AKIO HASEGAWA. HOUYHNHNM

2022.6.16 Up
Focus on

気になる服とか人とか。

Vol.44
POLO RALPH LAUREN My Polo Shirt Story
この回で告知したように5月29日(日)に、〈POLO RALPH LAUREN〉のポロシャツ50周年を記念したトークイベント「MASATAKA MATSUTOYA & AKIO HASEGAWA EXPERT CHATTING on live My Polo Shirt Story」が開催されました。当日は限られたお客様をお招きし、さらにその模様をインスタライブで配信したんですが、それも見逃してしまったという方のために、イベントの模様をダイジェストでお届けいたします。 「AH.H」初夏の〈RALPH LAUREN〉祭り、これにて一旦閉幕です。

about POLO RALPH LAUREN

言わずと知れたアメリカンカジュアルの代表的なブランド。2022年はポロシャツ誕生から50年というアニバーサリーイヤーで、関連イベントが多数開催されている。

PROFILE

松任谷正隆

作編曲家、音楽プロデューサー。20歳の頃プロのスタジオプレイヤー活動を開始し、バンド“キャラメル・ママ”“ティン・パン・アレイ”を経て、数多くのセッションに参加。その後アレンジャー、プロデューサーとして多くのアーティストの作品に携わる。松任谷由実のコンサートをはじめ、様々なアーティストのイベントを演出。また、映画、舞台音楽も多数手掛ける。

長谷川昭雄

ファッションディレクター、スタイリスト。英国の雑誌『モノクル(MONOCLE)』の創刊より制作に参画、ファッションページの基礎を構築した。2015年には同誌のファッションディレクターに就任。2012年から2018年秋まで雑誌『ポパイ』のファッションディレクターを務めた。

フイナム:AH.Hで以前やらせていただいた、この対談がきっかけで今回このトークショーが開催されることになりました。お二人の出会いとしては、2012年にリニューアルした『POPEYE』を松任谷さんがご覧になって、これは誰が手がけているのかと興味を持たれたそうですね。

松任谷:そう。『POPEYE』が本当にガラッと変わって、ファッションがファッションだけではなくなって、生活というか簡単にいうとライフスタイルみたいなところありきのファッションっていう考え方になっていて、それが僕はすごく好きで。それで会いたいと思って紹介してもらいました。

長谷川:ありがとうございます。けど、びっくりしました。あの松任谷正隆が!みたいな。

松任谷:いやいや。けど改めて思っても、雑誌には大きな影響力があるよね。一冊まとまっているからカラーが出るし。

長谷川:そうですね。雑誌には雑誌の良さがありますね。世界観を作れるというか。「AH.H」はウェブだから、またちょっと違う考え方なんですが。

松任谷:僕は90年代くらいで、一回〈RALPH LAUREN〉は離れたんだけど、長谷川くんの影響でまた始まっちゃったんだよね(笑)。

長谷川:笑

フイナム:白いソックスをまた履かれるようになったって仰ってましたよね。

松任谷:そうそう。積極的に買うようになった。なんかまたこういう普遍的なものに戻りつつありますね。今さらのように。

長谷川:正隆さんは〈RALPH LAUREN〉、ものすごいたくさんお持ちですよね。

松任谷:そうね。僕の80年代は〈RALPH LAUREN〉一色だったからね(笑)。もう卒業してもいいでしょ?っていうぐらい買いましたよ。

長谷川:ご自宅に行かせていただいたとき、びっくりしました。

松任谷:昔のものをあんまり捨てないんだよね。

フイナム:松任谷さんが〈RALPH LAUREN〉を認識するようになったのはいつ頃なんですか?

松任谷:おそらく70年代の中頃かな。当時は日本にお店もなかったし、アメリカから手持ちで買って持ってきてたと思うんだけど、徐々に注目されてきていて、ネクタイを買ったのが最初かな。

フイナム:やっぱり最初はネクタイとかシャツのブランド、っていうイメージなんですね。

松任谷:そうだね。〈POLO RALPH LAUREN〉、ポロなのにネクタイなんだって、最初はそんな風に思ったのを覚えてる。

長谷川:僕は『POPEYE』に載ってるのを見て知ったんですけど、謎のブランドというか、独自路線だなって思いましたね。アメカジなのに、ブランド?っていう。そういうのほかになかったですよね?

