AKIO HASEGAWA. HOUYHNHNM

2024.6.18 Up
Style of Authentic

普通の服、
普通のスタイル。

Case 123
レンバイにできたLANE BYのこと。
ある日曜。朝早く都内を出て、いざ鎌倉へ。
加藤農園で玉葱の収穫をお手伝いした後、
みんなで加藤さんが開いた店にお邪魔した。

about LANE BY

鎌倉農協連即売所にできた小さなお店。店主は加藤忠幸さん。営業日はインスタグラムをチェック。

PROFILE

加藤忠幸

鎌倉野菜を生産する加藤農園の4代目。有機農業に軸足を置き、自家栽培された野菜や生花を、鎌倉市農協連即売所(通称レンバイ)で販売中。今年4月には、そのレンバイにて自身のショップ「LANE BY」をオープン。

長谷川昭雄

ファッションディレクター、スタイリスト。英国の雑誌『MONOCLE』の創刊より制作に参画、ファッションページの基礎を構築。2015年には同誌のファッションディレクターに就任。2012年から2018年秋まで雑誌『POPEYE』のファッションディレクターを務めた。2023年より〈CAHLUMN〉、「andreM hoffwann」をスタート。

〈CAHLUMN〉LINEN BASEBALL SHIRT ¥14,960,LINEN GYM PANT ¥14,960(CAHLUMN),〈BROCHURE〉T-SHIRT「BROLEY LOGO TEE」 ¥7,700(LANE BY),〈KEEN〉SHOES「UNEEK II OT」¥13,200 (KEEN JAPAN)

フイナム:4月末、鎌倉の農協連即売所(レンバイ)に加藤さんのお店「LANE BY」がオープンしました。

長谷川:おめでとうございます。お店は、加藤農園が出店する4日に一度のタイミングで開けているんですか?

加藤:ありがとうございます。基本は4日に一度、必ずこの市場(レンバイ)に野菜を売りに来ているので、野菜売りが落ち着いたら、お店を開けるスタンスです。ですが、市場後にビームスの仕事やミーティング、商談などが入っていたりして、お店を開けられないときもあったりしますが。

長谷川:今日も「(レンバイ出店前の)前支度」って仰ってましたね。忙しいなか、お店を作りたいと思ったのは、何でだったんですか?

加藤:もの作りを続けたり、ブランドを長くやっていると、現場から離れてしまったりするけど、自分は現場にいたいという気持ちがあって。あと、自分はもの作りも好きですが、それ以上に人が好きというか。野菜を売ってるときも、ちょっとした会話が気持ちいいんですよね。

フイナム:レンバイに出店、というのがまた加藤さんらしいですね。

加藤:お店をやるんだったら、この市場(レンバイ)で、というのはずっと思ってました。この場所じゃないと、やってなかったですね。

フイナム:もともとこの場所は洋服屋さんだったみたいですね。

加藤:自分がガキの頃は生地屋さんで、その生地屋さんが移店してからは「nui nui 1st」という洋服屋さんだったんですよ。

長谷川:ヌイヌイファースト。いい名前ですね。

加藤:ウチのお母さんは、よく赤いパンツを作ってもらってました。

長谷川:「『赤い服の人』で有名だ」って言ってましたもんね。

加藤:市場(レンバイ)では「赤い服の人」と言われるぐらい、いつも赤い服を着てます(笑)。

〈ANTI HERO〉のアートディレクター、トッド・フランシスによるピジョンのラフスケッチやデッキ、写真家のグラント・ブリテンのあまりにも有名な作品『Push』 のアザーカットなど、らしさが詰まったコレクション。以前お邪魔したご自宅には、この10倍ぐらい物量があった。なので、これはほんの一部。

フイナム:お店には加藤さんの私物がズラッと並べられていて、まるで友達の家に遊びに行ったような感覚になりました。

長谷川:加藤さんの集めてる置物やプロダクト、フィギュアなど、いろいろあると思うんですが、一つ一つに思い入れやストーリーがあって、いちいち面白いです。逆に何の思い出もないけど、見た目だけが好きなモノっていうのもあったりするんですか?

