AKIO HASEGAWA. HOUYHNHNM

2020.8.6 Up
Focus on

気になる服とか人とか。

Vol.22
「普通のTシャツ」、作ります。
今年の春にやる予定だった「白いTシャツ展」がコロナのせいで流れてそのままになっていましたが、南貴之さん率いる〈フレッシュサービス〉の力を借りて、ようやく開催することができそうです。せっかくなので、ちょっと変わった普通の白いTシャツを南さんと一緒に作ってみました。

PROFILE

南貴之

〈グラフペーパー(Graphpaper)〉、〈フレッシュサービス(FreshService)〉、「ヒビヤ セントラル マーケット」など、様々なブランド、ショップを手がけ、ファッション、カルチャーにまつわるあらゆる領域を手がけるクリエイティブディレクター。「alpha.co.ltd」代表。

長谷川昭雄

ファッションディレクター、スタイリスト。様々な媒体、広告のディレクションを手がけるなか、英国の雑誌『モノクル(MONOCLE)』では創刊よりファッションページの基礎を構築。2015年にはファッションディレクターに。2012年より2018年秋までは『ポパイ』のファッションディレクターを務めた。

フイナム:今週は夏真っ盛りということで、白いTシャツの話です。さらに8月9日(日)からイベントをすることになりました。

南:そもそもは「ほぼ日」のイベント(生活のたのしみ展2020)で白いTシャツ展をやろうってところから始まってる話だよね。

長谷川:そうだね。あれがコロナでなくなっちゃったからね。

南:そうそう。で、せっかくだからそのまま白T展をやろうかっていうことになって、今回〈フレッシュサービス〉のお店でやるということになりました。

フイナム:今回はお二人にアイデアをいろいろ出していただいて、ちょっと面白い白Tを販売できることになりました。

南:まぁ、ただ普通に白Tを集めてもなーってことで、まずはいろんな白Tを集めてみました。

長谷川:けっこうたくさん集めてもらったよね。

南:そうだね。そこから俺たちの好みのボディのTシャツを4種類選びました。最終的に採用されたのは〈プロクラブ〉〈ベイサイド〉〈ギルダン〉〈ソフィー〉の4型です。

南:ボディによっては着丈を変えてるんだけど、そのあとに洗いをかけて、さらにネックのタグのところに〈喫茶談話室とAH.H〉っていうブランドネームと品質表示をプリントして、最後にボディごとに違う場所に、3桁の数字の刺繍を入れます。価格は全型共通で7800円+税。で、「AH.H」のファンクラブ会員限定の受注販売ということだよね。

フイナム:はい。3桁の数字はファンクラブの会員番号になります。今回はサンプルということで、僕たちに馴染みのある“あのブランド”の品番を入れてみました。それにしても結構手間暇かかってますよね。

長谷川:刺繍は長谷川の手書き文字を使ってもらってます(笑)。

南:これがけっこういいんだよね(笑)。

フイナム:Tシャツの購入方法やイベント概要などは、最後に改めて説明するとして、まずはそれぞれのTシャツの感想からお聞きしたいです。

長谷川:はい。サイズ感を見てもらうために、2人のモデルに着てもらったんだけど、2人ともかなりデカいから、あんまり参考にならないかもなんだけど。

南:でも超似合ってるじゃん。白いTシャツの爽やかな感じを損なわない、素晴らしいビジュアルだよね。

PRO CLUB

長谷川:じゃぁ、まずは〈プロクラブ〉。これは、着丈は変えてないないやつか。

南:そう。長さはこれでいっか、ってなったんだよね。

長谷川:なんか、白の色が他とちょっと違うんだよね。

南:そうそう、蛍光がかってるよね。

長谷川:歯磨き粉みたいな。

南:これは裾に刺繍が入ってるのか。あと裾は長めだね。

¥7,800+TAX(以下、同様)

モデル身長:193cm

長谷川:こうして見ると袖も長いけど、それがいいっていう話になったよね。この〈プロクラブ〉ってさ、LAのチカーノとかが着てるようなやつだよね。

南:(笑)。あとネックがきっちり詰まってるね。

長谷川:そうだね。異常なくらい詰まってる。

南:好きな感じではあるけどね。あとやっぱり色だよね、蛍光ざらしというか。これだけ他のと全然色が違う。

長谷川:あと、実物を見てみると赤味がかってるようにも見える。

南:独特だよね。生地厚もけっこうあるし。ヘビーウエイトって書いてるぐらいだし。

長谷川:なんていうか、独特のアメリカ感があるんだよね。

南:わかる、わかる。

モデル身長:185cm

長谷川:これがリアルアメリカなんだろうね。これに〈ディッキーズ〉みたいなひとがたくさんいるわけで。向こうのすっごい安いところで買うと、500円以下で買えるんじゃないかな。でも、そういうところがいいというか。日常的なところがさ。

