PROFILE
編集者/株式会社グーテンベルクオーケストラ代表取締役。『コンポジット』『インビテーション』『エココロ』の編集長を務め、現在は出版物の編集・執筆から、コンサルティングを手がける。著書に『はじめての編集』『物欲なき世界』『動物と機械から離れて』等。下北沢B&Bで「編集スパルタ塾」、渋谷パルコで「東京芸術中学」を主宰。東北芸術工科大学教授。NYADC銀賞、D&AD賞受賞。
ファッションディレクター、スタイリスト。英国の雑誌『モノクル(MONOCLE)』の創刊より制作に参画、ファッションページの基礎を構築した。2015年には同誌のファッションディレクターに就任。2012年から2018年秋まで雑誌『ポパイ』のファッションディレクターを務めた。
Chapter1
東京四方山話、RoJeanにて。
フイナム:編集者の菅付雅信さんとのカルチャー雑談、第2シーズンということで、どうぞよろしくお願いいたします。
菅付:お願いします。
長谷川:引っ越しましたね、浅草橋の「OME FARM」。
フイナム:前回の対談でも触れた、オーガニックレストランですね。
フイナム:移転後の「OME FARM」はどこにあるんですか?
菅付:今は神田に近づいたんですよね。
長谷川:岩本町?
菅付:そうそう。都営新宿線の岩本町駅から歩いて1分ぐらいです。
長谷川:そういえば、馬喰町に「parcel」ってあるじゃないですか。
菅付:はい、ストリートアート系のギャラリーですね。
長谷川:あのビル(まるかビル)面白いですね、なんかいろんなのが入ってて。「POPEYE」のバイトだった子が、ネオンサインの職人をやってるんですけど、彼がこないだそこで展示をやってて。1番上の階なのかな? 「CON_(コン)」っていうところで、すごいちっちゃいスペースなんですけど、そういうのがその下にもあって。
菅付:「parcel」は僕の事務所が入ってるビルと同じオーナーがやってるんです。そもそもは「DDD HOTEL」っていうホテルがあって、そのなかに最初に「PARCEL」というギャラリーができて、それの2軒目みたいな位置付けなのかな? そのビルのなかに「parcel」とか、ほかにもいろんなアートスペースがあります。
長谷川:「DDD HOTEL」は実際にホテルとして稼働してるんですか?
菅付:してるんですけど、コロナ禍で外国人観光客が来ないので、どこも都内のホテルは大変ですよね。
長谷川:都内のホテルは、東京の人はなかなか行かなそうですもんね。
菅付:今、ホテルオークラ(注:現「The Okura Tokyo」)の宿泊客の多くが都内在住らしいですね。まだまだ外国人は少ないじゃないですか。それで、リモートワーク対応とか都民のリラックスを想定したサービスを始めた結果、そういう感じになってるみたいです。「じゃぁ今度オークラに泊まってみるか、そこで仕事してみるか」と。(※参考リンク)
長谷川:たしかに、一度は泊まってみたいって思います。
菅付:僕もカミサンと、オークラの朝食のフレンチトーストは有名なので、ゆっくり朝ご飯を食べたいよねということで泊まったことはありますけど、こういう気分転換みたいなものもいいですよね。
長谷川:そうですね。京都とかもそうですけど、ハイシーズンじゃないと結構いいホテルでもすごい安いですもんね。
菅付:ニューヨークは、2月が1年間で一番観光客が少ないんです。寒いしイベントも少ないしで。そういうときに、僕はミッドタウンのヒルトンに1泊100ドル以下で泊まったことあります。しかも円高で1ドル=110円というときに。
長谷川:えー、安いですね!
菅付:まぁ普通の部屋ですけどね、もちろん。
フイナム:飛行機でもホテルでも、需要と共有で価格が決まるダイナミックプライシングを取り入れてるのはいいですよね。それでいうと新幹線は基本変わらないですもんね。
長谷川:たしかに。
フイナム:混んでる時間が高くて、空いてる時間を安くすれば、混み具合もなだらかになると思うんですが。
菅付:うんうん。取り入れてほしいですよね。
フイナム:あと今は円が安いので、海外とくに欧米に行くとかなりコストがかかりますね。6月にパリに行きましたけど、体感で1.5倍くらいはかかった気がします。
菅付:円安に加えて、今は現地の物価が上がってますからね。
長谷川:今、ユーロっていくらぐらいなの?