松任谷:せっかくなので、僕の〈RALPH LAUREN〉観をお話してもいいですか?(笑)

長谷川:ぜひ!(笑)

松任谷:〈RALPH LAUREN〉には他のブランドと決定的に違うところがあるんだよね。他のブランドは、自分のブランドのアーカイブしかないでしょ? でも〈RALPH LAUREN〉はアメリカという国の服のアーカイブを全部やってるわけです、昔から。ワーク、ミリタリー、ネイティブアメリカン、ウエスタン…。こんなブランド、他にないと思う。

長谷川:うーん、たしかにそうですね。

フイナム:〈POLO RALPH LAUREN〉のポロシャツは、今から50年前の1972年に誕生したんですが、当時から24色展開でそれが一気に発売されたそうです。今日長谷川さんが着ているポロシャツはどんなものですか?

長谷川:これはこないだ「BEAMS」と一緒に作ったものですね。ビッグシリーズの。

松任谷:僕が今日着てるのも、一緒。

フイナム:今でもファンの多いビッグポロですが、1990年に最初に発売されたようです。松任谷さん、ビッグポロについてなにか思い出はありますか?

松任谷:初めて広告の写真で見たんですけど、なんだこれは!って。「THE POLO BIG SHIRT」があって、その次に「THE BIG OXFORD」だったのかな。それはそれはかっこいいビジュアルで、これはもう買わなきゃって思ったのを覚えてます。

長谷川:ビッグポロは日本ではやってなかったイメージがあるんですけど、どうなんですかね。

フイナム:ブランドの方いわく、やっていたそうです。

長谷川:そうなんですね。よく覚えてるのは並行輸入のお店で取り扱っていて、僕そのとき高校生でひょろひょろで。2XLのビッグポロなんてものすごい大きかったんですよね。欲しかったんだけど、いいサイズがなくて買えなくてっていう。憧れましたね。これを見てスタイリストになりたいと思ったようなものなので。

松任谷:へぇ、そうなんだ。

長谷川:はい、僕の師匠がビッグポロを『POPEYE』で使っていて、それがものすごくカッコよくて。

松任谷:当時、〈RALPH LAUREN〉って主に白人に向けたプレゼンテーションをしてたと思うんだよね。だから〈RRL〉ができて3年くらいしてからアメリカの店に行ったら、ラッパーみたいな子たちがたくさんいて、それでびっくりしたのを覚えてる。

長谷川:けど最初に白人のひとたちに向けたという流れがあったから、その後ストリートシーンで受けたんでしょうね。

松任谷:そうなのかもしれないね。

長谷川:そうやっていろんなシーンを行き来するところが、面白いブランドだなって思うんです。だって〈RALPH LAUREN〉が好きなひとってすごくたくさんいると思うんです。それこそ少年とか中年の女性とか。少年の立場で言えば、中年の女性が着ていたら、普通そのブランドを手に取ることってないと思うんです。それでも着たいと思わせるのってすごいブランド力だなって。

松任谷:僕はさっきも言ったけど、〈RALPH LAUREN〉ってアメリカ服のアーカイブだから、もう別格のところにあったんだよね。長谷川くんの世代だと、〈RALPH LAUREN〉の捉え方ってちょっと違うもんね。いろいろあるなかでこれを見つけてくるっていうのがすごいなって逆に思う。だってなんでも自由にセレクトできる時代だったでしょ?

長谷川:まぁそうですね。

松任谷:〈POLO RALPH LAUREN〉のポロシャツ、初めていつ買ったのかな。たしかハワイのお店で最初に買ったと思うんだけど。あと、“キング オブ パンツ”って呼ばれてたパンツ知ってる?

長谷川:いや、わからないです。

松任谷:ギャバジン生地のパンツでさ、いまでいうグルカショーツみたいなものなのかな。ウエストはヒモで縛るような感じなんだけど。ああいうのを見たのも〈RALPH LAUREN〉が初めてだったな。当時にしてはフォルムも大きくてね。びっくりしたのを覚えてる。

長谷川:長谷川:やっぱり当時はフォルムが大きかったんですか?

松任谷:うん。昔から大きく着るっていうプレゼンテーションはあったと思う。

長谷川:昔のビジュアルとかだと、結構大きく着てますよね。

松任谷:そうだね。ポロシャツだったら、ポロシャツを何枚もレイヤードしているようなビジュアルもあったよね。

長谷川:はい。シャツの上にポロシャツを着てるスタイリングとかもあって。よく見るとすごい着方をしてるんですけど。ぱっと見はそんな風には思わないっていう。あとセーターの上に着たりとか。

松任谷:けど、そういうスタイリング、長谷川くんもやりそうだけど。

長谷川:はい、やってたときもありますね。『BRUTUS』のときとか。けどそういうのは北村さん(『POPEYE』初代ファッションディレクター、北村勝彦氏)が最初なんでしょうね。

松任谷:そうだね。早かったよね。

長谷川:伝説の、ダッフルコートの上にフィッシャーマンセーターを着るという(笑)。

松任谷:笑。

長谷川:スタイリスト界では伝説になってます(笑)。イギリスの港町のライかどこかで、そういう漁師さんがいたってことらしいんですけど。

松任谷:長谷川くんは『POPEYE』の何代目のファッションディレクターだったの?

