PROFILE
大学在学中に雑誌「Boon」でライター活動を開始し、1990年代のスニーカーブームを牽引した同誌のスニーカー特集や別冊を担当。以降、スニーカー専門誌のほか、アパレルブランドのカタログ&ウェブ制作、書籍なども手掛ける。
ファッションディレクター、スタイリスト。英国の雑誌『モノクル(MONOCLE)』では創刊よりファッションページの基礎を構築。2015年にはファッションディレクターに。2012年より2018年秋まで『ポパイ』のファッションディレクターを務めた。
長谷川:ちょっと時間が空いちゃいましたが、今の時代における普通のスニーカーについて話し合う会の第二弾です。いろいろな角度から普通を定義していきましょう。今回も新型コロナ感染拡大を避けるため、LINEで各自撮影&文字打ち込みでの対談です。よろしくお願いします。
岸:お願いします。ではまずこの企画のタイトル通り、「スニーカーの普通」で始めますか。といっても、最近普通の定義が少し変わってきて、こんなモデルもベーシックかなと。
長谷川:ですね。
岸:90年代初頭に発売された当時はバリバリのハイテクだったけどね。
長谷川:今でもスポーツスタイルに一役買ってくれるのだから名品です。復刻してからだいぶ経ちますから、もはや定番ですね。「エア ジョーダン8(AIR JORDAN 8)」くらいまではスタンダードですね。
岸:たしかに「エア ジョーダン8」まで、っていうのわかるな。
岸:お、「エア ジョーダン 3」のネイビー。
長谷川:不人気なんですかね。原宿歩いてたら「アトモス」で売ってたんで、衝動買いしてしまいました。ネイビーっていうのが奥ゆかしくていいなと思って。「ジョーダン」って赤とか黒が多いですよね。
岸:そうだね。
長谷川:ネイビーのはけっこう珍しいですよね。でもあまり色をいじったのは好きじゃないんです。
岸:このネイビーは新鮮だね。
長谷川:やっぱり(マイケル)ジョーダンが履いてた匂いがしそうかどうかがすごく大事で。
岸:僕は思いっきりアレンジしたカラーの「ジョーダン」も認める派。例えば、、
岸:これ最近、「スニダン(SNKRDUNK)」で購入しました。
長谷川:これはジョーダンの匂いが残ってますね。ん? これ、毛が生えてるんですか!?
岸:アッパーがハラコ。
長谷川:へー、先輩っぽいですね。
岸:薄いグレーとピンクのバッグスバニーカラー。自分のなかではかなり気に入ってます。けど、定価割れしてた。いわゆる「ジョーダン」の死に筋です。
長谷川:このサイトすごいですね。
岸:セカンドマーケットっていうかね。有名なのは「StockX」で、こっちが本家。個人間の売買を仲介して本物保証してくれる仕組み。
長谷川:自分の好きなものに、こうして世間の価値をつけられてしまうと残念な気持ちになってしまいますよね。。タフにならないと個性が伸びない時代ですね。
岸:タフにならないと、って名言だね。
長谷川:ありがとうございます。
岸:〈エンダースキーマ(Hender Scheme)〉、かっこいい。
長谷川:「ジョーダン」じゃないのに「ジョーダン」を思わせる。
岸:完全に“あれ”でしょ。
長谷川:先ほども申し上げましたが、ジョーダンの匂いがするかどうか、つまり勇姿を思い起こさせるかどうかが大事です。
岸:そういう意味では完全に合格でしょ! コンセプトがかっこいいうえに、靴作りの技術が一流。
長谷川:すごくコンセプチュアルなものづくりをするところが柏崎くんのすごいところですね。革靴の製法で、職人の方がハンドで縫い上げているんです。でもスニーカーのデザインだと、パーツが多いから、縫うのがすごく大変で、引き受けてくれる工場が少ないそうです。でも、全ての工程を東京で行なっているんですよ。今どき珍しいです。
岸:仲良いんですね、今度紹介してください。
長谷川:はい。彼は我が台東区を代表する存在ですよ。物をただ作るんじゃなくてクリエイティブとセットになっている。国力が下がっている今、こうした産業や技術は継承していかないと、もう何もなくなっちゃいますからね。なんでもかんでも外国に任せてたら良くないです。若いやつらは、勉強が嫌ならこういうとこで働けばいいのにって思います。ということでお次はこちら。
岸:あっ、出た。
長谷川:これは栃木レザーの「1300」。
岸:一番気をつかうヤツじゃないですか。
長谷川:革の味わいもいいのです。
岸:贅沢だね。
長谷川:でもこれがぼろぼろになってるくらいも、いいのかもです。コロナが落ち着いたら履こうと思ってるんですけど、全然終わらないから履けてないです。
岸:履き込んで飴色になったら良さそう。〈ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)〉のカバンの持ち手みたいに。
長谷川:ですね。
岸:それにコロナの収束を待ってると日が暮れるよ。
長谷川:(笑)。
長谷川:もはやスニーカーではないんですが(笑)。
岸:あら珍しい。
長谷川:革ということで〈レッドウィング(RED WING)〉に最近ハマってて。
岸:〈レッドウィング〉のベージュいいよね。
長谷川:革のベージュ系の色ってなんか好きなんです。
岸:昔めちゃくちゃ憧れたな。
長谷川:美しいですよね。
岸:さすがにエンジニアは買わないの?
