文:小牟田亮
オスロの街を歩いてみると、日本の都心部と比べるとずいぶんと人が少なくて、道路が広く、そして空が高いことに気づく。加えて、人々があくせく働いている感じがなく、スローで穏やかなムードに包まれている。東京でいうと右半分の雰囲気に近い気がした。先日紹介した「FUGLEN COFFEE ROASTERS」があるエリアは、さしずめ蔵前といったところだろうか。
その「FUGLEN COFFEE ROASTERS」があるエリアの一角に「Natural State」というエージェンシーがある。場所と人を繋いで、サステナブルな価値を生み出すといった戦略コンサルタント的な動きをしている会社だ。
この「Natural State」を立ち上げたのは、「FUGLEN」のファウンダーであるアイナールさんだ。オスロ旧市街地区での場づくりや、空き建物の活用、歴史的建造物の保存と再利用などの事業を手がけているという。
バリスタであったアイナールさんがコーヒーショップをつくったあとに力を入れたのが、持続可能な社会の実現、そして循環型経済の拡張だったというのは、なんだかとても北欧らしい気がする。
会社のパーパスはというと、経済成長よりも幸福・平等・生活の質、いわゆるクオリティ・オブ・ライフを重視しているそう。働くことの意味や意義と、経済的成長との葛藤はいつだってあるけれど、その両立を事業の中心に据え、命題としている集団というわけだ。
〈HELLY HANSEN〉オーシャンフレイジャケット ¥40,700(HELLY HANSEN)
この「Natural State」に勤めているグラフィックデザイナー兼クリエイティブプロデューサーのセヴリン・ドーケールさんも、〈HELLY HANSEN〉を着ている。ブランドを代表するアウターであるオーシャンフレイジャケットはカラバリも豊富で、セヴリンさんはイエローをチョイス。
高い防水性、透湿性を誇り、街着のアウターとしても高い効力を発揮するけれど、もともとは海上で着るためのセーリングジャケット。しかも気軽に楽しむようなセーリングから、本格的なレースにまで使えるハイクオリティな一着なのだ。
また、海上での視認性の高さを確保するために、フードはポップな配色に。イエローのボディには、フラッシュオレンジのフードが採用されている。
フロントフラップは、上部が分離するデザインとなっており、襟部分の前立てが高い。首まわりのフィットを調節することで、風を遮り、保温性を高め、水もシャットアウトしてくれる。袖口もダブルカフ仕様で、気密性を持たせて、水の浸入を軽減する。
この建物は、古い木材倉庫をオフィス用にリノベーションしており、フグレンのスペースも存在する。
数十社がシェアしており、コワーキングスペースといった装い。
日本に大きな影響を受けたアイナールさんだけに、北欧の特徴である環境への確かな目配せと、日本的な自然志向の要素を掛け合わせたビジョンが「Natural State」の特徴だそう。経済合理性だけを追求するのではなく、こうしたミッションを掲げて一生働き続けられたらどんなにいいだろうか。