AKIO HASEGAWA. HOUYHNHNM

2020.10.8 Up
Focus on

気になる服とか人とか。

Vol.25
A.H + SSZ
春夏シーズンに引き続きリリースされる〈A.H + SSZ〉。今回はワークウェアというテーマでものづくりがスタートしたようです。男の服におけるワークウェアの重要性とか、ポケットの話とか、そんな感じのいつものスモールトーク。

about A.H + SSZ

昨年より不定期でリリースされる、スタイリストの長谷川昭雄とビームスの加藤忠幸が手がける〈SSZ〉とのコラボレーションライン。今回はシャツジャケットとパンツをリリース。

PROFILE

加藤忠幸

鎌倉野菜を生産する加藤農園の4代目。有機農業に軸足を置き、自家栽培された野菜や生花を、鎌倉市農協連即売所(通称レンバイ)で販売中。日々農作業に取り組みつつ、勤務する「BEAMS」でバイイングや〈SSZ〉ディレクション・デザインを手がけるなど、農業とファッション間をシームレスに活動する。

長谷川昭雄

ファッションディレクター、スタイリスト。様々な媒体、広告のディレクションを手がけるなか、英国の雑誌『モノクル(MONOCLE)』では創刊よりファッションページの基礎を構築。2015年にはファッションディレクターに。2012年より2018年秋までは『ポパイ』のファッションディレクターを務めた。

左:〈A.H + SSZ〉ワークジャケット ¥17,800+TAX、〈A.H + SSZ〉ワイドテーパードペインターパンツ ¥18,800+TAX(ともにビームス 原宿)、〈Ken kagami〉プリントTシャツ「転売用Tシャツ」 ¥6,000+TAX(STRANGE STORE)、スニーカー、キャップは私物
右:〈A.H + SSZ〉ワークジャケット ¥17,800+TAX、〈A.H + SSZ〉ワイドテーパードペインターパンツ ¥18,800+TAX(ともにビームス 原宿)、〈LOS ANGELES APPAREL〉スエットフーディ ¥11,000+TAX(Props store Annex)、〈ARTEX KNITTING MILLS〉ニットキャップ ¥1,200+TAX(HIGH! STANDARD)、Tシャツ、スニーカーは私物

フイナム:7月に発売された〈A.H + SSZ〉ですが、その秋verとも言える服が登場です。

加藤:アキオさん、この中に着てるTシャツなんですか? 「転」??

長谷川:これは加賀美(健)くんのお店で買った「転売用」っていう文字が入ったTシャツです。

加藤:あー、そうなんだ。俺、加賀美さんのお店(ストレンジ ストア)に行ってみたいんですよね。ああいうリサイクルショップ?みたいな感じ、すげー好きなんです。なんか、いいものだけ選んでる感じするじゃないですか。

長谷川:そうですね(笑)。このTシャツ、もう少し大きいサイズも作ってくれたらいいのになって思ってるんです。XLまでしかなくて、気持ち小さいんですよね。

加藤:うん、デカい方がいいですね。

フイナム:加賀美さんのTシャツの話はまた今度ゆっくりしましょう(笑)。今回は加藤さんの息子さんお二人をモデルにして、撮影をさせていただきました。

加藤:ありがとうございます。

フイナム:最初に息子さんをモデルにされたのは、〈SSZ〉の「いざ鎌倉」コレクション(20SS)のZINEでしたよね。

加藤:はい。あのコレクションは自分でもすごく気に入っているんですが、〈SSZ〉をもっと若い子にも着てもらいたいっていうことで、初めてやってみたんです。あと絶対アキオさんの影響なんですけど、服を大きく見せるには、モデルはちっちゃい方がいいなって思うようになって。まぁ、ものは綺麗に見えないんですけどね、適当なカメラで撮ったから(笑)。

長谷川:そう、あのZINEを見てこの子たちいいなって思ったんです。で、実際会ってみてもやっぱりいい表情するなって。

加藤:本当ですか?(笑)二人ともフツーの学生なんですけど。けど、普段から自分が着てる〈SSZ〉の服を、どっか行くときに「これ着てけばいいじゃん」って着させてるんですよね。