長谷川:エンジニアもいいですよね、持ってます。というか、スタイリストなんで(笑)、撮影備品でもあるから、基本なんでも持ってます。
岸:汚れてくるとかっこいいよね。なんか喧嘩強そうで。
長谷川:(笑)。エンジニアはネイビースエードと黒のスムースレザーです。
岸:僕もスムースレザーのは持ってます。〈レッドウィング〉は“渋カジ”を抜きには語れないよね。
長谷川:ですね。“渋カジ”が今キテます。
長谷川:これはまた別の角度なんですが、「エアフォース1(AIR FORCE 1)」はやっぱハイカットが好きです。ミッドとか最低です。
岸:同意。
長谷川:このベルトにロマンがあるんです。垂らしてみたりして。
岸:わかる。ルーズに留めてみたり。
長谷川:結局クラシック系です。服と合わせることが前提となるとクラシック系に収まります。
岸:僕もこれ持ってます。
長谷川:ゴアテックスですか?
岸:いや、生ゴム素材。アッパーが生ゴムです。
岸:なんかヤンチャでかっこよくて。
長谷川:いいですね。
岸:ベージュは服とよく合うしね。ベーシックなのでいうと、僕はこんなのとか。
岸:〈リーボック〉の「エックスオーフィット LO(EXO-FIT LO)」とか。
長谷川:いいですね。このなんでもなさが洒落てる。クール。
岸:「ナイキ ブレーザー SB(NIKE BLAZER SB)」のネイビーです。
長谷川:へー、〈ナイキ〉っぽくない配色ですね。
岸:2018年モデルでしたが、最近「スキット(SKIT)」で購入しました。
長谷川:〈リーボック〉もこれも、地味で普通なとこがいいですね。別注が人気みたいですけど、やっぱりインラインが一番洒落てます。
岸:同意。まさにインラインが一番いいよね。この80年代の風情が心地いい。まぁ別注がかっこ悪いわけではないけどね。
長谷川:はい。いずれにしてもベーシックというのは今の時代に必要ですね。値段や個人の感覚に左右されない普遍の価値。この靴には何事にも動じないタフさがありますよね。履いている人にも同様な精神性を感じてしまいます。モテそうな靴ですね(笑)。
岸:誰でも買える普通のスニーカーから、かっこいいものを見極めるのが大人のたしなみだよね。
長谷川:ですね。いつでも買えるっていうのを自分の判断で買うっていうのが一番です。
岸:そうそう。
長谷川:やっぱり精神性が出ますね。
岸:いつでも買えるとなかなか買わないんだよね。
長谷川:そうですね。焦ると調べて価値あるものを買ってしまうものです。
岸:それと、長谷川くんと話したことがあるけど、派手なリミテッドものって履くの恥ずかしいじゃん。
長谷川:そうなんです。
岸:ちょっとイキってるというか。もちろん、そういうプレミアものを真剣に探して履いてる人には情熱を感じるし、それも一つのスニーカーカルチャーだと思いますが。
長谷川:はい。〈ランボルギーニ〉を買ったとしても職場には乗っていけないです。見てる分にはいいんですけどね。
岸:そんなこと言いながら、こんな派手なのも買っちゃいました。
長谷川:これ、僕も持ってます。
岸:もう1足。
岸:これらは2020年モデルです。
