about MFT
My Favorite Thing=MFT。長谷川昭雄、源馬大輔、金子恵治の三人が、好きなものを好きなように作ろうと、突如立ち上げたレーベル。
PROFILE
クリエイティブディレクター。1997年ロンドンBROWNS社に入社、バイヤーに。2002年に帰国後、FAMILY を立ち上げ、WR/Family Executive Director 就任。2007年独立し、源馬大輔事務所を設立。POOL、THE PARK・ING GINZAなどのクリエイティブアドバイザーも務める。現在のクライアントにはsacai、Spiberなどがある。マーケティングから商品開発、内装までディレクションし、日本だけでなく海外との契約も多数。
セレクトショップ「エディフィス」にてバイヤーを務めた後に独立。自身の活動を経て、15年4月に「レショップ」を立ち上げる。独自のバイイングスタイルには業界内外問わずファンが多い。
ファッションディレクター、スタイリスト。英国の雑誌『モノクル(MONOCLE)』では創刊よりファッションページの基礎を構築。2015年にはファッションディレクターに。2012年より2018年秋まで『ポパイ』のファッションディレクターを務めた。
フイナム:〈エムエフティー〉はどんな経緯で立ち上げられたですか?
源馬:えーと、何の件でハセくんとやりとりしてたのかは忘れたんですけど、僕から声をかけたんです。服やりませんか?って。たしかインスタのなにかを見ながら、あーでもないこうでもないって、言ってたときだったと思いますね。
長谷川:そうそう。
源馬:ハセくんって自分のシルエットを持ってるじゃないですか。スタイリングするにしても、自分の着方にしても。僕は普段デザイナーと仕事をすることが多いんですが、自分のシルエットを持っていることってすごい才能なんですよね。グラフィックとかディテールは誰でもできるんです。でもシルエットはなかなかできなくて。で、ハセくんが持っているシルエットがすごくいいなって思ってたので、声をかけたんです。
フイナム:お二人の付き合いとしてはいつ頃からなんですか?
源馬:〈サカイ〉のメンズの初期に、ルックのスタイリングをやってもらってて。その頃からハセくんのシルエットがいいなって思ってたんです。
長谷川:なんかそこがやっぱり気になっちゃうんだよね。着た人の雰囲気みたいなものを気にするときに、フォルムに目がいきがちというか。たぶん色をあんまり使わないからかもしれない。だから形とか素材感重視になりがちなのかな。
金子:なるほど。
長谷川:なんで自分がこんなに大きい服を着せるようになったかはよくわかんないんだけど、いつの間にかそうなっちゃってて(笑)。でも、誰にでもデカいのを着せたいと思ってるわけではなくて。やっぱりタイトなものが似合う人もいると思うし。ただ、いまは大きいものを着せたいっていう気持ちがちょっと強いのかなって。
源馬:ハセくんが〈ビームス〉とシャツを作ってたのは知ってたんです。で、あのシャツを着たときにほかのアイテムのバランスがシャツに合ってなかった場合、シルエットが台無しになるなって思って。だから“シルエットを売る”っていうのをやってみたらどうですか?っていう話をして。
長谷川:源馬くんのその話はすごくよくわかるんだよね。自分が作った服を色々な人が着てくれてるんだけど、どうせならセットで作ってそれをそのまま着てくれたら一番いいなって思ってて。
金子:最初はセットでしか売らない、みたいな話もありましたよね。
長谷川:そうそう。
源馬:それができたら理想だけど、やっぱりお店のことも考えなきゃいけないし、作り手のエゴだけを押し付けるわけにはいかないなって。
長谷川:でも、今回は「レショップ」で売るわけだから、普通より少しハードルの高いアイテムでもいいかなっていうのはあったかな。
源馬:たしかに。
長谷川:セットアップのつもりで作ったんだけど、ぱっと見は単品にしか見えないっていう。けど組み合わせたときにいい感じになるように設計しているから、そういう意味では斬新なのかもしれない。
金子:今回のスタイリングにあるグリーンのジャケットには白いペインターパンツ、そして実はネイビーのジャケットもあるんですが、そっちにはストライプのペインターパンツを合わせた方がいい感じになる、というつもりで作っています。
長谷川:もちろん変えてもらってもいいんだけど、推奨する組み合わせとしてはそういう感じ。
フイナム:〈エムエフティー〉は「レショップ」で販売されるわけですよね? 金子さんはどのあたりから入ったんですか?
