AKIO HASEGAWA. HOUYHNHNM

2025.12.11 Up
Style of Authentic

ノルウェーの普通。

Case 156
メイドインノルウェー、オレアナのニット。
自国のブランドが、自国でものづくりをしているのは当たり前のことではない。それは日本でもノルウェーでも同じだ。頑なにノルウェー生産を続ける骨太なニットメーカーに出会った。

文:小牟田亮

〈L.L.Bean〉のノルウェージャンセーターを知っているだろうか? ブランドのアイコニックなアイテムとして、いまだにノルウェー産を貫いている。このアイテムの影響でノルウェーといえばセーターというイメージがある。実際、現地のお土産屋さんに行っても多くのノルウェージャンセーターが並んでいた。

今回訪れたのは、ノルウェー第二の港湾都市、ベルゲンに本拠地を構えるニットブランド〈OLEANA(オレアナ)〉。ニット作りの工程の全てを自社で完結できるという、家族経営のメーカーだ。

創業は1992年とのことで、大量に保管されていたアーカイブのなかで目を引いたのは、クラシックな柄、編みの初期モデルのセーター。レディース向けに開発されたものが多いが、男性でも着られるものはありそうだ。

セーターだけではなくブランケットも製造している。バリエーション豊富に色、柄が揃っており、ギフトなんかにも最適だ。

2010年にリリースされたブランドの足跡、物語を記した書籍。

ノルウェーの民俗衣装や伝統模様からインスパイアされたカラーリングや花模様。

2代目オーナーのゲルダさんにお話しを伺うことができた。

「ようこそオレアナに。工場は自由に見ていってくださいね。ここは1800年代にできた工場で、ベルゲンのなかでも古い部類の建物になると思います。私たちはノルウェーのトラディショナルなカルチャーと、コンテンポラリーなセンスを融合してニットを作っています。さっき見ていただいていたようなアーカイブも、最近はとくに若い方から興味を持ってもらっていますね。いまは不安定な世の中だから、自分のルーツを見直すことができるようなモデルに注目が集まっているんだと思います」

ノルウェー産と聞いて、職人がひとつひとつ編んでいるというイメージを勝手に抱いていたけれど、実際は最先端の「島精機製作所」の編機が何台も導入されているハイテクな現場であった。

「一着を丸ごと立体的に編み上げることができるホールガーメント編機は早くから取り入れていますね。ノルウェーは人件費が高いので、こうしたマシンをうまく使って、コストを下げる工夫をしているんです。これまでに作った柄はアーカイブされていて、それに今のインスピレーションを加えて新しい柄を開発しています。柄を細かく編み込んでいくのはすごく難しいので、スタッフは厳しいトレーニングを積む必要があります」

それにしても整然としていて、美しい生産現場だ。

「世界の70%のアパレル企業は、環境に良くないことをしていると思うんですが、〈OLEANA〉では100%ナチュラルな原料を使っていますし何も隠すことはありません。むしろみなさんに見てほしいので、工場を解放してツアーをしているんです。サスティナビリティの話にはみんな飽き飽きしていると思うんですが、私たちはそういうことを当たり前のようにやっています。それともうひとつ大事にしているのは、昔ながらのお客さまですね。新しい顧客を獲得することももちろん必要ですが、私たちは家族経営のメーカーですし、小さな規模のオーダーでも受け入れられます。そうしたことをおろそかにしたくないのです」

工場の壁にプリントされていたブランドからのメッセージ。「ファッションは、過去から受け継がれてきた文化的な遺産と、いまこの瞬間の創造性が、同時に映し出される数少ない領域のひとつだ」

労働力の安い国に生産現場を移すのではなく、人件費が高くついたとしても、高度な技術力を有した国内の生産現場を守り続けている、昔気質な〈OLEANA〉。経済合理性を考えたらなかなかできることではないけれど、それが価値基準の真ん中にあるブランドなのだ。

工場の裏には雄大に広がるフィヨルドが。以前はここの水力を使って機械を動かし、できたものはこの海を通って輸送をしていたそう。

INFORMATION

OLEANA https://oleana.no/

STAFF

Direction _Akio Hasegawa
Photograph_Seishi Shirakawa
Coordination_Rico Iriyama
Production & Text_Ryo Komuta

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