持ってないよね（笑）。
長谷川：そうそう。完全にそう。
南：本気でやるなら袋をなくすしかないよね。
長谷川：そうだね。〈パタゴニア〉とかくれないもんね。
フイナム：最近エコバッグとかいろんなところが作ってますよね。
南：それはそれでちょっと問題なような気もするよね。
長谷川：使い回したりすることで、コロナが気になるっていうのもあるしね。あとビニール袋って、意外といろんな用途に使うから、そんなにゴミにはならないと思うんだよね。
南：あと思ったのは、スーパーのビニールって重いもの入れると、手が痛くならない？ あれってちょっとの工夫でなんとかならないかなーって思うんだよね。
長谷川：それで思い出したけど、俺はゴミ袋に紙を捨てることが多いんだけど、すぐ切れちゃうんだよね。だから丈夫なの作ってよって思う。で、こないだ「マツモトキヨシ」ですごい丈夫なゴミ袋を見つけてさ。それが最近すごく好きなんだよね。紙を入れても切れない。おすすめだよ。
南：「マツモトキヨシ」限定なの？（笑）
長谷川：多分オリジナルだと思う。
南：素晴らしいね（笑）。
ペンネーム：すもも
質問：ものづくりをする人への前向きなメッセージや、
今後繊維従事者に必要な考え方をお聞きしたいです。
南：いいものを作って、お客さんに買ってもらえるようにするのはこっちの仕事なので、工場の方、職人の方には、ずっとお仕事を提供できるように頑張ろうと思ってます、っていう感じかなぁ。
長谷川：俺はそっちの業界のことはさっぱりわからないから、むしろ教えて欲しいな。
フイナム：けど、こないだセーターを作ってましたよね。
長谷川：そうだね。昔、駒沢でストリートバスケをやってる子がいて、彼にはよくモデルをやってもらってたんだけど、こないだばったり会ったときに今は新潟のニット工場で働いてるっていうから、そこからセーター作りが始まったんだよね。
南：そういうきっかけでものづくりが始まるっていうのもいいよね。結果、すごく反響のあるものができたわけだし。
フイナム：そうですね。すごくたくさんの方にご応募いただきました。
南：すごいことだよ、それって。だって夏だよ、今。
長谷川：本当はね、ウールのセーターを作ってたの。実は、そっちの方が先にでき上がってしまっているんだけど、それを作ってるときにさ、やっぱりコットンセーターも欲しいなって思っちゃったの。で、相談して、そっちも作ってもらうことにしたんだけど、いざ進行し始めたら、仕上がりが7月末くらいになっちゃうって言われて（笑）。7月にセーターなんていらないかもなぁとかいろいろ考えたんだけどさ、俺は毎年着てるわけだし、ずっと着られるからいっか、と思って、とりあえず作ってみたんだよね（笑）。
南：そうなんだ。けど、今時はシーズンはないもんね。普通の服だし。今買って秋口に着てもいいわけだし。ということは新作が控えてるわけだね。
長谷川：そうか。そうだよね。いつ販売しようかなって、迷ってるところではあるんだよね。
ペンネーム：ちゅうさん
質問：お二人にとって、楽しい服ってなんですか？
長谷川：俺は「プロップスストア」とかに行って、なんでもないものを見つけたときにすごく楽しくなるね。アメリカの作業着屋でよく売ってるようなものとか。すごくありきたりのものが、しかもこんなに安く売ってるなんて！って。サイズもこんなにたくさんあるって思うと「うわー」ってなるんだよね。なんでそういうのを見て楽しくなるのかはわかんないんだけどね。。だからアメリカに行くと3XLとか5XLとかあるじゃない？ そういうのを着てみて、全然違う感じに仕上がってるのを見ると、もう全部買ってしまいたいって思っちゃうんだよね。
南：それで言うと、俺はダサいものを見つけたときかな。「ダサッ！」「なにこれ！」って思わず言ってしまうようなもの。服じゃないことも多いんだけどね。コップとか。
長谷川：うん、わかるわかる。
南：でしょ。このスニーカー、ダサいなーっていうのを見ると楽しくなる。あとは無名の安全靴とかさ。
長谷川：うんうん。やっぱりいろんなものを見てるからなんだろうね。
南：なんでこのグラフィック入れたの？みたいなさ。
フイナム：大きい古着の「キングサイズ」のときにもそういう話してましたよね。
南：そうそう。なんだよこの柄は！とかね。ボケに対するツッコミをしてるときが一番楽しいね。向こうはボケてるつもりはないんだろうけど。相手が真剣にやってるからこそボケは面白いわけだからね。
長谷川：そうだよね（笑）。
南：ボケよう、ボケようって思われたら全然突っ込めないからね。本気でこれ作ってんの！？っていうのがいいわけで。
長谷川：あー、だから俺たちはトレンドを狙いすぎてるのがいやなのかもね。俺も南くんも新しいものを探してるわけじゃない。そうなるといまっぽく作られてるものじゃなくて、外れちゃってるものがいいよね。
南：そうそう。
長谷川：そこに新しさがあるからさ。
今回、ハガキでお便りを送っていただいた方全員、そして「イエスグッドマーケット」にてお便りを読ませていただいた方の一部に、「AH.H」謹製のキャップ、もしくはTシャツをお送りさせていただきます。ある一枚を除き、長谷川昭雄によって一つづつスタンプが施された一点ものです。
※Tシャツはスタンプの位置が全て違います。なお、ご希望は承れません。
今後も、このようなお便りコーナーを作っていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