フイナム:それでなのかすごく似合ってました。

長谷川:今回撮影した服は、春夏につくったものの延長ではあるんですよね。

加藤:そうです。

長谷川:だから裏地も共通で。春夏はショーツでしたけど、今回はそれを秋仕様に長くして、ディテールもペインターパンツにしてもらったんですよね。

加藤:そう。アキオさんにワークパンツ作ろうって言ったら、「いいサンプルありますよ」って持ってきてくれたんです。それがペインターパンツだったんですけど、タグをつける位置とかを参考にしつつ、あとはカンヌキのステッチは白く残しておこうとか、そういうところを変えて。

長谷川:あんまりやりすぎるとなんか穿きにくくなっちゃうので、地味な方がいいなと思ったんです。

加藤:ワークシャツの方もサンプルを持ってきてもらいました。アメリカのワークショップみたいなところで売ってるようなやつ。ああいうのって、なんでかよく見えちゃうんですよね。本当になんでもない服なんですけど。。

長谷川:いいですよね。あとお店の風情もありますよね。服が山積みになってる感じとか。それと大事なのはサイズですね。S、M、L、XL、2XL、3XL、4XL、5XL、、どこまであるんだ!みたいな(笑)。そういうの見ると、これ着てみたいってなるんです。

加藤:そうそう。だいたい手に取るのがすげぇデカいやつなんだけど、着てみると意外と悪くないっていう。

長谷川:そういう大きいのって日本には絶対入ってこないから、ここで買わないともう買えない!っていう気持ちにもなるんですよね。

加藤:それにデカいやつはだいたい状態がいいですよね。古いワークウェアでもフラッシャーとかも綺麗に残ってたりするし。値段も手頃で、試しに買ってみようかなっていう気になる。

長谷川:気軽に買えますよね。

加藤:日本でそういうのを着てると、よく「それどこの?」って聞かれますよ。海外で買ってきたやつって答えると「すごいね」って言われるんですよね。なにがすごいのかよくわかんないんだけど、とにかく「すごいね」って(笑)。まぁでも、アキオさんがこういうのを世に広めるまではあんまりこういう大きい服を使った感じって、誰もやってなかったですよね。

長谷川:アメリカのワークウェアのサイズがおかしい感じのどこがいいかっていうと、服をちゃんと着たくないっていう願望があるんですよね。

加藤:あ、それでいうとエプロンをちゃんと着てないやつ、あれアメリカの店員っぽくて、めちゃくちゃかっこいいなって思ったんです。

長谷川:いいですよね、アメリカのああいう適当な感じ。僕はエプロンはああしたい派なんですよね、他の人は知らないですけど(笑)。

加藤:ああいうの好きじゃない人もいますよね。

長谷川:まぁ雰囲気ですからね。けど、なんかちゃんとしてたら全然つまらなくなってしまう気がして。今回のもそうなんですけど、マスクがズレてる感じを狙ってやりました。普段は、鼻とか出てる奴を見ると、バカじゃねーか、ちゃんとしろよって思うんですけど(笑)、撮る分には、ズレてる方がいいですね。これは世界で僕が最初だと思います。マスクで外すスタイル。そもそも、テーマでもなく、マスク付けて普通にファッション撮影してる人も、まだいないんじゃないですかね。

加藤:意味ないじゃんってやつ、いいですよね(笑)。

長谷川:この前のショーツに関しては、そもそも個人的に買う時のルールがあるんです。例えば〈ディッキーズ〉のショーツとかは長めの設定のが出てたりするんですけど、せっかくサイズレンジがあるのであれば、3サイズくらいデカくして、さらに落として下の位置で穿きたいっていうのがあるんです。膝は絶対出したくないっていうか。膝どころかかなり下を目指したくなるっていうか。そう思うと、どんどん選ぶサイズが大きくなってきちゃうんです(笑)。

加藤:もはや何分丈かわからないっていう(笑)。アキオさんとの取り組みで何がいいかっていうと、デカいサイズなんだけど、丈を詰めなくてもいいんですよ。だいたいデカいやつってレングス直さないといけないのに、そのまま着れるんで最高なんです。バランスがいいっていうか。

長谷川:あと加藤さんが作るパンツは、テーパードしてますもんね。

加藤:はい。変に引きずることもないし、ちょうどいいところで止まってくれるんですよね。

フイナム:ワンサイズですか?

