いつものネイビーに、ナス紺を。
ダークネイビーで、ボトムスはワイドテーパード。これがいつもの自分のスタイル。誰になんと言われようとも、いつもほとんど変えない。同じままが好きだし、それ以外を期待されても応えるつもりはない。そのフォルムがここ数年、一番いいと思うからだ。ベルボトムのシルエットは嫌いだ。全然いいと思わない。ただ、最近は「501」のようなシルエットも着るくらい、少し気分転換もしたくなっている。脳に刺激が欲しいから。だから今回〈Convenience Wear〉では、少し違うフォルムを作ってみた。
キーカラーはナス紺。アイテムは半袖シャツ、パンツのセットアップ。そこに合わせられるように、Tシャツとルーズソックスも、ナス紺と白で作った。ダークネイビーの服ばかり着ている自分にとって、ちょっとだけ新鮮な色がナス紺。いつものネイビーに混ぜてもいいし、ナス紺だけで着てもいい。
ナス紺は、ネイビーのなかでは、赤みが強くて、紫に近い色。そもそも紫は、冠位十二階においては最も高貴な色とされ、古代ローマ帝国においても皇帝や権力のある者だけが着ていた色であり、古代エジプトではクレオパトラが愛した色。そう聞くと、なんだかすごい。コンビニというデイリーな場所だからあえて、そんな高貴な色にほど近い、ナス紺をキーカラーにした。
伝えておきたいのは、この服は誰でも簡単に着こなせるものではないということ。コンビニで買えるからと言って、誰でもイージーに着こなせるというものではない。フォルム、色のトーンを自分に合うようにアジャストする必要があると思う。それがうまくいくと、きっと楽しくなる。真面目な話をすると、それは僕がかつて『POPEYE』において、誰でも簡単に着られるように考えて作ったネイビーに白という組み合わせだったり、大きいTシャツに大きいシルエットのパンツというスタイリングが定着したからこそ、ちょっとでもアップデートする必要があると思ったから。かつて皆が雑誌をコンビニで買っていたように、コンビニはいつだって、新しいファッションを手に入れる場所なのだ。
パンツがすべてを決める。
〈Convenience Wear+A.H〉ルーズパンツ ¥3,990(ファミリーマート)
パンツはスタイリングにおいて最も重要な存在。ここがすべてのベースになる。僕の場合、シルエットはいつもならテーパードさせるのだが、今回はあえてワイドストレートにしてある。裾幅があることで、かなり大きく感じるだろうし、だいぶ好みが分かれることだろう。
ここで大事なのは、裾に付いたドローコード。これを駆使することでシルエットを調整できるようにしてあるのだ。適度に絞って、絞りすぎない具合で穿くことで、程よいテーパード具合を自分で作れる。そのうえで、裾をあえて外側に折り返せば、さらにテーパードが強くなる。内側に折り返せば、程よいテーパードになり、スエットパンツのようなスポーティーな雰囲気で穿くことができる。もちろん、そのまま絞らずに穿いてもいい。
裾を絞ることによって裾上げの手間を省けるという狙いもある。2サイズあるから、どちらを選ぶのかによっても変わってくる。自分なりに調整して、似合うバランスを探して欲しい。ある意味で、スタイリングの技術を試されるアイテムでもある。
でも、きっとこの方が多くの人に似合うと思う。そういう意味ではコンビニで販売するのに相応しいアイテムになっていると思う。服は似合うことが大事だ。トレンドなんてどうだっていいのだ。ちなみに、膝下にはロゴが入っている。これは昔、よく着ていた〈NIKE〉のジャージのパンツのこの位置に、スウォッシュが入っていたような記憶から。90年代のスポーツウェアのデザインは完成されているのだ。
シャツは着方がすべて。
〈Convenience Wear+A.H〉開襟半袖ビッグシャツ ¥3,990(ファミリーマート)