長谷川:「エア トレーナー(AIR TRAINER)」はデザインが永遠。名作中の名作。ナイキでも3本の指に入る傑作です。もはやクラシックとして殿堂入りですね。「ジョーダン」もそうですが、思い入れがあるとまた別問題っていうのはありますね。
岸:そうなんだよね。自己矛盾してるところはあるんだけど。
長谷川:フラットな目線で見れば、「ジョーダン」も「イージー(YEEZY )」も何もかも同列なはずなんですけど、「ジョーダン」だけはマイケル・ジョーダンが履いてたっていう価値が上乗せされてしまっているからよく見える、というのが面白いなって思うんですよね。
岸:「ジョーダン」の場合はどんなにスニーカーのデザインがかっこよくても、マイケル・ジョーダンの本業のパフォーマンスがよくないとダメなわけだけど、「イージー」は選手が履くわけじゃないから、そこは違うよね。
長谷川:そうですね。けど、やっぱりマイケル・ジョーダンがすごかったから、「エア ジョーダン」もよく見えるわけであって、本当はデザイン的にはかっこ悪いのかもしれないですよね(笑)。でも「エア トレーナー」に関しては(ジョン)マッケンローとか関係なく単純に靴としてカッコいいわけだから、デザインの素晴らしさっていうのは、当然あるとは思うんですが。
岸:あー、なるほど。
長谷川:だからさっきも言いましたけど、僕が好きな「ジョーダン」は、本人が履いてた時代までなんです。しかも前半。せいぜい11くらいまでで、クラシックな「ジョーダン」が萌えポイントなんですよね。
岸:そうだね、熱狂的に人気があるのはティンカーがデザインしていた11あたりまでだよね(ティンカーはその後も断続的に「エア ジョーダン」をデザインしています)。でも僕はもはやそういう境地を越えて、最近の「エア ジョーダン 33」とか「エア ジョーダン 34」を履きたいなって気になり始めてます。
長谷川:そのへんはクルマと同じですかね。クラシックカーが好きだけど、いまの「プリウス」もかっこいいみたいな話ですよね。僕の場合はさらに、観賞用と履く用で自然に分かれてしまってますね。派手な靴は履かないけど、見るために欲しいというか。だから本当は画像だけでいいんじゃないかって気もしてます。実物はいらないんじゃないかと。手元に靴がありすぎて置ききれないから(笑)。
岸:「エア ジョーダン」は〈ナイキ〉のなかでも常に最新のテクノロジーを導入するモデルって位置付けだったから、そこがまた魅力的だよね。初代の「エア マックス」が発売された翌年には「エア ジョーダン 3」がビジブルエアを採用していたり。
長谷川:話逸れましたけど、そもそも「エア トレーナー」は人気ないですよね。
岸:まさに。
長谷川:思い入れがある靴だし、名作なんですけどね。
岸:むしろ人気ないから注目したい。
長谷川:僕も「エア トレーナー」と“クラシックジョーダン”だけは買ってしまいます。
岸:大洋ホエールズのファン心理?
長谷川:なんですかそれ?
岸:いや、弱いから応援するっていう。
長谷川:(笑)。
岸:とにかく「エア トレーナー」と「ジョーダン」は別枠だね。
長谷川:「エア トレーナー」ってティンカー(ハットフィールド)のデザインですか?