加藤:いや、パンツはスリーサイズあります。シャツはずっとワンサイズでやってますね。

長谷川:ワークウェアって、LAとかだとチカーノとかが着ていて、つまりストリートファッションの起源みたいなものだと思うんです。スケーターも着てるし、ラッパーも着てるし、普通の人も着てるし。

加藤:そうですね。俺も学生のときに何に影響を受けたかっていうと、やっぱりビースティ(ボーイズ)が大きくて。ビースティのビデオとかで、〈カーハート〉とか〈ベンデイビス〉とかを知ったわけで。

長谷川:LAの普通ですよね。ストリートファッションのルーツというか、起源というか。一番ベーシックな部分。だからこういうのがないと、、

加藤:始まらないすよね(笑)。

長谷川:はい(笑)。よくスタンダード特集とかになると、〈ブルックスブラザーズ〉のシャツとか〈リーバイス〉の501とかっていう話になるけど、なぜか知らないけど、このへんって絶対入ってこないですよね(笑)。けど、本当はこういうのがないことには始まらないはずなのに。

フイナム:確かに。なんでなんですかね?

長谷川:基本的に、ちょっとプレッピーな視点の話なんだろうね。

加藤:いや、本当そうですね。俺はワークウェアは勝負服にもなると思ってるからなぁ。

長谷川:昔ってストリートブランドって全然なかったはずで、そう思うとみんな〈ディッキーズ〉とか〈カーハート〉を着てたはずで、そこをみんな忘れないでほしい(笑)。

加藤:うんうん。ワークウェアにはストリート感がありますよね。

長谷川:ワークウェアって、安いから大きいサイズも気軽に楽しめるわけなんだけど、じゃあ安さが全てかっていうと、そういうわけでもなくて。とにかく頑丈なところとか、そういうところにロマンを感じるんです。やっぱり安くても脆かったら、男の人が着る服としての魅力がないというか。どこか強さに憧れる部分ってあると思うんです。

加藤:わかるなぁ。うん、わかる。

長谷川:カシミアの服もいいんだけど、やっぱり頑丈さには欠けるから。だからワークウェアっていうのが男の服のベースにはあるのかなって思うんです。

加藤:今回の服に使った生地は、速乾性があって、耐久性もあって、多少のフレックスもある。ずっと使ってる生地で勝手に「SSZ生地」って呼んでしまってるんですけど。これ本当にいいんだよなぁ。

長谷川:そうなんですよね、洗ってもすぐ乾くし。あとポケットがいっぱいあるから、そこは本当に最高ですよね。普通のズボンが不便に感じちゃうんですよね。ポケット2個しかない!みたいな。

加藤:ポケットがたくさんあるから、ものを別々に入れることができるのはいいですよね。

長谷川:はい。今回はパンツのポケットに、ペットボトル入れましたけど、これくらいの深さがあるポケットってあんまりないですよね。これは加藤さんが最初に作ったパンツからこんな感じでしたよね。

加藤:『KIDS』のワンシーンで、ビールをズボンのポケットに入れるっていうのがあるんですけど、ああいう使い方っていいなって思って。

長谷川:このポケットならきゅうりも入りますよ。大根も入るんじゃないですか(笑)。

加藤:大根は葉っぱが出ちゃうかなぁ(笑)。

長谷川:とにかくこの深さが最高なんです。

加藤:本当に便利ですよね。

長谷川:この深さには、男の服への願望が詰まってる気がして。いろんなものを持ち歩きたいけど、手ぶらでいたいっていうか。だからウィメンズの人たちとこういう話をしても、全然通じないんです。

