コザのパークアベニューという目抜き通り。ヤシの街路樹と白い屋根が連なる、この通りは不思議と雨が似合う。ロケハンで訪れたときも雨。その感じがすごく良くて、人生で初めて撮影日に雨が降ることを祈った。念願かなって、当日は小雨模様。ただ祈りが強すぎたせいか、数時間後にはドシャ降りの大雨に見舞われたのだった。
about ALOHA SHIRT
柄シャツは着ない。っていうか似合わない。だから着ない。でも、他人が着ている分にはいいと思う。楽しそうでいいじゃないか。自分も気分転換にいいかもしれないと思って、昔からたまに買ってみるのだけど、すぐに着なくなってしまう。だから無駄に何枚も持っている。とくにハワイに行くと、アロハシャツを集めたくなり、古着から新品まで買いまくっていた時代がある。でもいざ着ると、ホテルやレストランの従業員みたくなってしまう。そんなことがわかっているのに、見かけるとつい手が伸びる。昨年、鎌倉に行ったときには、久しぶりにまた買って、着てみたりもした。海気分を盛り上げるためにはよかったんだけど、いまさらどうしたんだ!? という感じもあって、東京では無理だと思った。日々の生活ではそんな浮かれている余裕がないし、自分自身はもっと地味でいたい。
でも、旅先で南国気分を味わいたいときにはなぜか着たくなる。だからコザのパークアベニューという商店街を歩いていて、「PEACEFUL VALLEY.(ピースフルバレー)」という古着店の店頭でこのシャツを見たときに、「コレだ!」と思った。アロハシャツに関しては、アメリカ製の80-90年代のヴィンテージを主にセレクトしているという。東京から離れたところにいる自分を盛り上げる、あるいは東京を忘れるためのシャツを見つけたってわけだ。値段も安い。もちろんこちらもメイドインUSA。買わない理由はどこにもなかった。
その昔、嘉手納基地の門前町として栄えたパークアベニュー。近年はシャターを下ろしたお店が多く閑散とした様子だが、この街が変わっていく気配は旅行者でも十分に感じ取ることができる。今回は行くことができなかったが、〈TINA AUDIO(チナ オーディオ)〉の知名さんから教わったベーカリー「MILL by TIMELESS(ミル バイ タイムレス) 」も、「TESIO(テシオ)」の佐々木さんから教わった「豆ポレポレ」も、このパークアベニュー沿い。気の利いたカフェやレストランが街づくりの起爆剤になるのは、どこも一緒だ。そうやって新しいお店が増える一方、昔ながらのお店もわずかながら健在。やっぱり老舗のない街はつまらない。古株が街の景色に深みとコクを出すのだ。
about PATCHED T SHIRT
沖縄と言えば、刺繍。もし手元に無地ボディがあったなら、入れてもらわない理由はない。もし持っていないのなら、北谷にある「RESPECT(リスペクト)」に寄って、〈PROCLUB(プロクラブ)〉のTシャツを手に入れよう。できたら2枚は買っておきたい。一枚はホテルのランドリーで洗って、現地で着るため。もう一枚を持って、コザの街にある刺繍屋さん「CRAZY STORE(クレイジーストアー)」へ。
ここには、刺繍をワッペンに仕立ててあるのがたくさん置いてある。いろんなのがあるなかから、気に入ったのがこれ。あえて胸のど真ん中の少し上に配置。そうそう、この位置がいいのだ。遠い昔にNY「LIL’ FRANKIE’S(リルフランキーズ)」っていう、当時大人気だったイタリア料理店でご飯を食べていたときに、ファッション業界人と思われる集団が隣のテーブルでご飯を食べていて、そのなかの1人が着ていたカットソーには、この位置にレーベルタグが付いていた。サイズを表記する小さいタグも確か付いていた。かっこよかったなぁ。あれはいったいなんだったんだろう。。。そして彼はいったい誰だったんだろう。。
「今度、夜のコザに来てみてください」。そう話していたのは「TESIO」の嶺井さん。夜、それも週末の夜は、ベースから若者たちが一斉に街に繰り出し、まんまアメリカな光景が繰り広げられているという。次、沖縄に来るときは夜のコザを探検しよう。そのときは雨が降らないことを願う。