金子:最初に少し源馬くんと二人でやりとりしてたんです。そのあとにアキオさんに声をかけてもらって、という感じですね。けど、知らない人が見たらこの三人は一体どういう繋がりなのかわからないですよね。
源馬:僕と金子さんは実はけっこう長い付き合いですよね。一回一緒に仕事をしたこともあるし。
金子:それが12~13年くらい前かな。
長谷川:え、なんですか、それ?
源馬:それは、、まぁいいじゃない。あんまり言いたくない(笑)。
金子:そうだね。黒歴史?(笑)
長谷川:へー、〈サカイ〉より前?
源馬:ちょうど始めたくらいかな? セレクトショップを作ろう、っていう話だったんですけど。
金子:今思えばけっこうすごいメンバーでしたよね。
長谷川:またやればいいのに。
源馬:でも、みんな個性が強すぎて大変だった(笑)。味付けが濃すぎちゃって(笑)。
金子:そうそう(笑)。でも、いまやればまた違うかもしれないですね。みんな大人になったので(笑)。で、とにかくそんな感じで繋がってはいたんです。
フイナム:このプロジェクトはいつくらいから始動したんですか?
源馬:夏過ぎくらいからですよね?
金子:ですね。〈LE〉のローンチイベントで源馬くんにDJをやってもらったときに、〈LE〉に興味を持ってくれて。
源馬:だって普通に考えて、シャツを大きさ違いで作るとか、あります?(笑)あとはこのクオリティでこの値段で作れるんだ、だったら面白いものができるかもなって。
フイナム:けっこうすごいスピードで進んでいったんですね。
金子:そうなんです。うちの生産チームとか大騒ぎになってました(笑)。
フイナム:今回のスタイリング、タートルがすごく効いているような気がします。
源馬:はい、上品なんですよね。実は、今回のアイテムのなかで一番の決め手となってるのはこれだと思ってます。
長谷川:よく〈ラルフローレン〉とかでも使われてたけど、やっぱり品が出るよね。昔はいろんなブランドが白のタートルを出してたような気がする。あれってどういうことなんだろう?
源馬:やっぱりアメリカンなんじゃないですか。
長谷川:スキーとかそういう感じなのかな。
源馬:いやー、でも白いタートルってなかなか似合わないですからね。
金子:そうかなぁ、源馬くん似合うと思うけどなぁ。
長谷川:白いコットンタートルが好きで、『ポパイ』でもよく使ってて、ワンポイントは金子さんが着てた古着からアイディアをもらったんだ。
金子:ジャケットはアキオさんがネタを持ってきてくれました。
長谷川:2年くらい前に出張で行ったベルリンで見つけたジャケットなんだ。思えばそのときからデカい服にはハマってて。ドイツ人はデカイから、大きいサイズがいっぱいあると思ってたら、行ってみると意外となくて。で、大きい服の専門店があったから行ってみたらこのツイードのジャケットがあったの(笑)。サイズ64のわりにそこまで大きい気がしなくて。それで、今回の最初の打ち合わせのときに、これを持っていって、こんなのどう?って、提案したんだよね。これにこれを合わせてこう着たらいい感じじゃない? これをセットで着てもらえるように作ろう、とかそういう話をしたの。
源馬:そのジャケット、明らかにバランスがおかしいんですよ。大きい人というよりも、どちらかというと、ワイドな人用ですよね。
長谷川:だって64っていうサイズだからね。普通、46とか48のところを。
源馬:大きいって言われるぼくだって52ですからね(笑)。
長谷川:けど、このジャケットって不思議なことに誰が着てもけっこういい感じになるんだよね。そんなに大きく見えない。
金子:そうですね。直したところでいうと、肩がけっこうすごいことになってたんで、肩にはちょっと傾斜を入れて。
源馬:肩傾斜はモダンな服のポイントですからね。
金子:変えたのはそれくらいですよね。
源馬:普通のジャケットを着てる感覚ではないですよね。いろんなところがおかしくなってるから。それがいいのかな。
長谷川:ちょっとコートっぽくもあるし、カーディガンっぽくもあるというか。けどこのジャケット、源馬くんが着ても多分いい感じだよ。
源馬:うーん、こういう感じで洋服着ることはまずないからな。(試着してみて、、)あぁ、なんか、、大学のバスケの監督みたいだね。
長谷川:(笑)。わかる、昔のね。