岸:はい、そうです。以前、ご本人にインタビューした際、「エア トレーナー 3」を履いて行ったら喜んでくれました(笑)。
長谷川:ティンカーは、新しいなかにも普遍性を宿らせることができるんでしょうね。
岸:いいこと言うね。
長谷川:家具とか建築とかと似てますよね。
岸:もともと建築を学んでたんだと思うよ。ティンカーの普遍的な美しさは何ものにも替え難い。
長谷川:無印みたいなソリッドさとかミニマムさがベーシックの全てではないですよね。
岸:そう思う。ベーシックだけど色気があるよね、ティンカーのデザインは。無印もいいけどね。
長谷川:はい、僕も無印は好きです。ティンカーはすごく難しいことをやってますよね。
岸:うん。色使いとかも含めて神業だと思う。
長谷川:神ですね、天才。
岸:特に、80年代後半~90年代前半は。
長谷川:うんうん。
岸:今も凄いんだろうけど、あの頃はキレキレだったような。時代が求めるデザインって要素もあるよね。例えばクルマのデザインって昔の直線的なデザインがかっこいいけど、空気抵抗とか燃費のことを考えると、昔みたいなデザインは作れないらしい。エコじゃないから。
長谷川:ああ、そうですね。僕、昔から〈ポルシェ〉の「911」が好きで。乗ってる人をカッコ悪く見せるくらい、カッコいいクルマです。
岸:〈ポルシェ〉いいよね。すごいかっこいい。丸みがいい。乗ればいいじゃん? あ、免許がないか(笑)。
長谷川:いや、あることはあるんです。(笑)。〈(フォルクス)ワーゲン〉の「タイプ1」と〈ポルシェ〉の「911」のデザイナーが同じなんですよね。偶然にもその二つだけは昔からすごい好きなんです。
岸:そういえば、このインスタでヴィンテージのポルシェがよく投稿されてるよ。他にもクルマ全般、ガジェット、生活雑貨などオシャレなプロダクトのカタログみたいなアカウントだけど、写真の構図がカッコいい。クルマなら真横といった具合に潔いのが好き。
長谷川:僕はこういうアカウントを見てます。
岸:あぁ、この見せ方かっこいいね。クルマとスニーカーを対比させてるんだ。
長谷川:こういうのを見てると、コンセプトでものを買いたくなるっていうか。なんか最近こういうインスタ流行ってますよね。コンセプトで編集しているっていう。
岸:見るだけでかっこいい靴は確かにあるよね。フォルムとか、素材感とか。このインスタのアカウントにはカッコイイことの基準が確立されてると思う。
長谷川:さっきも言いましたけど、履く用の靴と見る用の靴ということですよね。履けたら履けたでいいんですけど。やはりクルマとスニーカーってちょっと近いところがあると思うんですよね。
岸:そうそう、似てるよね。プロダクトの感じとか。
長谷川:最近、これ買ったんです。
長谷川:このロゴかわいいです。あと、箱も地味で洒落てるんです。
岸:そうだね。本体のデザインもやばいけど、箱もかっこいい。
岸:最近はこういう無機質っていうか、無印良品的なパッケージが多いよね。
長谷川:たしかに無印ですね。無駄を省いた雑さがいいです。
岸:無印というか〈ムジラボ(MUJI Labo)〉の方なのかな。
長谷川:でも、中身とのギャップがすごいっていう。
長谷川:それこそクルマを見てるような感覚です。
岸:テクノロジー的にはもう好き勝手やってます、って感じだね。レーシングカーみたいな。
長谷川:ファッションとはもはや違う話ですよね。
岸:うん。削るところは削って、テクノロジーをむき出しで搭載するみたいな。
長谷川:テクノロジーというか技術革新の話なんですかね。
岸:「ズームエア(ZOOM AIR)」を2段重ねにしてるところとかヤバいね。ウィメンズの「ズーム ダブル スタックド(ZOOM DOUBLE STACKED)」っていうモデルが採用してるシステムに似てるけど、微妙に違うね。
長谷川:全部載せですね。こういうスニーカーに普通のボタンダウンとか「501」とかいいと思うんです。
岸:たしかに、これでスポーツウェアとか着ちゃったら、そのまんまだよね。
長谷川:軍人とかの領域ですよね。
岸:軍人って(笑)。
長谷川:ソックスもついてます。指が分かれることにこだわってるんですかね。
岸:「エア リフト(AIR LIFT)」仕様のソックス。指が分かれている方がパフォーマンスが向上するとか、そういう理屈だったような。
長谷川:どんな靴なんでしょうね、これは。
岸:身近にある材料や技術で作った最高のスニーカーなのかな。「ISPA」ってたしかそんなコンセプトだった気が。(注:ISPAとは?)
