about nanamica
都市生活のなかで、風や雨などの自然の変化に対応できる機能を持つウェアや、 休みの日に海で過ごすときなどに着たいと思うウェアなど、日常の中でなるべく長く付き合えるアーバンな仕様のアウトドアウェア。〈ナナミカ(nanamica)〉は「七つの海の家」という意味。
フイナム:久しぶりにナナミカのビジュアルです。
長谷川:監修という形で関わっているビッグシルエットのアイテムがついに発売になったんだ。
フイナム:これはセットアップになるんですか?
長谷川:セットで売ってるわけじゃないんだけど、同じ生地だしそうしたほうが、楽でいいと思う。パンツは、前回も作ったのとほぼ同じなんだよね。もともと〈ナナミカ〉のインラインにあるパンツを太くして、テーパードをキツくしてもらったんだ。
フイナム:インラインでいうと、これですね。
長谷川:そう。クライミングパンツ的なディテールなんだけど、見た目が普通のチノパンだから、便利な一本だとは思う。
フイナム:今回はその上着的な感じで、ジャケットも作ったということなんですね。
長谷川:そうだね。かなりカジュアルな方向のアイテムだけど、セットアップで着ることで、スーツみたいな見え方にもなるしね。
フイナム:今の季節にちょうどいいような気がします。
長谷川:もともと春先に発売する予定だったんだ。それがコロナがあって、秋に発売をずらしたんだよね。でも、その結果、すごくいいタイミングになったと思う。
フイナム:なるほど。
長谷川:あと、個人的には、春にアウターを買うことがほとんどないんだよね。冬物をずっと着て、あったかくなったらシャツかTシャツを着るっていうことが多いんだ。
フイナム:最近とくに冬があったかいですからね。春アウターの立ち位置はますます難しくなってきてます。
長谷川:うん。なんかそういう気持ちがあったから、このタイミングで出すことになって、それはそれでよかった。コットンベースだけど、なんだかんだ着ようと思えば通年着れちゃうし。冬はなかにいろいろ着ればいいわけだし、そう考えるとすごく便利だなって思う。
フイナム:ジャケットは大きさ以外に変えたところはあるんですか?
長谷川:内側にポケットを付けてもらってる。
フイナム:かなり大きいですね、このポケットは。しかも両側に付いてますね。
長谷川:そう。雑誌が入るぐらいの大きさはあるかな。一回サイズを大きくしただけで作ってみたんだけど、なんかいまひとつかなと思ってしまって、それでポケットを付けてもらったらいい感じで。俺、あんまりカバンを持たないので、ジャケットなら物が入れられる方がいいなと思って。
フイナム:たしかに手ぶらでいけますね、このポケットがあれば。
長谷川:あとは〈バーバリー〉とか〈バブアー〉とか、イギリスもののアウター、コートってだいたい大きい内ポケットが付いてるんだよね。なんとなくそういうイメージというか。
フイナム:生地はどんな素材なんですか?