加藤:ありますよ。「蛇足の美学」と言ったりしてるんですけど、なに考えているんだろう?っていうワケわからないモノに吸い込まれるときがあります。よく分からないんですが、よく分からなくていいんだ、と自己解釈したりして。

フイナム:蛇足の美学、いい言葉ですね。お店には、蛇足の美学の精神に通づるアイテムがたくさんディプレイされていました。

加藤:ディスプレイって、売れるようにモノをよく見せようとするんだけど、そんなことよりも、まずは自分が好きなモノ、それこそ蛇足の美学だったり、を知ってもらうことが大事だと思います。といっても、モノ自慢ではなく「これってなに?」「コレコレ知ってる!」みたいな会話のきっかけになるといいなって。

凝りまくったボトルまで製造したものの、あえなく倒産してしまった「ギャラク シー・ホーム・シロップ」(ジュースの素)の容器や、映画や音楽ネタを得意とする〈SUPER 7〉謹製のDEVOのフィギュア、テレビ黄金期のラテ欄を網羅した書籍 『ザ・テレビ欄』など、脈略はないがどこか一本の線で繋がっている(気がする) 品々。加藤さんの解説がいちいち面白い。

長谷川:そういえば、近所には「ロングトラックフーズ」があったり、地元でも人気のラーメン屋さんや焼き鳥屋さん、あとファッション業界や編集業界の人たちからの信頼も厚いフォーのお店とかいろいろあって、ちょっとしたモールみたいな感じで楽しいですよね。普段から近所の店の方たちとは交流があったとは思うんですが、店ができたことでまた違うコミュニケーションが生まれそうですね。

加藤:「野菜のおじさん」と思われていたのが、お店を開いてからは「そんなことしてたんだ」という反応に変わりましたね。

長谷川:裏のかまぼこ屋さん?がTシャツを買ってくれた、と仰ってましたね。

加藤:市場(レンバイ)の方々が、普段このプライスのTシャツを購入することはないだろうなと思っていたので、手に取ってくれて、着てくれるのは本当に嬉しかったです。その後も「『Tシャツいいですね』って言われたよ」と伝えてくれたりして。

長谷川:加藤さんは本当に素直で優しいです。

〈BROCHURE〉の新作T。白じゃなくてグレー、それも霜降りじゃなくてアッシュというのが新鮮。この日、長谷川さんはこのアッシュグレーを、ヘアメイクの矢口さんはネイビーを購入していた。

フイナム:ちょうどTシャツの話になったので、こちらの話を。これは〈BROCHURE〉の新作Tシャツですね。

加藤:このTシャツは、自分や長谷川さんの仲間である し さんによるグラフィックです。デザインが洒落てるし、その洒落をかたちにできる職人でもあります。

フイナム:プリントがカッコいいですね。

加藤:ネイビーは、 し さんこだわりのシルバープリントで、アッシュグレーは「LANE BY BROCHURE」のキーカラーであるネイビーとブルーの中間色でプリントされています。

フイナム:アッシュグレーのボディが新鮮です。

加藤:新鮮ですよね。アッシュグレーといえば、NBAプレイヤーの顔とカラダのバランスが変わっているイラストのTシャツが思い出深いです。

長谷川:僕も着てました。というか集めてました。優勝したときに作られる、チーム全員のイラストが入ったやつとか、何枚も持ってました。たしかにほとんどがグレーだった気がします。

加藤:あのTシャツいいですよね。なんか『チケットぴあ』の表紙みたいなタッチで。中学時代、地味にバスケ部だったので、藤沢のスポーツ店によくTシャツとかバッシュを見に行ってました。

長谷川:いつも藤沢駅で降りるたびに思ってるんですけど、昔、シャキール・オニールの『SHAQ ATTAQ』っていうスニーカーが発売されたとき、たいしてカッコよくないんだけど、なんか欲しくなって探してたら、藤沢駅の「アム・スポーツ・フットウェア」に入るとかで、買いに行ったのを覚えてます。大学生の頃ですね。

加藤:藤沢に「関水スポーツ」という店があって、そこがすごくバッシュに強かったですね。あの頃は色々なところで、〈NIKE〉が買えた気がします。

長谷川:バッシュが流行ってたんですね。

加藤:バスケ部だったから、そう見えてしまったのかもですが。ちなみに自分は〈asics〉の「ジャパン」を履いてました(笑)。

すぐ近くの「ロングトラックフーズ」で買ったのは、鎌倉の夏の定番〈イグル氷菓〉のアイスキャンディー。昔ながらの製法にこだわり、鎌倉・腰越のラボで作られるアイスバーで、これは「果肉入りいちご」というフレイバー。そのネーミングの通り、素材本来の味がしっかりと、そしてストレートに楽しめる。

INFORMATION

LANE BY
住所:神奈川県鎌倉市小町1-13-10
※営業日や営業時間はインスタグラム(@lane_by_)を参照

STAFF

Direction & Styling_Akio Hasegawa
Photograph_Seishi Shirakawa
Hair Styling_Kenichi Yaguchi
Edit & Text_Shigeru Nakagawa
Production_Ryo Komuta

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