長谷川:なんか僕は、左足の魚の目の治療がなかなか終わらなくて、靴によっては当たるんですよね。これはモロにプラスチックパーツが当たって痛いです。
岸:魚の目痛そう。この靴、フィット感も良さそうだもんね。
長谷川:この左のパーツが当たって痛いです。けど、これは僕の指の問題なんで。
岸:クッションはドクター中松のみたいにポンピングしそうだよね。
長谷川:まさにそんな感じです。
岸:うんうん、挑戦的な姿勢が〈ナイキ〉っぽくてかっこいいね。
長谷川:ですね。
岸:ギリギリの最先端を追求してる感じ。
長谷川:「エア マックス(AIR MAX)」が出てきた時を思わせる〈ナイキ〉らしい靴です。〈ナイキ〉はこういうコンセプトありきのところが面白いですよね。
岸:そうだね。もっと出して欲しいよね。なんか〈ソニー(SONTY)〉が「トリニトロン(Trinitron)」を開発したときみたいな。製品化するには早過ぎて、見切り発車だったみたいよ。
長谷川:へー。
岸:ただ技術には革新的だったっていう。
長谷川:あ、大事な箇所を見つけました。
長谷川:即興だそうです。
岸:しかもビーバートン(注:ナイキの本社があるオレゴン州の都市)で!
長谷川:デザインだけですけどね。
岸:つくづくパッケージがいいね。あとシールが貼ってあるの好き。
長谷川:見どころ満載です。
岸:当然リサイクル素材だし。そういう流れで言うと、僕も最近こんなの買いました。
長谷川:カッコいい!
岸:“宇宙ゴミ”をマテリアルに使用したサステナブル系のシューズです。
長谷川:宇宙のゴミはどうやってゲットしたんですかね。
岸:いや、“宇宙ゴミ”っていっても、本物じゃないみたい。調べてみたら、〈ナイキ〉では工場の床に落ちた糸屑やフォームやラバー素材のスクラップを“宇宙ゴミ”と呼んでいて、それらを混合したクレーターフォームを採用することで炭素排出量を抑制しているみたい。
長谷川:なるほど。
岸:まぁ、〈ナイキ〉のクリエイターがよくやるアメリカンジョークみたいなものなのかな? ちなみにこの「スペースヒッピー」シリーズは新色も追加されてます。
長谷川:僕のとディテールは似てますね。
岸:そうだね。ただフィッティングを担うストリング(ひも)が細すぎて、切れないか心配。
長谷川:今こういうの履いてる人、あんまり見ないですよね。
岸:たしかにね。即完売だったのに。
長谷川:どう履いていいかわからないんですかね。
岸:それはあるよね。けど、こういうハイテクを上手に履いてる人は本当にイケてると思う。
長谷川:僕もそう思います。なかなか難しいですからね。でも最近のスニーカー好きって服に興味なさそうな気がするんです。投資対象というか、鑑賞用というか。結局、洒落てる人は地味な靴履いてます。
岸:服もスニーカーも好きって層は確実にいるはずだけど、年齢層が上がってきてベーシックなものに惹かれてるのかもね。けど、そういう長谷川くんもやっぱり地味派でしょ?
長谷川:今はそうですね。でもそれだけだとつまらないってコロナになって思ったんです。刺激が必要だなって。それでさっきの買ったんです。結局、部屋で見る用になってしまうかもですが。
岸:それにしても、僕も長谷川くんもスニーカーとクルマに同じような共通点を見出してたんだね。
長谷川:昔の「ゴルフ」は〈ナイキ〉の「ワッフルトレーナー」みたいな雰囲気もありますよね。
岸:そうだね。「ワッフルトレーナー」は名作だよね。あそこまで古いとなかなか履くところまではいかないけど。
長谷川:ですね。
岸:でもなぜか「LDV」は履けちゃうんだなぁ。
長谷川:ソールがかっこいいですよね。
岸:そうそう、形状がね。
長谷川:ソールでいうと、〈ニューバランス〉の「998」ってソールが斜めになってて似たイメージあります。
岸:わかる。
長谷川:「998」でも2つあるっぽいです。
長谷川:全然違う。
岸:ほんとだ!マニアックだね。『ブーン(Boon)」みたい。
長谷川:(笑)。なんでなんでしょうね。
岸:年式の問題かなぁ。とにかくソールがごついのはかっこいいよね。
長谷川:そうですね。
岸:だから前回も紹介した「M997SNF」も同じ文脈ですね。
長谷川:この辺りってスティーブン・スミスなんですかね。
岸:誰だっけ?