金子:あとは外国で電車乗ってるといますよね、こういうひと。
源馬:そうですね(笑)。だから90’s前半みたいな雰囲気になるんでしょうね。
長谷川:『東京ラブストーリー』みたいな。トレンディな感じ(笑)。
金子:パンツもアキオさんが持ってた、ペンキのついたペインターパンツをベースにしてます。
長谷川:あるとき、撮影用にモデルであり絵描きのアレックに履いて汚してもらったパンツがあって。その味出しがいい感じだったから、ペインターパンツを自分らで作って、それをベースにディテールを変えて、またアレックに味出ししてもらったんだ。
金子:そうですね。シルエット少し変えたり。
長谷川:オリジナルのものより、少し太いですよね。
金子:そうかもしれないですね。サイズは30~36インチくらいまであります。
長谷川:いまちょうどアレックが、ペイントの加工をしているところ。自分で一回履いて、手にペンキをつけて、パンツにつけたり、みたいなことをしてんのかな。よくわかんないけど。今回写真を撮ってみて、けっこういい感じになったなって。ニューヨークとかでペンキ屋さんとかランチタイムにそのへんを歩いてるとき、なんかこんな雰囲気で、いつも気になって見ちゃうんだよね。それを思い出した。
フイナム:もうひとつのパンツはストライプなんですよね。
金子:そうです。そっちはけっこう苦労しましたよね。
長谷川:ですね。いい感じの薄さにするのが大変で。間違えると、大阪のくいだおれ人形みたいになっちゃうので。
源馬:(笑)。この軽さがいいですよね。普通ヒッコリーって13onzくらいなのに、これはすごく軽やか。
源馬:スウェットは、僕が持ってきた〈チャンピオン〉のダブルフェイスのスウェットが元ネタですね。けっこう洋服好きなつもりだったけど、これがあるのは知らなくて。小森さんと金子さんに教えてもらったんです。
長谷川:で、いざこういうのを作ろうとしたらこれもけっこう大変で。
源馬:そうですね。でも、これはけっこういい感じにできましたよね。
フイナム:どの辺が大変だったんですか?
金子:スウェットをダブルで作ってもらうっていうのがそもそも難しくて。最初はサンプル通りのサイズでも作ってみたんですが、やっぱり生地が違うし、全然見え方も違うものになってきてしまって。素材によるところが大きかったのかなって。
源馬:そしたら小森さんが出てきて、、彼が一枚噛んでるんですよね。
金子:そうそう。ちょうど次の〈LE〉用に、いいもの見つけたって、杢のスウェットの切れ端を持ってきてて。それを見たら確実にこれでやったほうがいいじゃんって。なので、それを譲ってもらったんです。
源馬:このスウェットは、女の子が着たら絶対可愛いですよ。
長谷川:たしかに。大きいものって、女の子が着たほうがわかりやすくフォルムが出るからね。けど、だいぶモダンになったよね。あと、これ裏返しにしても着れるっていう。
金子:そうなんです。結果、ジャケットに負けないインパクトになりましたよね。
フイナム:今回源馬さんはこういうのを作って欲しいというボールを投げかけた、いわば〈エムエフティー〉の発起人ですが、そのあとはどんな風に絡んでいったんでしょうか?
源馬:僕は最初に声をかけただけで、クリエイティブの部分にはタッチしてないです。ブランドの名前を決めたりとかそういうのには参加しましたけど、こういうムードになったらいいなっていうことをちょっと入ったぐらいで。
金子:いやいや、僕とアキオさんとしてはすごい聞きたいことがたくさんあったんですが、返事がなかったから(笑)。
長谷川:そうそう(笑)。
源馬:いやぁ、(アプリの)メッセンジャーに馴染みがないというか、開く習慣があんまりなくて。チェックを怠ってまして(笑)。
長谷川:大変だったのは、レーベルタグを作ったり、フォントを決めたりっていう作業かな。今までそういうことをやってこなかったというか、放棄してデザイナーに任せてしまっていたので。だから、今回何をどう決めていいのかわからなくて、すごく大変だった。
源馬:結果的には面白い字体になったと思いますよ。どこの時代にも属してない感じだし。それって逆に言ってもオーセンティックだと思うんですよ。どこの時代にハマるものもオーセンティックだけど、どこにもハマらないものも、実は逆オーセンティックというか。
フイナム:これはオリジナルのフォントですか?