長谷川:カバーリングコアヤーンっていう糸を使った〈ナナミカ〉の定番の生地。ポリエステルの芯に、コットンの糸を巻きつけてるんだけど、軽くて乾きやすいんだよね。
フイナム:見た目はあくまでコットンっぽい感じですよね。
長谷川:そこが〈ナナミカ〉っぽいところかな。普通に見える服に機能を足すっていう。
フイナム:今回はTシャツも作ったんですね。
長谷川:そうだね。これはけっこうでかいよ。速乾素材を使ってるからすぐ乾くし。けど、これもコットンっぽく見えるよね。
フイナム:たしかに。
長谷川:もともとベースになる定番の無地Tがあるんだけど、それを大きくして、ポケットを付けてるの。
フイナム:なんかネックのバインダー部分も太い気がします。
長谷川:Tシャツはガッチリしたバインダーネックが好きなんだ。作るときは大抵、この形でお願いしている。他のネックはあまり好きじゃないかな。あと、クールマックスっていう機能素材なんだけど、それを使うことで、洗って縮む心配がないのがいいと思った。コットン100%ではないことの良さなんて、普通はないからね。そう考えると、3点すべて、想像以上に便利なものになったと思う。それって、やっぱり〈ナナミカ〉の機能素材が優れているということだと思う。「ゴールドウイン」や〈ザ・ノース・フェイス〉を作ってきた知恵と技術と経験が生きている服なんだよね。そこに俺のクリエーションを入れさせてもらえたんだ。
フイナム:着れば着るほどよくなる服って感じがしますよね。
長谷川:そうだね。そういう服が俺は好きなんだ。劣化する服ではなくて、経年変化を楽しめるような服がいい。そういう物を作るのはすごく難しいことなんだろうけど。
フイナム:今回はモデルを小柄な子にしていますよね。
長谷川:うん。一方で、オフィシャルのビジュアルの方では190センチくらいある子に着てもらってるんだ。
フイナム:両極端ですね。けど、その二つを比べられるのは見ている人にとってはありがたいと思います。
長谷川:サイズ感ってさ、最終的には自分で決めればいいと思うんだけど、こういうビッグシルエットの服って、自分には大きすぎるんじゃないかって悩む人がけっこういるんだよね。
フイナム:わかります。よくそういう感想をネットとかでも見るので。
長谷川:だから165センチくらいの人に着せてみて、その感じが自分のなかで許容できる範囲であればそれでいいし。あとはさっき言った、大きい人が着ているビジュアルもあるから、その二つがあれば意味があるなと思って。
フイナム:なるほど。参考になる人、たくさんいると思います。最後に改めて聞きたいんですが、〈ナナミカ〉ってどんなブランドなんでしょうね。
長谷川:とにかく機能に優れているよね。そういう意味で、買う理由をきちんと作ってくれている服だと思う。この値段で、こんな機能があって、というウリがたくさんある。そういうのってすごく伝わりやすいし、今の時代に合ってると思う。
フイナム:たしかにハンガーにかかっているときは、地味というか大人しいんですが、よくよく見て、着てみるとすごく誠実な服だなっていうのが感じられます。
長谷川:オフィシャルのルックを作ってるときにいつも思うんだけど、〈ナナミカ〉って実はデザインが強いものもけっこうあるのね。そういうのを使ってコーディネイトを組むと、完成度の高い服だから、見えづらとしてはいわゆるファッションブランドらしい見え方になっていくんだけど、本質はそういう外側ではないんだ。内側の機能が彼らの本当の魅力なんだよね。だから例えばその傍らで、通年やっている普通の定番服もたくさんあるんだよね。そこにすら、機能素材や技術を詰めこんでいる。俺は特にそのあたりのシンプルな普通の服が好きだから、きちんと言葉で伝えたいなぁといつも思っていて、ただ置いてあるだけでは伝わらないからもったいない気がしてたんだ。逆に言えば、パッと見が普通で地味であることはすごく大事なことだと思うから。そんな物を作り続けることができる会社ってそうそうないよ。
フイナム:この記事を見て、より理解が深まったり、見たことがないひとがお店に足を運んでくれるといいですよね。
長谷川:うん。普段は「代官山のナナミカくん」っていう企画をオフィシャルのWEBでやっていて、そっちはいろいろある服のなかでも、とくにシンプルなアイテムをシンプルに使わせてもらって、それを言葉で説明するということをやっているんだ。こういうことって、ルックのビジュアルだけじゃ伝えきれないから是非見て欲しい。
フイナム:〈ナナミカ〉は服に対して、すごく真面目ですよね。
長谷川:そうだね。いる人たちもみんな真面目だよね。不真面目な人はいないかも。社長が隅々まで徹底的に配慮してブランドを作っている会社だし。簡単ではないことをやっていると思うよ。熱血ブランドだよね。俺も熱血スタイリストだけど。真面目、あるいは、熱血っていう言葉が、〈ナナミカ〉というブランドを表すのにぴったりな言葉な気がする。