about NAUTICA
1983年、ニューヨークで誕生したアパレルブランド。マリンスポーツを背景に都会のエッセンスを盛り込んだウェアが、90年代ラッパーやダンサーの間で話題に。長らく日本で展開がなかったものの、今秋再上陸を果たした。
PROFILE
鎌倉野菜を生産する加藤農園の4代目。有機農業に軸足を置き、自家栽培された野菜や生花を、鎌倉市農協連即売所(通称レンバイ)で販売中。日々農作業に取り組みつつ、勤務するセレクトショップでディレクション・デザインを手がけるなど、農業とファッション間をシームレスに活動する。
ファッションディレクター、スタイリスト。様々な媒体、広告のディレクションを手がけるなか、英国の雑誌『モノクル(MONOCLE)』では創刊よりファッションページの基礎を構築。2015年にはファッションディレクターに。2012年より2018年秋までは『ポパイ』のファッションディレクターを務めた。
フイナム:〈ノーティカ〉がリローンチすることとなりました。長谷川さんがそのディレクションをしているそうですが、〈ノーティカ〉について、元々どんな印象を持っていましたか?
長谷川:ダンサーの人が着ているイメージかな。わりと込み入ったブランドというか、(ヒップホップが)好きな人が着ている印象があるかな。
フイナム:加藤さんはいかがでしょうか?
加藤:やっぱりヒップホップの人たちが着ていたイメージがありますね。当時アメリカズカップ(注:国別対抗で争われるヨットレース最高峰。1992年に〈ポロ ラルフローレン〉がアメリカチームにユニフォームを提供し話題を集めた)があったりして、俺はビッグポロを着たりしていたんですけど、たまに〈ノーティカ〉を着ている人を見ると「なんかいいな」って思ってましたね。
長谷川:アメリカではどうだったんだろうね?
フイナム:ヨットカルチャーを背景にしているだけあり、ステータス性のある打ち出しだったみたいですね。そこに憧れを抱いた若者が触手を延ばし、ストリートに浸透していったそうです。
長谷川:当時のジャケットを見せてもらったんだけど、カマ(アームホール)が深くて、「こんなにアーム太いの?」みたいな。でも着てみると、独特のかたちでカッコイイんだよね。
フイナム:今回のリローンチにあたり、フォルムはとくに気を使ったと聞いています。ただ大きくするわけではなく、ゆったりした感じが自然と出るようにパターンや素材を工夫したそうですね。
フイナム:今回、加藤農園をゲストに迎えたカプセルコレクションが発表となりましたが、その前に加藤農園について話を伺いたいと思います。
長谷川:この前、ロケの流れで市場(レンバイ)に伺ったんですが、すごい人気でした。
加藤:ありがとうございます。週末はとくにすごいですね。午前中はレストランとか業者が多くて、午後は地元の方や観光客の方に来ていただいています。
フイナム:市場の出店日は決まっているんですか?
加藤:1班から4班まで割り振られていて、そのサイクルになってるんですよ。うちは1班で、4日に一度順番が回ってくるという感じです。
長谷川:出店スペースも広かったですね。
加藤:出店場所も、前、真ん中、奥とローテーションなんですよ。野菜が少ないときはスペースを狭めたりするんですが、うちは少ないときでも30種類ぐらいありますね。
フイナム:そんなに!
加藤:はい。多いときだと50~60種類ぐらいありますよ。
長谷川:加藤農園の野菜は味が濃くて美味しいですよね。
加藤:すごく嬉しいです。
長谷川:昔、LAで食べたサラダがとても美味しかったんですよね。野菜それぞれの味がしっかりあって、ひとつひとつの味を組み合わせて、サラダという料理になっている。加藤さんの作る野菜は、あのLAのサラダみたいで好きなんですよ。
加藤:多分なんですけど、アメリカの農家さんってわりとハウス栽培をしていないのかもしれませんね。うちは露地栽培がメインなんですけど、綺麗に育てようと思うと、風とか虫の害がないハウス栽培になるんですよ。でも露地栽培の方が味が濃いっていうか、自然な味がするんですよね。
長谷川:へー。
加藤:あとうちは旬菜を作るようにしています。冬にトマトを作るとかは、あまりしないですね。
フイナム:今はどんな野菜を生産していますか?
