NとYで構成されたロゴは、ヤンキースではない。かつてアメリカに存在した、アフリカ系アメリカ人を中心としたプロ野球リーグのチームロゴだ。このニットキャップは日本の帽子ブランド〈COMESANDGOES〉と、クラシックなベースボールキャップをアメリカで作り続けている〈COOPERSTOWN BALL CAP〉がコラボレーションして作られたもの。アメリカンプロスポーツのファングッズで80~90年代によく見かけたウールのニットキャップを60年代に衰退した、先に述べたプロ野球リーグのチームロゴをモチーフに作っている。NYというロゴを見るとついヤンキースを想像してしまうが、よく見ると全く異なるロゴ。違うストーリーがそこにはあるのだ。
1947年にジャッキー・ロビンソンが「ブルックリン・ドジャース」に入団すると、新人王を獲得するなど活躍するのだが、どうやらそれまでは有色人種はMLBに入れてもらえなかったそうだ。今考えるととんでもない時代だが、当時の常識からしたら、今の方がとんでもない世界となるのだろう。でも、今やどんなスポーツも黒人選手なしでは語れないし、2024年になると野球でもバスケットボールでも日本人選手がアメリカのプロスポーツシーンで活躍している。そんなことは当時、誰が想像しただろう?
世界の誰かが、現実世界にはまだ存在していない物や事を想像して、実行することで次の時代は生まれる。誰かのクリエイティブが時代を作り、変える。まるで高尚なアートやデザインの世界の話のように聞こえるかもしれないが、クリエイティブでなければ時代は変わらない。革命は起きない。ぼんやりと模倣だけを繰り返していたら、いつまで経っても同じままだ。
そう考えて振り返ってみると、過去の時代を象徴する事柄や存在と、時代を変えるエポックメイキングな事柄と存在というのはほぼイコールな気がする。想像力というのは時代や社会が求めていることなのだ。
このメガネは、ドイツから世界の眼鏡業界に革命を起こしたブランド〈HAFFMANS & NEUMEISTER〉。シンプルクラシックで誰にでもフィットやすいデザインでありながら、シートメタルを使用し、ヒンジの機構にネジを一切使わないことで知られているブランドだ。その斬新なディテールは、ここの創業メンバーでデザインを手掛けていたフィリップ・ハフマンスによるもの。彼はすでにこのブランドを離れているものの、そのクリエーションは彼がこれまで築き上げてきたブランド〈ic! berlin〉や〈MYKITA〉に系譜し、そのアーカイブコレクションは今なお多くの人々を魅了し続けている。