長谷川:どうなんでしょうね。ファッションディレクターっていうのがなかった時代もあったんですかね。

松任谷:あーそっか。

長谷川:どうなんでしょう、10人くらいしかいないんじゃないですかね。

松任谷:そっか。とにかく僕からすると、長谷川くんは北村さん以来、心に響いたプレゼンだったんだよね。

長谷川:ありがとうございます。

松任谷:地に足が付いてないとおもしろくないっていうか、そういう感じだよね。

長谷川:『POPEYE』をやるときに、ファッションマガジンがファッションのことだけを載せてるのがつまらないな、って思ったんです。なんか永遠にファッションの話をしている、みたいな。だったらおいしい居酒屋とかカレー屋とかを紹介した方がいいんじゃないかって。そういうようなことをみんなで話したのを覚えてますね。

松任谷:毎年毎年、ファッション業界が新しい波を作っていって、雑誌はそれに踊らされているだけみたいな。それはなんかいやだよね、薄っぺらくて。

長谷川:そうですね。だから、今回〈POLO RALPH LAUREN〉のポロシャツが50年を迎えたわけですけど、同じものを50年売り続けてるっていうことがまず面白いですよね。けど、面白いだけじゃなくて、実際にみんなそういうことを求めているんじゃないかなって思うんです。新しいことを求めてはいるんだけど、実はそれだけじゃない。古いものも含めていろいろなものを見たなかで、いまはこれがいいっていうのをチョイスしているというか。

松任谷:それが生活にきちんと結びついているんだよね。人に見せるための服ではなく、自分が楽しむための服というか。

フイナム:今回のイベントのために撮りおろしたこのビジュアルは、ヴィンテージのポロシャツを使ってスタイリングしていただきました。

長谷川:今回使ったモデルは、ただの高校生なんですけど、ひとりはちょっとぽっちゃりしてたりもしていて。けど、どこかに愛嬌があるというか、かわいらしさがあるなって僕は思うんです。そういう感じの子をモデルとして使うことが好きなんですけど、こういう子が着てもポジティブにファッションを楽しめる、そういう世界観がいいなと思っていて。もちろんかっこいい子が出るにこしたことはないんですけど、でもそういう子だってかっこいい瞬間があるし、そういう子に服を着せるとなると、ますます普通の服の方がいいんです。〈POLO RALPH LAUREN〉のポロシャツは普通なんだけど、ポニーマークが入るだけですごくかっこよく見えるっていうのが、他のどのブランドにもない魅力なんですよね。

松任谷:わかる。僕は子供の頃に、憧れの〈Munsingwear〉っていうのがあって、その次に〈​​Arnold Palmer〉だった。だからワンポイントの重要さってすごくわかるんだけど、このマークもいいよね。

長谷川:はい。このポニーマークの刺繍ってものすごい針数を使ってるみたいで。だから立体的に刺繍のディテールが表現されているんです。ワントーンでもディテールがわかるぐらいに。それもすごいんですよね。

松任谷:長谷川くん、ポロシャツの下にTシャツを着せたりするよね?

長谷川:そうですね。とくにこういう華奢な子だと、大きいサイズを着せたときにネックが大きいから、余っちゃうんですよね。

松任谷:あー、なるほど。

長谷川:けど、僕が思う〈POLO RALPH LAUREN〉のポロシャツの良さって、ちょっと前立てが短いことなんです。ボタンをとめなくても、ちょっとVネックくらいの感じに仕上がるんですけど、それがいいなぁと思ってて。

松任谷:ボタンを二つくらい開けて前をはだけさせると、今ってダンディーって言われるんだよ(笑)。ダンディーって言葉が、いつの間にかかっこわるいっていう意味の言葉になってるよね。え、知らない?

長谷川:わからないです(笑)。

松任谷:昔はかっこいいっていう言葉だと思ってたんですけど、最近はダサいって意味みたいだよ。オヤジっぽいとか。だからあんまりシャツのボタンを開けることができなくなってきた(笑)。

長谷川:笑

松任谷:ダンディーを悪い言葉にしたのは、長谷川くんじゃないの?