加藤:今だとキュウリ、ナス、トマト、ズッキーニ、それに空芯菜、ミョウガ、オクラとかですね。
フイナム:キュウリといえば、今回のカプセルコレクションには加藤農園で採れたキュウリの下げ札が付いていますね。
長谷川:エアジョーダンの靴や服にこんなステッカータグが付いてて、こういうのやりたいなってずっと思ってたんですよね。
加藤:面白いですよね。最初、アキオさんに「キュウリを付けましょうよ」って言われたとき 「マジで!?」と思ったんだけど、やってよかったです。
長谷川:しかも、このキュウリは花付きなんですよね。
フイナム:たしかに!
加藤:キュウリは花付きが新鮮なんですよ。
フイナム:ではコレクションを見てましょう。まずはこのブロードシャツ。これまでの〈A.H〉コラボでもシャツは作ってきましたが、今回は刺繍の位置が面白いですね。
長谷川:なんで、この位置にしたんでしたっけ?
加藤:ここにイニシャルを入れているドレスシャツってあるよね?って話からじゃなかったでしたっけ。
長谷川:あーそうでしたね。
フイナム:そして刺繍がこれまたユニークですね。この「カ」というのは?
加藤:これはカギ「カ」という、加藤農園のマークです。市場には加藤さんが何人かいて、ヤマ「カ」だったり、マル「カ」だったり、「カ」の種類がいくつかあるんですよ。このカギ「カ」は、1班の加藤農園を指すマークで、うちのカゴとかにもこれが入ってるんですよ。
長谷川:へー。
フイナム:パッと見では、よくわからない感じがいいですよね。AH......カ? みたいな。
長谷川:うん。最初は(加藤農園の)「K」がいいかなって話もあったんですけど、やっぱ「カ」がどう見てもイケてたんですよね。
加藤:そうですね。やっぱりワンポイントって大事だなって思いました。
長谷川:あと、このシャツは触り心地がすごくいいですよね。なぜかはわからないけど、すごくいい。
フイナム:ブロードなのにタイプライターみたいなタッチとハリ感があるので、アウターのシャツ的な面構えをしていますよね。
フイナム:続いてはダブル仕立てのジャケットです。
長谷川:最初はシャツだけの予定だったんですよね。
加藤:はい。でもコレクションみたいにコーディネートできたらいいよね、という話になったんです。
フイナム:シャツと同様に、ゆったりした作りになっていますね。
長谷川:うん、適当に着てもらいたいね。
フイナム:そして、ポケットフラップの下に刺繍が隠れています。
長谷川:フラップで隠してもいいし、フラップをポケットのなかに突っ込めば、刺繍が出てくるという仕掛けなんだ。
フイナム:ポケットに手を入れたときに、チラ見えするのがいいですね。
フイナム:そしてタック入りのコットンチノです。これは裾に刺繍が入っています。
長谷川:これは元々、レングスが短めなんだよね。それをさらにロールアップすることで刺繍が見えることになっているんだ。
加藤:面白いですよね。普通こんなところに刺繍を入れないから、アキオさんっぽいなぁって思います。
長谷川:ガワはベーシックなんだけど、ちょっと遊び心があるといいなって思ったんだよね。
フイナム:最後はこのハット。撮影のときに長谷川さんがグシャグシャに絞ったり、揉んだりしていましたよね。
長谷川:うん。ツバがピンと張り過ぎていると、なんか味気ないからね。
加藤:そうですね。俺もそう思います。
長谷川:ポケットにグシャグシャに突っ込んで、そのまま被ったりして欲しいですね。
フイナム:なるほど。
長谷川:是非、農作業のときに被って欲しいです。
加藤:市場も良くないですか?
長谷川:いいですね。お父さんにも被ってもらいたいです。
加藤:お父さん、喜ぶと思います(笑)。