南:うん。あと名前もいいよね。〈プロクラブ〉って。

長谷川:そうだね。なんのプロなんだよ?っていう(笑)。

南:意外とネームタグが凝ってるのもいいんだよね。

BAYSIDE’S

南:これも名前がいいね。ていうか、アメリカ以外の何物でもないよね、タグに国旗が出ちゃってるし。

長谷川:しかも下に“Best”って入ってるね。ベイサイズ ベスト(笑)。

南:こっちはヘビーウエイトじゃなくて、プレミアムウエイトだ。しかもコットン50%とポリエステル50%の混率だ。

長谷川:へー、これ50/50なんだ。

南:あと、これは縦(着丈)がすごい長かったんだよね。だから調整してます。

長谷川:〈ベイサイド〉って横(身幅)がちょと細いんだよね。

南:そうだね。あと、ネックはけっこう空いてるかな。生地は〈プロクラブ〉に比べると、そんなに厚いわけじゃないよね。ちょっと厚いぐらい。

長谷川:そうだね。

南:けっこうシンプルで使いやすいのかな。

長谷川:かもね。

南:ていうか、これポリ混に見えないよね。

長谷川:うん、全然見えない。

南:本当にそうなの?っていうぐらい見えない。ポリを糸に巻いてあるのかな。

長谷川:50%入ってるってことは、乾きも早いんだろうね。

南:そうだね。他はみんなコットン100%のはず。

GILDAN

長谷川:次は〈ギルダン〉か。けど、いわゆる〈ギルダン〉とタグの色が違うね。

南:そうなんだよね。なんか普通のやつよりウエイトがあるみたい。ちょっと厚いらしいよ。

長谷川:へー、そうなんだ。

南:けど、〈ギルダン〉でなんか話すことあるの?(笑)

長谷川:まぁね。

南:けど普通のよりやっぱり厚いね。

長谷川:たしかにね。けど〈ギルダン〉は安定の良さがあるよね。あとこれ、製造国がエルサルバドルになってる。

フイナム:「アルファ」の生産の方に聞いたんですが、一般的な〈ギルダン〉のボディは、情勢によって作ってるところがコロコロ変わるみたいです。例えば南米のどこか、とか。

長谷川:へー。そうなんだ。

南:エルサルバドルってのもすごいね。

フイナム:〈ギルダン〉とか、あともうひとつ有名なTシャツブランドである〈アルスタイル〉とかは、「コマーシャルTシャツ」っていうすごい安いジャンルがあるらしいんです。

南:へー。じゃぁこれはちゃんとしてるやつってことか。一枚でも着れるやつ。

長谷川:セレブ向けなんだね。

南:いや、セレブ向けってわけじゃないでしょ(笑)。

SOFFE

南:最後は〈ソフィー〉か。これは丈も身幅もデカくて、丈をちょっと切ってるやつです。

長谷川:そうだね。

南:あとこれ、ネックのリブ編みがちょっと特徴的なんだよね。

長谷川:あぁ、珍しいかも。

南:ヴィンテージのスウェットとかにあるような仕様だね。なんか、一番しっかり作られてる気がする(笑)。けど、〈ソフィー〉でこんなデカいの初めて見た。だいたいインナーに着るようなものしか見なくない?

長谷川:そうだよね。

南:軍モノで使ってます、みたいなさ。

長谷川:あとロゴの感じもいいよね。

南:うん。あと肩口の刺繍もいいね。

長谷川:俺も今回のなかで、この肩の入り方が一番好き。やってみたかったディテール。テツさんがこういうことをやっていた気がする。ちょうどタンクトップの上に来るようにしてもらったんだよね。あ、「www.soffe.com」って書いてある。ウェブサイトあるんだ。どんなのが載ってるんだろう?

南:見てみようよ。たぶんムキムキの外国人がピタッとしてるの着てる写真とか出てるよ。

長谷川:うんうん、ラガーマンみたいなね。

南:あ、ほらやっぱり。俺の予想通りの感じのサイトだね(笑)。

長谷川:ラインナップ見てみよう。

南:けっこう色々あるな。「MADE IN THE USA」もある。

長谷川:ていうか、これ、ワクワクするね。よく「中田商店」とかで売ってるようなやつかな。欲しくなるな、これ。

南:たしかに。あ、やばい、“HERO MUSCLE TEE”っていうTシャツがある(笑)。ヒーローマッスルTっていう名前やばいなー(笑)。

長谷川:〈ソフィー〉に別注したらいいんじゃない(笑)?

