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2025.9.4 Up
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気になる服とか人とか。

Vol.68
PITTI IMMAGINE UOMO 108 PART3
今年の6月に、イタリアはフィレンツェで開催された世界最大級のメンズ展示会「PITTI IMMAGINE UOMO(以下ピッティ)」。メンズのコレクションスケジュールのなかで一番最初に開催されるピッティは、シーズンの方向性を把握するのに重要な展示会だと言われています。108回目の開催となった今回のピッティは果たして。
小笠原拓郎

1966年愛知県生まれ。1992年にファッション業界紙の繊研新聞社に入社。1995年から欧州メンズコレクション、2002年から欧州、NYウィメンズコレクションの取材を担当し、およそ30年間、世界中のファッションを取材、執筆している。

フイナム:ちなみに今回、気になったというか、目に留まったブランドはありますか?

小笠原:さっき言った〈Brunello Cucinelli〉に〈Belvest〉、あとは〈PHILEO〉っていう靴のブランドがなかなか面白かったですね。フランスのブランドなんですが。

長谷川:あぁ、見ました。UAの栗野(宏文)さんが関わられているブース「J-Quality」の近くにあったブランドですよね。

小笠原:そうそう。あとは〈EDWARD PARIS〉もよかったですね。これまではずっとウィメンズだけだったみたいで、メンズは今回で2シーズン目みたいでした。ファンシーツイードを使った半袖のシャツジャケットとハーフパンツのセットアップがあってすごくかわいかったです。おそらく〈CHANEL〉が使ってるような、「LINTON(※イングランドのツイードメーカー)」とかの工場の生地を使っていると思います。

長谷川:〈CHANEL〉が使ってるツイードというのは、特許とかそういうものでもないんですか?

小笠原:品番によっては、このシーズン、この素材は〈CHANEL〉しか使えないみたいな契約は多分していると思いますけど、そういうものでなければ全然使えると思います。

長谷川:そうなんですね。やっぱりいいですよね。

フイナム:我々も、いくつかいいなというブランドがありました。

長谷川:ギリシャのシューズメーカー、〈ANCIENT GREEK SANDALS〉は結構良かったですね。

長谷川:こういうエスパドリーユみたいな感じのものって、最近多い気がします。

フイナム:あとはリゾートっぽいテイストのブランドで、いいなというものがいくつかありました。

フイナム:デザイナーを取材するときって、クリエイションのことはもちろん、ビジネス的な部分にもフォーカスしたりするんですか?

小笠原:その両方について聞いたりはしますが、自分はまずクリエイティブだなと思う人を取材している感じです。クリエイティブなものを作ろうとしてる人を応援する感じというか。

長谷川:大事ですよね。売り上げが全てになってくると、クリエイティブに関しても何が正しいのかがわからなくなってくると思うんです。

小笠原:本当に優秀なデザイナーというのは、ビジネスもしっかりしていて、なおかつクリエイティビティがある人ですよね。川久保(玲)さんなんかは、その代表的な存在だと思うんですけど。

長谷川:やっぱりファッションブランドっていうのは、クリエイティブが先にあってほしいっていうのは、みんな思うことですよね。売り上げのことを考えて作られてるブランドだって聞くと、急に騙されたような気持ちになるじゃないですか。

小笠原:そうですよね。今、マーケティングが先にきているブランドは、山ほどありますからね。

フイナム:どうやって作るかより、どうやって売るかにフォーカスされがちなところはあるかもしれません。

小笠原:コロナ以降のメディアとブランドとの関係の変化も影響していますよね。これまでのメディアは広告をメインとしたビジュアルで顧客と繋がろうとしていたわけですけど、コロナ以降、ブランドはインフルエンサーとの繋がりを重視していくことになり、そうなるとユーザーにより響くアイコンは誰なんだ、という考え方になっていきます。

長谷川:そうですよね。

小笠原:ただ、そうすることで、やっぱりクリエイティビティというものとはちょっと離れてきますよね。

イタリア語で「古い橋」という意味のPonte Vecchio(ポンテ・ヴェッキオ)。フィレンツェの名所の一つ。

フイナム:いま、メンズのファッションシーンはパリがすごく盛り上がっているように見えるんですが、そのあたりはいかがですか?

小笠原:それはミラノが少しシュリンクしているというのもあるんじゃないですかね。だから、相対的に見てパリが盛り上がっているように見えるというか。

長谷川:ミラノはどうしてそうなっているんですか?

小笠原:やっぱり新しい人がなかなか出てきてないというのはあると思います。

フイナム:そういう意味でも、先ほどお話に上がった〈SETCHU〉はとても大事なブランドだと言えそうです。

長谷川:ピッティもなにか新しい切り口が見出せるといいですよね。日本のブランドで何かをやれるといいなとは思うんですが。あとは、なにかを販売できるような場所が作れたら面白いなと思いました。

フイナム:偶然なんですが、今、ピッティ協会の方から「この記事を楽しみにしています」という連絡がきました!(笑)

小笠原:え! そしたら変なこと言えないですね。大丈夫かな(笑)。

フイナム:大丈夫だと思います!

長谷川:今回は、お話を伺えて本当によかったです。ありがとうございました。

INFORMATION

PITTI IMMAGINE UOMO www.instagram.com/pittiuomo_official

STAFF

Comment_Takuro Ogasawara,Akio Hasegawa
Edit_Ryo Komuta

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