AKIO HASEGAWA. HOUYHNHNM

2022.1.27 Up
Focus on

気になる服とか人とか。

Vol.36
俳優 山本一賢(前編)
長谷川さんの友人であり、モデルとして長谷川さんの作品に参加する俳優の山本一賢さん。その彼が主演を務める映画『JOINT』の公開を記念したトークセッション。男同士のぶっちゃけ話を3回にわたってお届けします。

PROFILE

山本一賢

俳優。1986年生まれ。10代から駒沢のストリートボールに熱中。引退後は、付き人経験を経て、俳優に転向。現在公開中の映画『JOINT』がデビュー作にして初主演作。長谷川さんとは、被写体とディレクターの関係を超えて、プライベートでも飲みに行く仲。

長谷川昭雄

ファッションディレクター、スタイリスト。英国の雑誌『モノクル(MONOCLE)』では創刊よりファッションページの基礎を構築。2015年にはファッションディレクターに。2012年より2018年秋まで『ポパイ』のファッションディレクターを務めた。

about 映画『JOINT』

特殊詐欺向けの名簿ビジネスを展開する刑務所上がりの男、石神武司。ベンチャービジネスに介入し、裏稼業から足を洗おうとする彼と、その周りで蠢く暴力団と外国人犯罪組織の影……。現代日本の裏社会をドキュメントタッチで描くクライムムービー。

フイナム:まずは『JOINT』の公開おめでとうございます。

山本:ありがとうございます。

フイナム:この作品がデビュー作であり主演作ということで。

山本:そうですね。

長谷川:元々、山本くんが役者を目指すきっかけって何だったの?

山本:バスケを引退して、付き人も終えてから、アルバイトとかしてみたけど、全然ダメで。なんか職業ないかな?って考えてて、消去法で役者が残っちゃったんですよね。これだったら続けられそうだな、と思って。よし、役者になろうって。

長谷川:へぇ。

山本:でも俳優といっても、あくまで「自称」じゃないですか。バスケはプロっていうのが明確にあるけど、「俺、役者です」って自分で言ってるだけだから(笑)。

長谷川:まあ、言ったもん勝ちだからね。

山本:主演作が一本あれば、俳優って言えるのかな?と思って、インターネットで「俳優」「オーディション」で調べて、上から片っ端に受けていって。もう毎日がオーディション。

フイナム:笑

山本:そしたら、ある役者が俺にDMをしてきたんですよ。「山本さん、是非お会いしたいです」って。それで、六本木だか新宿だかの焼き鳥屋に行ったら、DMしてきた奴がいて。「どうも。僕が櫻木(綾)です。仲間が奥にいるので」って通されたの。そこにジュンギ役の(キム・)ジンチョル、それともう一人役者がいたんだけど、そいつは飲み屋で会ったことがあって、前から知ってたんですよ。それで「あれ、役者やってるの?」って聞いたら、「山本さんこそ、やってるの?」って逆に聞かれて。「そうなんだよ。始めたんだよ」なんて言ってさ。冷やし中華がじゃあるまいしね(笑)。

長谷川:笑

山本:そこに1人眼鏡かけた奴がいて、そいつも前に会ったことがあるような気がして。「お前、どこかで会ったことないか?」って聞いたら、「実は前に山本さんにオーディション受けてもらったことがあるんです」って。つまり、前受けたオーディションの一つだったんですよ。それで「思い出した。お前、俺のこと落としただろう。なんで落としたんだよ」って(笑)。そしたら「実は違う映画で使おうと思っていたんです」って言うから。よし、俺が主演の映画といったら、ここしかない!と思って「お前、絶対撮らせるからな」って。それが小島(央大)監督だったんです。

フイナム:捕まえたぞ!って。

山本:そうですね(笑)。

フイナム:当時すでに『JOINT』の構想はあったんですか?

山本:いや、特になかったですね。監督と俺とでストーリーを練って。二人じゃ手詰まりなんで、脚本家を呼んでって感じで。カメラ周りのスタッフは監督が用意して、キャストとスタイリストは俺が声をかけました。

長谷川:(パンフレットをめくりながら)この彼(荒木政幸役の樋口想現)、昔撮影したことがあって。山本くんと共通の友達で、駒沢のバスケの人たちがいて、彼はそのつながりなんだよね。他にも知っている人が何人かいたな。

山本:あれ覚えてます? 「撃てこら!」っていうシーン。あのシーン、実は相手役の人がいなくて困ってたんですよね。その時に脚本家の奴と飲みに行って、知り合いの店に寄ったら、そこにいた客が「俺がバーをやってるからそこに行こうよ」となって。それで、その店に移って飲んでたんだけど、脚本家の奴が酒癖悪くて喧嘩になっちゃったんですよ。そしたら、そのバーのオーナーが怒り出しちゃって。「お前ら、いい加減にしろ!」って。で、その顔がすごく良い!と思ったから「怒っているところ悪いんだけどさ、映画出てくれないか?」なんて言って。

長谷川:へぇ。

フイナム:それ、逆に怒られませんでした?