南:いいね。けど、とんでもないロット言われそう。10000とかさ。

フイナム:というわけで、それぞれのTシャツについて解説していただきました。改めてお聞きしますが、お二人は白Tをすごく愛用してるわけですよね。

長谷川:うん。夏は基本、白Tしか着ない。

南:今日、白Tじゃないじゃん(笑)。

長谷川:まだ夏じゃないから。あと(今日着てる)インディゴは焼けた肌にいいと思うし。でもできるだけ無地の白Tを着ていたい。最近、もらい物とか自分で作ったのとか、プリントTが家にいっぱいあって、着るようにしてるんだけど、やっぱりなんか心が荒む。無地の白Tを着ると心が洗われる気がする。でも、みんな着てるから少し嫌になってたりもする。。特にアシスタントと同じTシャツ着てるのとか、なんか嫌だし。あとさ、撮影のときって白Tって着ないほうがいいんだよね。

南:え、なんで?

長谷川:例えばモデルのメガネに反射したり、撮影中にモニターを見るときとか、白Tだと反射しちゃって全然見えなくなるんだよ。でもロケで焼けた肌にネイビーのTシャツってクドくてすごい嫌なんだよね。自分で自分が嫌になる。だから撮影のない日くらいは白T着たいと思ってしまう。とはいえ、もう何年も白Tだから少し飽きたって言う気持ちもあって、なんかいろいろ複雑なんだ。

フイナム:南さんはどうですか?

南:俺はいまも着てるけど〈グラフペーパー〉のオーバーサイズTしか着ない。本当にいつもこれ。何十枚も持ってる。ただひたすらこれを着るっていう。

フイナム:それくらいお気に入りのものが見つかるといいですよね。長谷川さんには、そのレベルで好きな白Tはありますか?

長谷川:俺は〈キャンバー〉か〈チャンピオン〉だね。〈キャンバー〉なんて流行らしたのは俺みたいなもんだと思うよ。それまで〈キャンバー〉のポケTって全然売れてなかったんだけど、たまたま『ポパイ』でTシャツ探してたときに「聖林公司」に行ったら、別注の〈キャンバー〉のTシャツがあってさ。

南:あー、あったね。

長谷川:ちょうどサマーボーイ特集のときだったんだけど、ありとあらゆる白Tのなかから本気で薦められる1着を、一人で徹底的に探しまくって、研究したんだよね。あれもこれもではない、絶対的な1着を選びたかったの。そのうえで、自分が決めたのが、ハイスタ別注の〈キャンバー〉。裾をカットして、袖も短くしてあった。ネックも変えてたね。当時、店の人には「ずいぶん前には人気あったけど、もうここ数年はダメだね」なんて言われたんだ。でも『ポパイ』に出したら2、300人の入荷予約待ちになったんだよ。それまで誰も白Tとか〈キャンバー〉とか、厚手のTシャツとかポケTとか、そういった類のことに関心を持っていなかった。〈キャンバー〉なんて置いてる店すらほとんどなかったしね。それだけは俺のスタイリスト人生の自慢というか、誇りだから言っておきたい。

フイナム:厚手のボディが好きなんですね。

長谷川:そう。前は、朝起きてからシャワーを浴びてから出かけてたの。で、シャワー浴びたあとって、すごい汗かくじゃない? それでTシャツを着ると汗かいてビチョビチョになっちゃうんだよね、せっかく着替えてるのに。だから厚手じゃないと意味がないんだよね。

南:よくわかんない理屈だけど、そうなんだ(笑)。俺はネックがダレるTシャツがだめなのよ。

長谷川:あぁ、それもあるね。俺は下にタンクトップを着るから、ネックがダレると、下のタンクトップが見えすぎてしまうんだよね。そういう意味でも〈キャンバー〉とか〈チャンピオン〉はネックがしっかりしてるからさ。あと、南くんがつくった永井博さんのTシャツあるじゃない?