フイナム:僕が行ったとき(6月下旬)で143円くらいでした。(注:9月26日で139.04円)
菅付:えー、そんなにするの!?
フイナム:ドルも相変わらず高いですしね。。
長谷川:今やってる仕事がドル建てで払われることになってて。だからいいときじゃないとダメだな、って思ってて(笑)。
菅付:この前ある編集者に聞いたんですけど、その人がヨーロッパの人の写真集を作っていて、ずっと円で払うという前提でやってたんだけど、円安になって「円の支払いはやめてくれ」と言われたみたいで。
フイナム:ご時世ですよね。
コミュニティスペースの重要性。
長谷川:そういえば、今度ちょっとした場所を借りようと思ってるんです。
フイナム:え、マジですか?
長谷川:うん。とある飲食の人と一緒にやるって話でさ。たまたま、この「RoJean」に1人で来たときにばったり会っていろいろ話したんだよね。
フイナム:どんなことをやるんですか?
長谷川:店っていうよりはちょっとした撮影もできたり、複合的な場所にしたいんだ。でも全面にファッションの存在を示す場所にしたい。
菅付:へぇ、いいですね。もう場所は決まってるんですか?
長谷川:はい。今、ビルのなかをスケルトンにしたところで。場所は蔵前の近く、鳥越です。
菅付:なるほど。
フイナム:広さはどれくらいなんですか?
長谷川:このお店(RoJean)、2個分ぐらいかな?
菅付:結構ありますね。
フイナム:多目的スペースって感じなんですか?
長谷川:そうだね。今って、ビジュアルに落とし込んだりとか、あとはたまに商品作ったりもしてるわけだけど、そういうことをもうちょっと違う形で人に伝えられるのっていうのは“場所”なのかなと思って。
菅付:蔵前、鳥越あたりはどんどんよくなってるからいいですよね。とくに土日は結構人いますよ。
長谷川:そうなんですよね。しかも女性が結構多い気がしていて。昔で言うところのサブカル好きって感じなんですかね。そういう方が一定層いる気がします。
菅付:今は、東京でクリエイティヴな人が集まる場所が拡散してますよね。特にコロナ以降は。渋谷とか人はいるけど、はっきり言って活気はない気がしていて。若くて感度いいやつが集まってる気がしないです。それは原宿も一緒で。
長谷川:そうなんですよね。すごくローカルな方向にみんな向かってて。いい雰囲気の子たちは幡ヶ谷とか少しひっそりした所にいたりしますよね。中目黒は、もう渋谷みたいに賑わってしまってますしね。
菅付:そういう意味では、僕の地元の下北沢も今ギリギリのところですよね。前だったら渋谷で待ち合わせしそうな若い子が、今は下北沢にいるんです。なにか無目的な感じというか。ここに来ればなんとかなるだろうみたいな。
長谷川:今ってファッションが混沌としてるから、洒落た子はもうちょっとローカルなところにいますよね。
池ノ上のオアシス、RoJean。
菅付:うちのカミサンが見つけたんですけど、彼女は食系のブログとかインスタをしょっちゅう見ていて、それで発見したみたいです。
長谷川:そうなんですね。前回、菅付さんと「RoJean」の話をしたちょっとあと、本当に二日後くらいに、友達からここの話を聞いたんです。だからみんな話題にしてるんだなぁって。
菅付:僕は、ここができてからおそらく1週間後ぐらいに来ました。
長谷川:早いですね! でもこの朝に営業してる、っていうのがいいですよね。
菅付:そうですね。朝飯系でいいお店って、東京は結構少ないですからね。喫茶店でモーニングセットやってるところとかはいっぱいあるけど。朝から昼までの営業で15時に閉まっちゃうっていうのはなかなかないなと思って潔いな、と。
長谷川:(調理中のスタッフ、レイコさんに向けて)毎日、朝何時に起きてるんですか?
Rojean:7時ぐらいです。
菅付:あ、意外と遅いんですね(笑)。
Rojean:仕込みは前の日にやるので(笑)。みなさんは?
菅付:僕は6時です。
長谷川:とくに決まってないんですけど、なんか早く起きちゃうことが多くて。5時とか? あんまり寝れないんですよね。。
菅付:僕も昔はすごい夜型だったんだけど、だいぶ朝型になりました。
長谷川:朝早く起きると仕事しやすいですよね。午後になってくるとガンガンLINEとか来ちゃって。
Rojean:お待たせしました~。グリルドチーズサンドイッチとトマトスープです。
長谷川:美味しそう。
Rojean:そういえば友達に聞いたんですけど、長谷川さん、鳥越の物件でなにかやられるんですよね?
