PROFILE
焚き火マイスター、アウトドアプランナー。ライターやモデルとしての活動を経て、2015年、自身が運営・管理するアウトドアスペース「たき火ヴィレッジ〈いの〉」をオープン。昨年には書籍『焚き火の本』を上梓した。現在ではテレビやイベント、ワークショップで焚き火の魅力を伝える。
ファッションディレクター、スタイリスト。英国の雑誌『モノクル(MONOCLE)』では創刊よりファッションページの基礎を構築。2015年にはファッションディレクターに。2012年より2018年秋まで『ポパイ』のファッションディレクターを務めた。
焚き火をするなら難燃性のウェアだ。念の為、前掛けもあった方がいいかもしれない。メディアで学んだ知識をぶつけたところ、猪野さんは、んん~と苦笑い。「キャンプは難しいこと、とメディアが伝えている節がありますよね。だから装備も過剰になる。俺はそういう考え方が苦手だから、アウトドアっぽい格好はしないようにしています。普段の格好でもキャンプができるんだよ、ということを伝えたいですね」。そう考えるのは、過去のほろ苦い経験から。「完全装備で山登りをしていたんですよ。山頂に着いたら、そこに中学生の一団がやってきて、皆ジャージ姿なんですよ。それを見た瞬間、重装備の自分が恥ずかしくなってしまって(笑)」。
実際にフィールドに出て、不安に感じることがあれば、ウェアやギアに頼ってもいいかもしれない。でもキャンプなら普段着で十分、というのが猪野さんのスタンス。唯一気を置くとすれば、洗えること。焚き火のにおいをまとった服は車やテントに匂い移りする。だから気兼ねなくガンガン洗える服がいいようだ。
何はともあれ、まずは薪の準備だ。焚き火に使う薪は大中小と3サイズを揃えておいた方がいいらしい。小中サイズは焚きつけ用で、大サイズは本番用に使う。でもキャンプ場で売られている薪は大サイズに切り揃えられているケースがほとんど。だから刃物が必要になる。まず猪野さんが貸してくれたのは、ハンドアックスと呼ばれる小型のオノ。見た目が良く、ヘッドも軽くて使いやすい。だが、なかなか薪が割れてくれない。
苦戦しているのを見かねて、猪野さんがナタを差し出してくれた。オノと比べて、ずっしりと重みがあり、加えて刃渡りが長いので、刃がしっかり薪に食い込む。なるほど。こっちの方が断然使いやすい。猪野さんによると、片面のみ刃がついた片刃と両面に刃がついた両刃があり、薪割りからフェザースティック(注:枝を削って先端を羽毛のように加工して着火剤として使う)作りまでカバーする両刃の方が使い勝手が良いらしい。
続きは後日公開。