南:うん。

長谷川:あれは本当にいいね。だって、あのグラフィックって夏に着たいじゃない? だから白に入ってるほうが気持ちよくて、もし黒とかに入ってたら、いまいち気分がアガらない。だからやっぱり白に入っててほしいんだよね。でもそれがペラペラのボディだと汗でビショビショになるから着れたもんじゃない。だけどしっかり肉厚だからすごく着やすいって思った。ちゃんと意味があるっていうか。でも、だいたいのグラフィックTってペラペラのボディに入ってるじゃない。そうなると、グラフィックは楽しめるけど、本当に着たい厚さのTシャツではないから、なんか残念に思うんだよね。

南:一枚で着て耐えられるって、やっぱりそれなりのクオリティじゃないとだめだよね。あと、へたれてくるのがすごい早いと思う。

長谷川:とくにプリントTとかね。

南:白Tだとそんなに気づかないけど、黒Tとかだとすごい退色するのが早いんだよね。あっという間に白っちゃけちゃう。だからうちのTシャツは高いけど、長い目で見たらこっちの方が長く着れていいのかなーって。ただ、今回のTシャツみたいな、簡単なものってあるじゃない。簡単に手に入るやつ。それはそれですごく価値があるっていうか、面白いものだなとも思う。

長谷川:普通の良さみたいなものってあるよね。さっきも言ったけど、夏って日焼けするじゃない。で、顔がすごい日焼けしたりすると、黒とか紺のTシャツって暑苦しいんだよね。だから夏はとくに白が好きなの。

南:あぁ、わかるわかる。

長谷川:だから撮影のときに、暑苦しい顔で日焼けしてさ、黒とか紺のTシャツ着てる自分は、本当はすごくいやなんだよね。白がやっぱり一番爽やかに見えて、人にも迷惑をかけないと思うよ。それは暑苦しくないていう意味でね。

南:あとコーディネイトを考える必要性がないよね。パンツのことをなんにも考えなくてもいいから。あとはサイズがある程度大きくないといやかな。大きめだから、白T一枚でも成立するけど、ジャストサイズだとなかなか難しいんじゃないのかな。

長谷川:まぁね。身体の問題もあるけどね。けど、生地が薄いとお腹が出てると気になるんだよね。そういう意味でも肉厚な方がいいと思う。

南:大きい白Tって構築的というか、モダンな感じがする。ピタッとしてるとちょっと違う感じになるんだよなぁ。昔さ、〈ヘインズ〉一枚で、首ヨレヨレで、ジーパン履いて、それが普通でいい、みたいな感じあったじゃん。

長谷川:あったね。まぁ、あれはあれで俺は好きだけどね。厚いのしか着てないから、逆に新鮮に思う。

南:俺、あれが超苦手だったんだよね。あれってそんなに似合う人がいない“普通”だよなって。

長谷川:まぁね。似合う人が限られてくるところはあるかもね。女の子が着たりするとかわいいけどね。〈ヘインズ〉のちょっと薄いTシャツの感じとかさ。

南:うんうん。けど、男性であれが似合うってけっこうレベル高いと思うなぁ。

フイナム:今回お二人が選んだ4種類のボディは、やっぱりけっこう肉厚なものが多いですね。

長谷川:そうだね。カリフォルニアとかって、やっぱりカラッとしてるからさ、あっちのカットソーって透けるくらい薄いのが多いんだよね。〈ジェームス パース〉とか。“メイドインLA”みたいなやつはそういうのが多いんだけど、外回りが多い俺は、汗をかきやすいから、3枚ぐらい重ねて着てもまだ足りないんだよね。

南:あと湿度が高いと、Tシャツが身体にまとわりついてくるよね。

長谷川:そうそう。だから日本の気候を考えると、多少の厚さがないとダメなのかなって。あとさっき話してたフォルムについても考えると、今回のTシャツのようなラインナップがベストになってくるよね。

「喫茶談話室とAH.H」白いTシャツ展
日程:8月9日(日)~8月16日(日)
時間:12:00~19:00
会場:FreshService headquarters
住所:東京都渋谷区神宮前2-13-14

※今回の白いTシャツは「AH.H」の会員限定の受注販売となります。新規会員の募集をこちらから行っています。事前に会員情報を登録していただければ、会場にて会員証を発行させていただきます。すでに会員の方は、当日、会員証とIDをお持ち下さい。
※初日の8月9日(日)は、長谷川昭雄、南貴之の両氏が店頭にて皆様をお迎えします。
※同一種類、複数枚のオーダーを承ります。
※違う種類のTシャツのオーダーも可能です。
※転売目的の方、転売の可能性があるとこちらがみなした場合には、販売を控えさせていただく場合がございます。

INFORMATION

フレッシュサービス ヘッドクオーターズ 03-5775-4755

STAFF

Direction&Styling_Akio Hasegawa
Photo_Seishi Shirakawa
Hair_Kenichi Yaguchi
Edit_Ryo Komuta

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