山本:いや、それで仲良くなっちゃって(笑)。

長谷川:『JOINT』は、やっぱストーリーが面白かったね。

山本:声の大きさとか、詰めの甘さとか、ちょっと荒っぽいところがあるけど、総じて結果良かったなって。それを綺麗にしたら、見てられないものになっちゃうし。

長谷川:そうだね。なんか滑舌が悪い感じはあるんだけど。でも、この前、山本くんが言ってたけど、昔の映画ってそうなんでしょ?

山本:三船敏郎とか全然言ってること分からないし、ショーケンもよく分からないですね。

フイナム:それ分かります。家で昔の邦画を見るときは、ついついボリュームが上がっちゃいますよね。。

長谷川:やっぱり今の映画って、ちゃんと話さないといけない、みたいなところがあるんだろうね。題材としても、こういうのを扱わないだろうし。でも今の時代って、Netflixが出てきて、色々変わってきたと思うんだよね。だからこういう題材も一時期はタブーだった気がするけど、これからはもっと作られるようになるんだろうね。

フイナム:山本さんが言っていたように、荒削りな部分はありましたが、その分リアリティが増して、ぐんぐん引き込まれました。

山本:業界の人は色々なこと言ってくるんですよね。脚本がどうとか、画角がどうとか、照明がどうとか。でも、そういうことが自分たちからすると、どうでも良くて。テクニックとかスキルで出来たものじゃないし、逆に言ったら、泥臭さしかないんですよ。そこに装飾したものが輝いて見えるだけで。業界の人はそこに気付かないで、小手先だけを見るんですよね。そんなこと俺ら考えてやってもないし。

長谷川:うんうん。

長谷川:こういうパンフレットは誰が作るの?

山本:配給会社。ポスターも配給会社。俺らが作ったポスターはもっとカッコ良いもん。

長谷川:へー。

山本:レコード会社と一緒で、売れるようにパッケージを変えたりするわけじゃないですか。(ポスターに)“白か黒か”とか書いてるけど、俺たちからしたら、そういう話じゃなくね?みたいな。まあ、でも彼らは映画を売るプロだって言うからね。

長谷川:じゃあ、しょうがないかって。

フイナム:配給会社はどうやって決まったんですか?

山本:撮り終わって、どうしよう?となって。そもそも配給会社があることすら知らなかったから。

長谷川:笑

山本:とりあえず映画館を借りて、そこで一発流してみようか、って。新人バンドがハコ借りて歌ってみようっていう感じで、新宿ピカデリーっていうデカい映画館を借りて、チケットを売って。

長谷川:うんうん。

山本:それが大爆発して、300枚のチケットが3日で売り切れたんですよ。

フイナム:おお。どうやってプロモーションをしたんですか?

山本:口コミとSNS、それと地元の奴に「人数集めてくれ!」って言って。そういう時、地元はやっぱ強いですね。中華屋のおじちゃんとか駄菓子屋のおばちゃんとか来てくれるんですよ。

長谷川:発表会だからね。

山本:うん、発表会。そこで配給会社を呼んで、次のステップを決めようって話してて。結果それが上手くいって、配給会社が決まったんですけど、「上映は1年後だ」って言うんですよね。え、そんな先なの?って。

長谷川:先々のスケジュールが埋まってるんだね。

山本:本当だったら、制作前とか制作中に配給会社決めて、上映スケジュールを押さえるんだけど、俺らは作り終えて、300人動員した後だったから。

長谷川:でもさ、それが良かったんだろうね。最初から配給会社がいたら、制作中にあーだこーだ言ってくるわけで。

山本:うん、そうですね。

STAFF

Photo_Seishi Shirakawa
Styling_YK.jr
Hair_Kenichi Yaguchi
Direction_Akio Hasegawa
Composition&Text_Shigeru Nakagawa
Edit_Ryo Komuta、Shun Koda

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