AKIO HASEGAWA. HOUYHNHNM

2024.6.20 Up
Style of Authentic

普通の服、
普通のスタイル。

Case 124
加藤農園と初夏の野菜。
「鎌倉野菜の定義ってあるんですか?」
「鎌倉の市場で売っているもの、それが鎌倉野菜なんだと思います」

和野菜から洋野菜、香草や生花まで、市場に訪れるお客さんと農家さんの信頼関係によって育まれる鎌倉野菜。その生産の現場を加藤さんに案内していただいた。

PROFILE

加藤忠幸

鎌倉野菜を生産する加藤農園の4代目。有機農業に軸足を置き、自家栽培された野菜や生花を、鎌倉市農協連即売所(通称レンバイ)で販売中。今年4月には、そのレンバイにて自身のショップ「LANE BY」をオープン。

長谷川昭雄

ファッションディレクター、スタイリスト。英国の雑誌『MONOCLE』の創刊より制作に参画、ファッションページの基礎を構築。2015年には同誌のファッションディレクターに就任。2012年から2018年秋まで雑誌『POPEYE』のファッションディレクターを務めた。2023年より〈CAHLUMN〉、「andreM hoffwann」をスタート。

〈ENERGY STUDIO〉T SHIRT「A SUMMER’S TALE TEE」¥6,600(ENERGY STUDIO),〈CAHLUMN〉11.8 OZ COTTON GYM PANT「HEAVY WEIGHT JERSEY GYM PANT」¥8,998, 3x1PACK SOCKS ¥2,640(@cahlumn_official),〈RED WING〉BOOTS「6” CLASSIC MOC」¥45,870(RED WING JAPAN),THERMAL T-SHIRT AKIO’S OWN

フイナム:まずはご自宅の近くにある「バンバ山」と呼ばれる畑を案内してもらいました。ここではスイスチャードやアイスプラントなどの洋野菜、それにバジルやパセリといった香草が植えられていましたね。

長谷川:バジルの香りが良かったです。あとミント?が自生してましたね。

加藤:はい、スペアミント。害虫や環境にかなり強く、自生してます。

フイナム:これらの洋野菜や香草は、鎌倉の農家さんの間では比較的ポピュラーなんですか?

加藤:鎌倉の市場は、生産者が直接お客様に販売している市場なので、近郊の料理人さんやご家庭の注文に合わせる感じで、野菜の種類が増えて、ポピュラーになったと言えます。

フイナム:生産者であり販売者でもある。だからお客さんの細かな注文にも対応できる。そこが鎌倉野菜の面白いところですよね。

加藤:そうなんですよ。お客様とのコミュニケーション、接客から今のスタイルになったと思います。

長谷川:最高ですね。加藤さんぽいです。

これがスイスチャード。赤、オレンジ、黄色といったカラフルな茎があり、加藤農園では色味が異なる葉を束ねて販売する。ビーツやほうれん草に似た品種で、クセがなく青臭さも控えめ。なので、料理に使いやすい。

お馴染みのパセリ。洋食の付け合わせというイメージだが、メインとしてのポテンシャルも秘めていて、加藤さんによると、天ぷらもなかなかイケるらしい。

初めて見たアイスプラント。南アフリカ原産で、古くからフランス料理の食材として親しまれているという。プチプチとした食感で、ほのかな塩味があり、スイカの青みに似た味わい。

長谷川:いつも野菜の調理法を教えてくれるんですが、頭が悪くて覚えられなくて。改めて一つずつ教えていただいてもいいでしょうか?

加藤:スイスチャードは鮮やかな色を楽しむので、基本は生。セロリのように見えますが、ほうれん草の根のような少し土っぽい味がします。なので、パスタと一緒にサッと炒めたり、茎と葉を細かく刻んでオムレツのなかに入れたり、マリネにしたり、と色々です。アイスプラントは、プチプチな食感と微妙に塩味を感じる野菜で、これまた生、サラダがいい。案外、何もつけなくていいですが、胡麻ドレッシングが自分は好きです。

長谷川:生でいけるのか、そうじゃないのかは、どうやってわかるんですか?

加藤:作るときに最低限のコトを調べる感じです。あとは、種屋さんに新しい野菜の種をお願いするときに聞いたり。

長谷川:種屋さんっているんですね?

加藤:種屋さん、と勝手に呼んでいるんですが、連絡したら葉山の方から来てくれるんです。種だけじゃなくて、野菜の苗もお願いしたりもして。たまにしか話さないんですが、その人もサーファーなんですよ。

フイナム:へー。では種を買うときはその葉山の方から、ということですね。

加藤:あとは農協です。こんな感じの冊子を貰って(と、『タキイ最前線』や『園芸ニュース』などのパンフレットを取り出す)、一気に予約する。

長谷川:え! 展示会でオーダーするかのように、種や苗をオーダーするんですね。これは慣れてないと大変ですね。

加藤:このあたりは親父が慣れているので、ウチらは「これにしよう」とか「これはやめよう」という流れで。

フイナム:自前の畑で採れた種と、農協や葉山のサーファーの方から買った種とでは、出来が違うんですか?