長谷川:いやいやいや、そんなことはないです(笑)。まぁバランスは人によると思うんですけど、〈POLO RALPH LAUREN〉のポロシャツは開けててもいいのかな、って思います。ネックが浅いので。

松任谷:そうかもね。深いとまた変わってくるもんね。

長谷川:他のブランドだと、前立てが長いからやっぱりこうはならないんですよね。僕がちょっと調べた感じだと、〈POLO RALPH LAUREN〉のビジュアルって、ポロシャツのボタンはほぼ全部空いてます。あと襟もすごく適当によれてたりして。そこがかっこいいなって思います。

松任谷:そうだね。洗いざらした襟元の感じはいいよね。

長谷川:ボロボロになってもかっこいいっていうのがすごいですよね。普通、経年変化でボロくなって、みすぼらしくなるのがブランドの服だと思うんですが〈RALPH LAUREN〉の服は違いますもんね。

松任谷:最初にエイジングを始めたのも〈RALPH LAUREN〉じゃないかな。

長谷川:あー、そうなのかもしれないですね。ポロシャツも、適度な洗い加工を施して商品にしてるみたいです。

松任谷:あ、そうなんだ。

長谷川:お店に並んでるときから、ちょっと自然な風合いが出てるんです。だから他のブランドとはそこも違うんですよね。

フイナム:今日のイベントでは、長谷川さんが選んだ過去の〈RALPH LAUREN〉の広告ビジュアルを見ながらお話をしていただきました。

長谷川:〈RALPH LAUREN〉のビジュアルってコーディネイトがうまいですよね。そこが魅力だと思います。スタイリストはだいたいみんな影響を受けるんじゃないですかね。

松任谷:かなり難易度が高いものもあるけどね。

長谷川:アロハシャツの下にセーターを着たりしてる写真とかありますからね。

松任谷:本当だ。このモデルじゃないと成立しないよね。

長谷川:そうですね。だから誰しもにこのスタイリングが似合うっていう前提で組んでなくて、彼に対してこの服がマッチングするというところで作ってますよね。

松任谷:つまり服が主役じゃないってことだ、簡単に言えば。その人が主役にならないとダメだっていうことだね。

長谷川:うんうん、そうなんでしょうね。

松任谷:さっきも言ったけど、僕はパープルレーベルができたぐらい(1995年)から、いったん〈RALPH LAUREN〉から離れてしまったんだよね。〈PRADA〉とかいろいろ新しいブランドが出てきたときに、ファッションの流れがガラッと変わっちゃって、こういうのがなくなるのかなって思ったんだけど、またいま長谷川くんたちが掘り起こしてるよね。

長谷川:正隆さんが作る楽曲もそうだと思うんですけど、昔の曲でもいま普通に聞けるっていうのがすごいなって思うんです。どこか通づるところがあるというか。

松任谷:アナログってことなのかな?

長谷川:うーん、どうなんですかね。古いものと思わずに聞けるというか。なにかエターナルなものを感じます。

松任谷:そういう意味では、音楽でも70年代、80年代の空気感をいまに持ってきて料理するっていうのがあって、そういうのとこういう〈RALPH LAUREN〉の世界は共通かもね。アーカイブを編纂するといまの気分でできるみたいな。

長谷川:そうですね。ひとつの視点というか。とくに〈RALPH LAUREN〉みたいにスタンダードというか、ベーシックなアイテムが揃ってると、どういう年代をどういう視点で見るかによってだいぶ見方が変わってくると思うんです。あとはサイズ感も変わってきますし。

松任谷:そうだね。個人的にはずっとやってほしいラインというのがあって。ワーク、ネイティブアメリカン、ウエスタン、ミリタリー。この四つの柱はずっと続けてほしいなって思います。

フイナム:今日お二人には、私物の〈RALPH LAUREN〉のアイテムをいくつか持ってきていただいたんですが、いまはもう存在しないアイテムがたくさんあります。

長谷川:また出してほしいなっていうアイテムが結構ありますよね。

松任谷:僕もたくさんあるな、またやってほしいなっていうシリーズ。

長谷川:今日正隆さんが持ってきてくださったファイヤーマンコートとか。これって最初に〈RALPH LAUREN〉が作ったんですよね。

松任谷:僕はそういう風に記憶してるんだけどね。けどこんなに重いコート、いまの時代、誰も着ないんじゃない?

長谷川:いや、重いからいいんじゃないですかね。

松任谷:あ、そう?

長谷川:ぜひ正隆さんのアーカイブコレクション、いつか〈RALPH LAUREN〉で復刻でやってほしいですね。

Ralph Lauren Polo Shirt POP UP store

会期:6月17日(金)~6月28日(火)
会場:ジェイアール名古屋タカシマヤ4階 ローズパティオ

INFORMATION

POLO RALPH LAUREN www.ralphlauren.co.jp

STAFF

Comment_Masataka Matsutoya
Direction&Styling&Comment_Akio Hasegawa
Photo_Seishi Shirakawa
Hair_Kenichi Yaguchi
Edit_Ryo Komuta、Shun Koda

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