加藤:ポケットが浅いと怖いんですよね。いろんなものを入れてるから、外に出ちゃう気がして(笑)。

長谷川:〈SSZ〉のパンツのポケットはジッパーを閉められるし、もうひとつのポケットの方には別のものを入れられるし。一回これにハマっちゃうと抜け出せないです。

長谷川:このシャツもポケットがあるのがいいですよね。これがあるのとないのとでは全然違います。

加藤:なんか、こういう何気ないのがいいなぁって思うんです。ついつい今日も着ちゃおう、穿いちゃおうっていう気持ちになるというか。

長谷川:ずっと着られるものですよね。一見変わったもののように見えても、ベースは普通だし。

フイナム:お二人のなかで、いいなって思うポイントが近いんでしょうね。

加藤:うん、そうだと思います。アキオさんと話してると、「そーいうのもいいなぁ」とか色々気づくことが多いですね。楽しいです、とにかく。

長谷川:ありがとうございます。僕は実際には服を作れないので、イメージを伝えることしかできないんですけど、加藤さんチームは、いつもいい感じのサンプルをあげてきてくれるんです。しかもサンプルにした服を、さらにちょっとアレンジしてくれるというか。あくまで雰囲気として渡しているから、まんまで作るとかは、したらいけないと思うんです。ディテールも同じにするとか、本当によくないです。パーマネントな物っていうんですかね、ベーシックなワークウェアとかはベースにしてもいいと思うんですけど。

加藤:そこはやっぱり自分たちもしっかりやってますね。元ネタそのままをやるんじゃなくて、どこかオリジナルな部分を入れなきゃって思ってます。

長谷川:加藤さんのチームは、ここは大事にしなきゃっていう骨格の部分をしっかりわかってくれてるので、ほとんどイメージにズレがないんですよね。

加藤:まぁファーストサンプルでだいたい形にはするようにしてますね。あと細かい部分をアキオさんに見てもらって。そうすると〈SSZ〉なんだけど〈SSZ〉とは違う雰囲気に出来上がるんですよね。

加藤:アキオさんと今までやった取り組みでは、なんでか「いい!」っていうのが多いですね。お互いのやりたいことが伝わってる感じがします。

長谷川:僕が〈SSZ〉の基本的な部分を好きなので、それも大きいのかもしれないですね。今はもう人気すぎてなかなか買えなくなっちゃいましたけど(笑)。全部のラインナップを見る機会がなかなかないです。

加藤:いやいや(笑)。じっくり見て欲しいです。

長谷川:実物がやっぱりすごくいいですよね。というのは加藤さんが作ってるZINEは、写真の質が悪すぎてよくわからないんです(笑)。

加藤:そうそう(笑)。

長谷川:ZINEを見て、実物を見ると倍ぐらいいいです。

加藤:我ながらZINEではものの良さが出てないなって思ってます(笑)。だからそう、ZINEで見るより全然いいです。けど、写真はなかなか難しいですね。今回チームアキオの撮影にお邪魔させてもらいましたけど、めっちゃいい感じだなって思いました。プロの仕事だなっていう感じで、本当に勉強になりましたね。

長谷川:加藤さんもそうだと思いますが、同じチーム編成でずっとやっていると基本的なベースの部分を理解しあえているので、最終的な仕上がりが全然違ってくるんですよね。だからいつもほとんど同じメンバーで仕事をするようにしてるんです。

加藤:ですね。服だってなんだって、仲間がいないとできないですからね。

長谷川:今回、二人に撮影の日に初めて会ったんですけど、あぁ、こういう感じの二人なんだなって、おもしろかったです(笑)。でも、だいたい何を着てもらうかは決めてましたけど、どっちにどれをとか、靴をどれにしようかっていうのは決めてなかったので、ヘアメイク中に色々見ながら考えたんですけど、そういうのは、いつもの仲間がいるからできることなんですよね。

フイナム:何度も言うようですけど、本当に似合ってますよね。私服っぽくも見えますし。

加藤:いやぁすごくいい感じになりました。ありがとうございます、本当に。〈SSZ〉は若い子含めていろんな人にどんどん着てもらいたいんですよね。一回着たら、きっといいなって思ってもらえると思うので。

※販売の詳細に関しては「ビームス」のオフィシャルサイトをご確認下さい。

INFORMATION

ビームス 原宿 03-3470-3947
Props Store Annex 03-6455-5388
HIGH! STANDARD 03-3464-2109
STORANGE STORE 03-3496-5611

STAFF

Direction&Styling_Akio Hasegawa
Photo_Seishi Shirakawa
Hair_Kenichi Yaguchi
Edit_Ryo Komuta

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