長谷川:はい、上をちょっと借りてやろうかなと思って。
Rojean:お店ですか?
長谷川:いや、なんでしょうね。まだ未定ですが、自分のファッション感を伝えられる場所になるといいなと思ってます。内装を関(祐介)さんにお願いすることだけは決まりました。
菅付:「RoJean」はどんなふうに始まったんですか?
Rojean:ここは私と弟とでやってるんですけど、弟はバンドやってて、このままだとちゃんとした仕事を一生やらないんじゃないかって、お母さんがおせっかいをして、二人でカフェでもやりなさいっていう感じになったんです(笑)。
フイナム:弟さん、インスタにもたまに出てきますよね。
長谷川:場所もすごくいいところですよね。
Rojean:そうなんです。お店の前に通りが抜けてて見晴らしがよくて、東北沢にも下北沢にも近いし。
飲食業の理想と現実。
フイナム:レイコさんは今、「RoJean」以外にもなにかやってるんですか?
Rojean:はい。6年前にニューヨークから日本に帰ってきたんですけど、向こうでは大学に行った後、インテリアデザインの事務所で働いてました。なので、今もインテリア関係の仕事はしてます。
菅付:そうなんですね。その事務所は有名なところなんですか?
Rojean:いや、そんな有名なところではないと思います。ブルックリンが流行ってたときで、いわゆるブルックリンスタイルみたいな仕事が多かったですね。
菅付:ブルックリンは2010年代前半、最高でしたよね。そこから一気に商業化したけど。
Rojean:そうですね。その会社はウィリアムズバーグにあったんですけど、当時はアップルストアも、ホールフーズ(マーケット)もなかったですし。
菅付:そうそう、一気にチェーン店がたくさんできて。
長谷川:景色がすごく変わりましたよね。
菅付:「egg(エッグ)」とか「MAST BROTHERS(マストブラザーズ)」ができた頃が一番面白かったなって思います。
Rojean:事務所は「egg」の近くにあったんです。
菅付:そうなんですね!「egg」すごく好きだったなぁ。しばらくして郊外に行っちゃったんですよね。
Rojean:日本にもできてましたよね。
菅付:あぁ、ありますね。最初、東京農大の博物館のなかにできて、それが池袋に移転してますね。農大の方は行きましたが、やはりブルックリンの店とはかなり違うなという印象でした。
Rojean:そういえば、前に「Sweedeedee(スウィーディーディー)」のお話をされてたじゃないですか。調べてたら、千葉の柏にできてました。
菅付:えっ! 本当?
長谷川:スリーディーディー?
菅付:「Sweedeedee」はポートランドにある朝飯屋です。そこも8時から15時くらいまでの営業時間で、すごく人気なんですけど。レイコさん、行かれたことあります?
Rojean:はい。大好きです。
菅付:素晴らしいですよね。朝飯では世界一好きです。
Rojean:ここも「Sweedeedee」みたいって菅付さんが言ってくださって、嬉しかったです。
菅付:本当に普通のアメリカの朝飯なんですけど、すごく美味しくて。ポートランドなので食材もオーガニックだし。あと、お客さんとお店のコミュニティ感がすごいんですよ。スタッフと常連が出してる雰囲気が最高で。
長谷川:(インスタを見て)美味しそうですね。
フイナム:菅付さんはお店やりたいって思ったことはないんですか?
菅付:うちのカミサンは飲食が大好きだから、そういう話が出ることもあるんですけど、あくまで客として飲食店に接するのがいいのかなと思ってますね。ここだったら場所いいし、可愛いお店になるよねーぐらいの妄想しているのが楽しい感じです。
長谷川:わかります。そういう感じありますよね。
フイナム:お店は開けたら、続けていくのは大変ですもんね。
Rojean:儲けようと思って、カフェをやらない方がいいですよ(笑)。サイドビジネス的な感じでやった方が心が保てます。
長谷川:たしかにそうかも。よくご飯屋さんで辛そうな従業員いるじゃないですか。ちょっと意地悪な態度を取る人。そんなにイヤだったらやめればいいのになって思うんです(笑)。
菅付:夜やらないのはどういう理由なんですか?
