文:小牟田亮
about エドヴァルド・ムンク(Edvard Munch)
ノルウェーを代表する画家。代表作「叫び(The Scream)」で世界的に知られている。(1863–1944)
正直、ノルウェーと聞いてパッと思い浮かぶものがあんまりなかったのだけど、ノルウェーといえばムンクなのである。そう、世界的に有名なあの『叫び』を生み出した不世出のアーティスト、エドヴァルド・ムンクだ。
というわけで、何はなくともまずは行ってみようということで、ビョルヴィカという文化的なコンテンツが集まるエリアの海沿いにそびえたつ「MUNCH(ムンク美術館)」に足を運んでみた。
受付を通過して荷物を預けたら、エレベーターで常設展が行われている4階へ。かなりの多作であったというムンクの数々の作品を横目に、『叫び』専用の小部屋に向かう。
名画、名作の類を観覧するときに、いつも思うことがある。作品自体の素晴らしさを堪能することはもちろん、固唾を吞んで鑑賞している来館者たちが醸し出す、祈りにも似た独特の雰囲気を味わうことも醍醐味の一つなのではないかと。普段は決して出会うことがないような、趣味嗜好がバラバラのひとたちが集う空間というのは、どこか心地がいい。
意外と知られていないかもしれないが、『叫び』は一点だけではなく複数点存在する。この日は3点の『叫び』が展示されていた。そして各作品は30分ごとに入れ替わりで展示されるという仕組みとなっている。どんなふうに入れ替わっていくのかは、ぜひ自身の目で確かめてもらえると。
左:1893年「クレヨン・紙に描画」
ムンクはさまざまな技法を試すことを好みました。1890年代には、パステルやクレヨンを使った大型のドローイングをいくつも制作しています。これらの作品は絵画作品に比べてより即興的に描かれており、また非常に繊細です。その“もろさ”こそが、この作品の持つ実存的なテーマを見事に際立たせています。
中:1910年頃(?)「テンペラ・油彩/紙板に描画」
この作品は筆と液状の絵具を用いて描かれています。画面には、音の波を思わせるような滑らかでうねる色の線が満ちています。正確な制作年は分かっていないため、日付には「?」が付されています。
右:1895年「リトグラフ(石版画)」
ムンクは世界的にも優れた版画家でした。彼の版画作品の多くは、絵画よりも広く知られています。『叫び』のリトグラフもその代表で、約30枚が刷られたとされています。この大胆なモノクロ版こそが、最初に書籍や雑誌に掲載され、世界に広まった『叫び』でした。
絵画、版画、彫像、スケッチ、写真などなどありとあらゆる作品がそこかしこに展示されており、ムンクの人生そのものを駆け足で体感できるような構成となっていた。はたしてこれを見るためだけにオスロを訪れる価値があるか? 個人的にはあると思う。
13階建てで、高さ約60メートルという建築的にも圧倒的なスケールを誇る「MUNCH」。2021年に誕生したばかりということで、モダンでコンテンポラリーなデザイン、レイアウトとなっている。最上階となる13階からは、オスロの街が一望できるご覧の絶景が楽しめる。オスロに来たなら、一度はムンクである。
MUNCH(ムンク美術館)
住所:Edvard Munchs plass 1, 0194 Oslo
電話:+47 23 49 35 00(平日 10:00–14:00)
時間(通常):10:00 〜 18:00(月・火)
10:00〜21:00(水・木・金・土)
10:00〜18:00(日曜)
公式サイト