加藤:どうですかね。(違いは)わかりづらいかもです。ただ収穫しきれなくて(作物が)花になって、自然と種が溢れて、根菜類の畑にルッコラやサラダカラシナとができてるときがあって。そいつらは、やたらと威勢がいいなぁって感じたりすることはあります。

フイナム:次にうかがったのが、田谷の玉葱畑です。梅雨前に収穫を、ということで、少しだけお手伝いをさせてもらいました。

加藤:ありがとうございます。おかげで先週ですべて収穫できました。

長谷川:横に植えていたのも玉葱ですよね。この畑は玉葱に適してるんですか?

加藤:この畑は昔、田んぼで、田んぼの上に土を入れた畑になるんです。なので、どんな野菜を作るときも、田谷の畑は始めに肥料を与えてから作ります。ここ数年は田谷の畑で玉葱を作っているんですが、なかなかの出来です。

長谷川:最初に肥料を撒くのは、田谷に限ったことなんですか?

加藤:いえ、野菜を作るときは「元肥」といって、始めに肥料を撒いて土の栄養、状態を整えます。野菜の収穫が終わった畑は栄養がなくなっているので、元肥をやりますね。

長谷川:肥料なしで、土だけの栄養分だけでは美味しい野菜は育たないものなんですか?

加藤:育たなくはないと思うのですが、栄養があった方が大きくしっかりとした野菜ができます。美味しさはどうですかね。好みかもですが、新鮮なモノが美味しかったり、収穫して少し寝かせたモノが美味しく感じたりで、色々ですよね。

フイナム:色々な野菜作りの方法があるなかで、加藤さんの農園では昔ながらのシンプルな農業を実践している、ということでしょうか?

加藤:ウチは色々です。ナスやトマト、きゅうりなどの野菜は、苗のときに虫や病気で全滅したら、それこそやっていけない。なので、低農薬や今のテクノロジーに頼ってしまうこともあります。そうでないモノは、安心して食べられるシンプルな作り方を心掛けています。鎌倉の市場は、生産者がお客様に直接販売するので、やはり何がいいかわかってないと、続けられないですよね。

長谷川:いい加減な商品は売ってないってことですよね。

加藤:食べ物ですから、そこは、最近は色々と厳しいです。野菜作りだけでなくて、漬物やカット野菜、竹の子の水煮も、保健所の承認された製造所で、講習を受けた食品衛生責任者によって……と、キチッとしないと売ってはいけない流れになってますよね。

長谷川:皆、いろいろ言うから怖いですね。

加藤:そうですね。SNSの時代になって、発言の大小、スピードがだいぶ変わったので、怖さ倍増です。

収穫した玉葱。これから乾燥をさせて出荷となる。一方で乾燥をさせていない早採りの玉葱が「新玉葱」になるのだとか(恥ずかしながら知らなかった)。寝かせることで身が引き締まり、辛味が強くなるのだとか。

フイナム:最後は小雀の畑。ここでは、そら豆やいんげん豆を育てていらっしゃいました。そら豆は母の日前後が収穫時期と仰ってましたね。いんげん豆の収穫はいつ頃なんですか?

加藤:こっちも例年だと母の日前後なんですが、今年は早くて、採り始めはGWでした。

フイナム:天候はもちろん、植えるポジションによる日照時間の違いも影響してきそうですね。

加藤:そうですね。

長谷川:加藤さんのように野菜の種類に詳しくなると、他の植物にも興味を持ったりするんですか?

加藤:どうですかね。しいて言えば、食べられる植物やキノコは気になります。時間があったらフラッと山に行って、キノコ採りしたいかもです。

長谷川:キノコも見てわかるんですか?

加藤:昔、椎茸は作っていたんですが……。キノコ、全くわからないので知りたいです。今はケータイで調べられる時代だから、行きたいなぁと(笑)。

長谷川:怖くてできないです(笑)。

加藤:いや、今度キノコ採り行きましょうよ。焼いて、ワインのお供に。

長谷川:いいですね。和知さんに料理してもらいましょう。

加藤:いいですね。

〈RED WING〉BOOTS「6” CLASSIC MOC」¥45,870(RED WING JAPAN)

いんげん豆は、ツルありとツルなしの両方を育てていて、これはツルなし。太いサヤは肉厚で、歯ごたえもいい。ただソテーしただけで立派な一品料理に。

フイナム:それにしても、色んな場所に畑が点在しているんですね。あれだけ畑があって、それぞれに何を植えているか、そしてどんな状態か、きっちり頭に入っているのはスゴいなあと思いました。

長谷川:加藤さんは、前に仰ってたと思うんですが、市場中心の生活を送ってるんですよね。そこと同時に「BEAMS」があって。そうなると、常に野菜の成長状況と次回作るアイテムのことが同時進行で気になっている日々なんですかね。

加藤:市場中心の生活は間違いないです。市場のスケジュールは、何年先も決まっていて、絶対に変わらない。畑は点々と色々なところにあり、どこで何を、どのタイミングで作るか、同時多発で進行してる感じです。が、長谷川さんも見てると、そんな感じですよね。

長谷川:僕は似たり寄ったりなんで。野菜と服って最高ですね。

加藤:最高です。

INFORMATION

レッドウイング・ジャパン 03-5791-3280 redwingheritage.jp
CAHLUMN www.daytona-park.com/cahlumn/

STAFF

Direction & Styling_Akio Hasegawa
Photograph_Seishi Shirakawa
Hair & Makeup_Kenichi Yaguchi
Edit & Text_Shigeru Nakagawa
Production_Ryo Komuta

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