金子:いやもともとあるものです。うちのデザイナーがたくさんフォントを用意したんですけど、一風変わったこのフォントだけが提案のなかにポツンとあったんです。で、アキオさんがこれがいいんじゃないかって。
長谷川:そう。ロゴ素人の俺にはこれが一番際立って見えて、これが気になってしょうがなくなってきて(笑)。
金子:スタッフ間でもこれが一番評判よかったです。
長谷川:なんなんですかね、このロゴ。。なんか(アイスの)ピノみたいですよね(笑)。
源馬:(笑)。ロゴって、ユニバーサル感があるものか、だれも真似しないようなものか、の二択だと思うんです。ヘルベチカくらいの誰でも知ってるフォント、つまりどの時代にも属してないもの、属してないんだけど属しているようなもの、それかピノか(笑)。
フイナム:〈エムエフティー〉は続いていくんでしょうか?
長谷川:どうなんだろう、売り上げ次第なのかな。
金子:あんまり決まってないというか。
長谷川:けど、これってすごく「レショップ」らしい服だと思う。ハードルが高いけど、感度が高い人にはちょうどいい「普通」なんじゃないかなって。実際、着てみると意外と「普通」だしね。
源馬:向こうからこういう服を着てる人がきたら、ちょっと幸せですよね。個性的だなって。
金子:作りたいように作って、コストをどうしようとかそういうことをあんまり考えずに作った服です。
フイナム:なんだか唐突にリリースされる感じがいいですね。
金子:そうですね。唐突に始まって、唐突に発売されるという。今回は小売側のポジションだったので、いつもとは違う作業でしたね。お二人のディレクションのもとでやりたいものを作って販売するっていう。そのなかでさっきのフォントみたいにアキオさんが苦手とするところもあったんですけど、わりとしつこくやりとりさせてもらいました。
長谷川:(笑)。
源馬:しばらくメッセンジャーを見てなかったら、ものすごいメッセージがたまってて(笑)。
金子:僕たち全員デザイナーじゃないので、毎回ことあるごとにブレていくんですけど、ブレた結果、着地したところが気持ち良かったりして。
長谷川:僕たちの気分が入ってますよね。
金子:相当入ってますね。あと、グリーンのジャケットとホワイトのパンツと、ネイビーのジャケットとヒッコリーパンツは、発売日が違うんです。
フイナム:というと?
金子:アキオさん曰く、これらは別物なので、発売日をずらそうって。それで何が起きるかはまだわからないんですが。
源馬:これって洋服の常識的にはないことですよね。最初はやっぱり全部同時に発売にしたほうがいいんじゃないかってなって、金子さんと一緒にハセくんを説得しようってなったんですけど、全然説得できなかったという(笑)。
金子:はい(笑)。ちょっとしたトライアルですね。
源馬:そもそも今回の試みが、シルエットを売るっていうことなので、それは本当に画期的なことだと思うんです。
金子:どんなリアクションがあるかは楽しみですよね。
長谷川:はい。けど、やっぱりこのセットで着てもらったほうが、意図が伝わるのかなと。
2019年12月20日(金)11時発売
64JACKET(KAHKI) ¥80,000+TAX
PAINTING PAINTER PANTS(WHITE) ¥26,000+TAX
PAINTER PANTS(WHITE) ¥20,000+TAX
W-FACE SWEAT ¥38,000+TAX
HIGH NECK TEE ¥11,000+TAX
2019年12月27日(金)11時発売
64JACKET(NAVY) ¥80,000+TAX
PAINTING PAINTER PANTS(HICKORY) ¥26,000+TAX
PAINTER PANTS(HICKORY) ¥20,000+TAX
W-FACE SWEAT ¥38,000+TAX
HIGH NECK TEE ¥11,000+TAX