長谷川:「ポンプフューリー」と、たしか「1500」もデザインしてる方です。「イージー」とかもやってるっぽいですよね。
岸:ああ、その人ね。
長谷川:このへんもそうですかね。
岸:あぁ、同じだね。
長谷川:先輩と話してても思ったんですけど、このサイトのテーマでもある「普通」って、何をもって「普通」とするかっていうと、色々あるなって。例えば、世間でいうところの「スタンスミス」って普通の靴じゃないですか。それでいうと、もはや「ジョーダン」の「V」くらいまでは、普通だなって。
岸:そうだね。クラシックっていうかね。
長谷川:はい。だって「V」って出たの30年くらい前ですよね? 90年発売だから。それでいうと、「スタンスミス」って70年代の発売だからその時点ですでに20年経ってるわけで、そう思うとすごいですよね。
岸:この「スタンスミス」は?
長谷川:最近、サステナブルの「スタンスミス」を出してて。
岸:あぁ、あるね。
岸:マテリアルがリサイクルなのね。
長谷川:今の時代はどういうストーリーが背景にあるかどうかが大事な時代になってきていて。
岸:それはそう思う。
長谷川:逆にいうと、ただカッコいいだけで売れる物はすごいです。
岸:たしかにそうなるかもね。
長谷川:普通を追い求めていくと、やはりストーリーは大事ですね。
岸:普通の服や靴にこそストーリーが求められる。それで思い出したんだけど、音楽のクラシックって、ベートーベンとかバッハとかの何百年前のものじゃない。でも、今から100年後とかに現代の音楽がクラシックって呼ばれるようになるかっていうと、そうはならないよね。
長谷川:どうでしょうね。意外とそういうことでもないかもですよ。ジャンルが違うだけで、大きくはクラシックというくくりになる可能性もありますよね。例えば、2021年の僕から見ると「スタンスミス」と革靴はかなり近い存在感に感じているんですが、誕生した時期は全く違う。それと同じようなことなんじゃないかと。
岸:スニーカー界の本当のクラシックってなると、(コンバースの)「オールスター」とか、「スタンスミス」とかになるよね。
長谷川:そうですね。素材も関係あるんですかね。
岸:そうかもね。で、テクノロジーもあんまり入ってないというか。
長谷川:世論がその時代ごとに、何を普通とするかみたいなのって違うと思うんです。スティーブン・スミスとかティンカー・ハットフィールドが思う普通っていうのも、また別のところにあるでしょうし。
岸:そうだね。
長谷川:けど、やっぱり改めて思うと「スタンスミス」って本当にクラシックな存在ですよね。
岸:うん。パーツも少ないし、切り替えも少ないしね。
長谷川:最近、「スタンスミス」を別注したいなって思うんですよね。ハトメの部分が白く塗ってる部分が気になるんです。あとトゥが丸すぎる気がするんでよね。。
岸:あと靴の高さという部分では薄いよね。もっと厚くしてもいいのかもしれないけど、下手に厚くすると安っぽくなっちゃうからね。
長谷川:はい。なにかを少し変えると、すごくよくなることってあると思うんですよね。。まぁまだまだいろいろあるんですが、そろそろ終わりにしましょうか。また近いうちにやりましょう。
岸:是非是非。
長谷川:ホカ(オネオネ)の話とかもしたかったですし。
岸:ホカね。
長谷川:このLINE対談、なんか居酒屋にいるみたいで楽しかったです。
岸:そうだね、居酒屋トークっぽい。今度は飲みながら(笑)。
長谷川:そうしましょう(笑)。
岸:冗談です。僕は飲めませんので(笑)。
長谷川:ひとまず今回はここまでということで。ありがとうございました!
岸:ありがとうございました!