Rojean:いろいろあるんですけど、住宅街だからあんまり遅くに騒いだりするとよくないので。あと、アメリカだとダイナーとかが朝早くから空いてるし、朝ごはん美味しいところあるんですけど、日本だとあんまりないんですよね。だから朝にやってるお店をやりたかったというのはあります。
菅付:なるほど。けど、だいたい飲食は夜の方が儲かるって言いますよね。
Rojean:はい、だからのんびりやることを一番に考えてて。持続性というか。夜も営業したら友達にも会えなくなるし、起きるのも遅くなるだろうし。他の仕事もしたいと思ってる私には向いてないかなって。
フイナム:お仕事は、このカフェとあとはインテリア関係と。
Rojean:あと翻訳もしてて、実はジュエリーブランドのお仕事もやってます。
長谷川:へぇー。大変そうですけど、楽しそうですね。いくつか違うことやる方が気分転換になるから。
フイナム:長谷川さん、よく言いますよね。いろんなことをやれると楽しいって。
長谷川:そうだね。なんか考えすぎちゃうところがあって。だからなにか一つだけになっちゃうと、ちょっと大変になっちゃうというか。『POPEYE』のときは『POPEYE』だけだったしね。今は、服作ったり、原稿書いたりしてるし、色々やってるとやっぱり気が紛れるし。
フイナム:難しいところですよね。それぐらい一つのことを突き詰めたから、あれくらい濃密な『POPEYE』ができたとも思いますし。
Rojean:あ、コーヒーお代わりしてくださいね。
フイナム:ありがとうございます。
レシピの共有という文化。
菅付:お二人、もしよかったらここのバナナブレッド食べますか? すごく美味しいですよ。
長谷川:じゃぁ半分づつ食べます。
Rojean:バターつけますか?
長谷川:はい、ありがとうございます。
菅付:このバナナブレッドって、ちょっとドイツパン的な感じですよね。すごく密度が高いというか。
Rojean:バナナブレッド、これしか食べたことなくて、他がわかんないんです。これは全部おばあちゃんのレシピなんですけど。そういえばおばあちゃんはドイツ系ですね。
菅付:やっぱり。
長谷川:ちょっと固いんですかね。
菅付:なんかぎゅーっとしてるんですよね。おじいちゃんもドイツ系なんですか?
Rojean:そうなんです。
長谷川:あ、めっちゃうまい。
菅付:美味しいですよね。
長谷川:想像と違う味でした。なんかスイーツではない感じですね。
菅付:そうそう、食事っぽいですよね。
長谷川:こういうレシピって、自分でまとめたんですか?
Rojean:いや、全部おばあちゃんがまとめてくれたんです(お手製のレシピブックを見せてもらいつつ)。
菅付:へぇ、これすごい。おばあちゃんは何者なんですか?
Rojean:いや、全然普通のおばあちゃんですよ。アメリカの人って、ワープロを打ち慣れてるし、日本語みたいに変換がないので。
フイナム:綺麗に編集されてますね。
Rojean:そう、すごくオーガナイズされてて。アメリカの人ってレシピカードをよく作るんです。だいたい誰からもらったレシピって書く欄があって、みんなでシェアしあって。「誰々さんのクッキー美味しかったから、レシピもらおう~」みたいな。
フイナム:素敵な文化ですね。
Rojean:みんなファイリングしてるんです。うちのおばあちゃんもそれをやってて、今お見せしたものは、いろいろあるなかでもお気に入りのレシピが入ったもので、2004年のクリスマスに家族にくれたんです。「うちの気に入ってるレシピだよ」って。
長谷川:へぇー。
Rojean:けど、家族に1冊しかくれなかったんで、2004年版は私のお父さんが持ってっちゃって。私も欲しいって言ったら、リバイズド版を2016年にくれました(笑)。
菅付:おばあちゃんの名前がRoJeanなんですよね。
Rojean:はい。だからここにはおばあちゃんの思い出のものばかり置きたくて。
長谷川:いいですね。
Rojean:ありがとうございます。けど、おばあちゃんが素敵なんですよ。
菅付:今もご健在なんですか?