同様に、シャツもアレンジをして着ることが前提になってくる。そもそもシャツは普通に着たらつまらないアイテム。シャツのボタンを一番上だけ留めてみたり、全部開けて、フロントだけをタックインしたり、前身頃の片方だけをインしたり。もちろん、普通に裾を外に出して着てもいいけど、うまく着る技術のあるのがお洒落とされる人。今回のシャツはとくにうまく着ないと、パジャマや特攻服のように見えてしまいかねない。上下をセットアップで着て、オールインワンのように見せるとか、前回の記事のようにブラウンと混ぜて着る方が、簡単に洒落て見えるのかもしれない
半袖になっているのはオールシーズン着られるように。この下にロンTや薄手のセーターを着てもいいだろう。おすすめは〈HERMES〉か〈Loro Piana〉のハイゲージのタートルネックセーター。似たようなものは〈UNIQLO〉や〈MUJI〉にもあるだろうけど、圧倒的に糸のクオリティがいいし、それは見てすぐにわかるほど。数年後にボロくなって捨てるのも都会的だけど、ずっと着られるクオリティを知ることを勧めたくなるのは、僕がファッション業界の人間だからだろう。でもクオリティの高い服は、その人の品格を確実に上げる。
Tシャツはゆったりと。
〈Convenience Wear+A.H〉ビッグTシャツ ¥1,998(ファミリーマート)
A.Hはブランドではなく、ただの記号。僕のイニシャルでしかない。だからトップスには胸の下にロゴが入っている。これはクラシックなシャツの名入れの際に、ここに刺繍を施すのがスタンダードであることから。クラシックなメンズウェアに興味がない人には不思議な場所に思えるかもしれないが、遠い昔から、この位置こそがイニシャルを入れる場所。これはビッグTシャツ。シルエットが大きいだけで、フロントだけタックインしたり、外に出したり、着こなしの幅が広がる。つまり、似合う着方を探せる良さがある。タイトフィットな服ではこうはいかない。似合えばいいが、似合わなかった場合にどうにもならないからだ。そんな万人受けを目指せるのも、ゆったりしたフォルムのいいところ。コンビニで売るのに相応しいのだ。
白ソールはセクシーだ。
〈Last Resort AB〉「VM001-Mid A.H」シューズ ¥17,600(Sampledelica)
これはファミマとは一切関係ないアイテム。スウェーデンのシューズブランド〈Last Resort AB〉と僕がコラボレーションして作ったシューズ。インラインに見えるくらい、普通なデザインが気に入っている。そう、僕はインラインの力の抜けた感じが好きなのだ。すごい物を身につけるより、なんでもないけど似合っているものを身につけていたい。
僕が希望したのはネイビーのアッパーに白いソール。ミッドカットからシューレースホールの1ホール分をカットして低くして、シュータンに少しだけクッションを入れたもの。そこに、A.Hロゴを入れ込んでもらったロゴをタグとヒールパッチに付けてもらった。出来上がってみたものの、あまりの地味さに白いソールはやめた方がいいのかなぁ、と僕が悩んでいたときにSamiさんは言った。
「このままがいいよ。白いソールは、セクシーだ」
その言葉で、揺れ動いていた心が固まった。
ソックスはシルバーアクセサリーのようなもの。
〈Convenience Wear+A.H〉ルーズソックス ¥798(ファミリーマート)
このソックスは、実は落合くんからの提案によって生まれたもの。僕が靴下にこだわりがあることを知ったうえで、このルーズソックスを提案してくれた。ボトムスが人物のバランスの核となる。だからパンツの裾からシューズへと繋がる接続部分はその一部であるから重要だ。そしてその間に見え隠れするソックスの色と質感は、全体のアクセントになる。いわば、着飾るためのアクセサリーだ。ふと足を組んだとき、座敷に上がったときでさえ、コーディネートのバランスを台無しにしたくない。それは下着にも言えること。ふとしたときに見える部分にこそ、その人の本質が見えてしまう気がするからだ。ちなみにソックスの左足にはA、右足にはHと書いてある。でもうっかり撮影の時に左足にHを履かせてしまっていた。まぁそんなこともある。
Convenience Wear+A.H
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