Rojean:はい。結構若くて、まだ70代後半です。アメリカって歴史が浅いわりに色々な国の人が来てるから、カルチャーがあって面白いですね。歴史が浅いからこそ、みんなドキュメントしてるのかもしれないですね。
菅付:ちゃんと残していきたいということですよね。それでいうと京都の割烹とか鮨屋ってレシピないですからね。
フイナム:確かにイメージないですね。
菅付:阿吽(あうん)でできるまでが修行ということなんだと思います、ああいう和食って。
フイナム:いいものをシェアしようっていう考えって、なんか素敵ですね。
こんな時代だからこそスローに。
Rojean:アメリカってレシピ本が多いんです。Snoop Dogg(スヌープドッグ)も出しましたよね。
長谷川:あぁ、ありますね。
Rojean:あの本にはMartha Stewart(マーサ・スチュワート)っていう、元祖カリスマ主婦がコメントを出してます。アメリカのレシピ本でいうと、Julia Child(ジュリア・チャイルド)という人の本(「Mastering the Art of French Cooking」)がすごく有名です。
フイナム:へぇ、知りませんでした。
Rojean:映画(『Julie & Julia』(2009))にもなってます。Julia Childが出てたテレビ番組(『The French Chef』)がすごい人気だったみたいなんですけど、ジュリアは収録中によく間違えたりしたらしいんです。ちょっと焦がしちゃったりとか。そういうのを見て視聴者がみんな共感して、料理って気軽にできるものなんだ、楽しいものなんだなって思ったっていう。
菅付:ここもレシピ本出せるんじゃないですか?
Rojean:アメリカのレシピ本って、半分くらい思い出話が載ってるんです。ここのレシピはこういう歴史があったとか。だからちょっと自伝のような感じなんですよね。
菅付:なるほど。
Rojean:だから出したいなとは思うんですけど、もう少し先の話になりそうです。
菅付:食事は継承、ヘリテージですからね。そのなかでも時代とともにアップデートされて、少しずつ変わってくじゃないですか。そこが面白いですよね。「RoJean」もすごく東京っぽいなと思うんです。
フイナム:というと?
菅付:東京はいろんなとこから人が来る街ですよね。色んなところから来て、何かを継承して、何かを東京的にツイストしていくわけじゃないですか。その継承とツイストのダイナミズムがすごく面白いと思います。
長谷川:そうですね、そういう意味ではすごく今の時代の象徴みたいな感じがしますよね。
Rojean:ちょっと流行ってるものが多いなかで、変わらない何かが欲しいなっていう気持ちがあって。インスタ映えのためにやってるわけではないので。アメリカのそのへんのダイナーって、行ったらなんか安心するようなところってあるじゃないですか。ここもそうなったらいいなって。
フイナム:SNSはなかなか付き合い方が難しいですよね。
長谷川:ね。いろんな人間関係もSNSが変えてしまってるとこもあるし。
菅付:ネットやSNSの普及で、とにかくみんながせっかちになってますよね。せっかちでインスタントになってる。これはもう仕方ない側面もあると思うんですけど、僕らはプロでメディア側の人間だから、やっぱり気を付けなきゃいけないですよね。僕は大学で教えたりもしてるんですけど、学生によく言うんです。SNSは君たちにとって、クリエイティブにおいて1番大事なものを失うよって。それは何かと言うと集中力なんです。集中力がないと、いいアイデアは醸成しないんですよ。突き抜けない。
長谷川:はい。
菅付:やっぱりぐーっと考えて、ぐーっと突き詰めて、ポコーンと抜ける瞬間までいくというのが大事なんです。考えに考えて、上のレイヤーに行くことがクリエイティヴなので。そのために集中して考えるのが必要で、それがネットやSNSによって、阻害されてしまうんですよね。そしてすぐに結果がでる、すぐにカタチになることを優先的に考えてしまう。結果がありきたりなものであっても。
長谷川:わかります。2週間とか3週間とかずっと考えてみて、やっぱり違ったな、みたいなことがすごく大事ですよね。
菅付:そうそう。二十世紀以降でも、映画でも音楽でも、やっぱりすごい作品は、グーっと突き詰めてやってるものじゃないですか。そういう集中力がないと、なかなか上のレイヤーに上がった強いものは作れないです。
長谷川:写真もそうですよね。やっぱりフィルムの時代って「4×5」とか「8×10」って1枚とか2枚しか撮らないじゃないですか。ポラをたくさん切って、お金をかければできるんですけど、そうなるとモデルも体力が持たなくなってくるし。でもやっぱりそこにみんなが集中してやるから、一枚に込められるエネルギーが全然違いますし、今の時代の写真と比べても、全然クオリティが違うっていうのは明らかですよね。
RoJean
住所:東京都世田谷区北沢1-9-2
営業:8:00~15:00 無休
電話: 050-5526-7130
http://www.instagram.com/caferojean/