about THE ROW
2006年にアシュリー・オルセンとメアリー=ケイト・オルセンによって設立されたライフスタイルブランド。創業以来、最高級の素材と申し分のないディティール、正確無比なテーラリングを追求し続けている。
フイナム:今回は〈THE ROW〉です。最近なんだか話題に上がることが多い気がします。今回は、ウィメンズのファッションウィーク中にブランドの方にお話を伺うお時間をいただきました。ありがたい限りです。。そもそも〈THE ROW〉が立ち上がったのは2006年で、意外と歴史は古いんです。
長谷川:メンズはもっと後からスタートしたって言ってたよね。
フイナム:ファーストコレクションは2018AWで、ルックとして存在する一番古いコレクションは2019AWシーズンとのことでした。でも、その前に2016年くらいからTシャツ、セーター、シャツだけとか、本当に限られたアイテムをLAとかNYの旗艦店でひっそり販売していたと。なんかその奥ゆかしさがまたいいですよね。
フイナム:今回は京都で最も古い禅寺、建仁寺で撮影をしましたが、最初は例えばホテルとか、眺めがいいところを探してましたよね。
長谷川:そうだね。最初はそう思ってたんだけど、変に豪華さとかその立地ばっかりに目がいく感じもちょっと違うかなって思い始めて。伝わるものが変わってきちゃうというか。
フイナム:〈THE ROW〉の方もすごく喜んでましたよね。そもそもで、〈THE ROW〉っていわゆるファッションブランドと違って、毎シーズンテーマがあるわけじゃないんですよね。「時代性を超えた美にインスピレーションを受けている」と言ってましたけど、そういう意味では、歴史と伝統があるお寺で撮るっていうのは、同じような文脈にあることなのかもしれません。
フイナム:そもそも〈THE ROW〉ってどんなイメージですか?
長谷川:普通だよね、すごく。最近はSNSとかで映えるような服だったり写真っていうのが多いと思うんだけど、そういうのに疲れちゃってる人もいると思うんだよね。
フイナム:そうかもしれないですね。
長谷川:そういうなかでこういう普遍的な感じで、デザインというよりもっと質の良さみたいなところで着られる服があるっていうのは、すごく安心できるというか。そういうものを望んでる人っていうのはたくさんいるだろうなって思う。
フイナム:「AH.H」のコンセプトにも近しいところがありますよね。
長谷川:意外とありそうでないんだよね、こういうのって。シンプルなものはたくさんあるんだけど、ただシンプルならいいかっていうと、そういうわけでもないし。
フイナム:そうですね。ブランドの方が「コンサバっていうわけではないんです」って言ってましたけど、なんならコンサバっていう言葉からはだいぶ遠いですよね、〈THE ROW〉って。
フイナム:それにしても〈THE ROW〉のアイテムは、本当に素材がいいですよね。
長谷川:そうだね。上品なんだけど、どこか色気があるよね。
フイナム:クリエイションのすべては素材から始まるという話は印象的でした。デザインではなく、とにかく素材から、というマテリアルファーストな考え方。使う素材がどのようにしたら一番美しく見えるか、という作り方は、なんだか贅沢な感じがしますね。
長谷川:随分前から、生地作りだったり素材選びをしているって言ってたもんね。
フイナム:その次にフォルムだって言ってましたが、今回スタイリングに使ったアイテムはちょっとゆったりめですよね。
長谷川:そうかもね。オーバーサイズじゃないんだろうけど、大きめ。ブルーのシャツなんかは、カマ底もかなり深くてアームも太めだった。しかもなんかすごく立体的な作りになってるんだよね。
フイナム:全然だらしなく見えないですよね。
長谷川:うん。生地もなんか独特な肌触りで、張りがあるんだけど、柔らかくて。
フイナム:今回着てもらってるのは、ものにもよるんですが、Mサイズが多いみたいです。そう考えると大きいですね。ユーゴは190センチですし。ちなみに〈THE ROW〉のアイテムはだいたいSから展開があるとのことです。
長谷川:素材ってさ、毎シーズン全部新しいものを作るわけではないと思うし、そもそもいいものを作ったら次に新しいものを作る理由もないよね。
フイナム:たしかに。いいものは継続してほしいですよね。
長谷川:デニムもいい感じだったね。
フイナム:生地は日本製で、生産はイタリアとのことでした。〈THE ROW〉はファクトリーはイタリアが多いようですが、やっぱりデニムとなると日本製なんですね。
フイナム:今回の写真、なんか艶っぽい感じが出てますよね。これも生地だったりフォルムがいいからなんでしょうね。
長谷川:そうだね。生地の良さが、美しくしなやかなドレープを生んでいるんだと思う。(モデルの)ユーゴがすごくいいところの子に見えるもんね(笑)。
フイナム:たしかに(笑)。
フイナム:この秋からメンズにも「Essentials」というベーシックなコレクションが登場しています。
長谷川:もともとベーシックだけど、さらに普通ってことなのかな。
フイナム:ワードローブの基礎になるような、その名の通りエッセンシャルなシリーズとのことです。それでいうと、インスタを見ててびっくりしたんですけど、このルックに衝撃を受けたんですよね。
長谷川:すごい普通だね。
フイナム:ですよね。でもこれ「Essentials」ではなく24Sシーズンのコレクションで、しかもファーストルックらしいんですよ。ファーストルックって当然そのシーズンを色濃く表すものだと思うんですけど、強いメッセージ性を感じます。さっきコンサバって言葉が出ましたけど、むしろ過激ですよね。
長谷川:そうだね。コンサバになっちゃうと話が違うっていうのもあるよね。そうなりたいわけじゃないっていうか。
フイナム:6月に販売開始したこの「Essentials」、めちゃくちゃ好評だって言ってました。定番アイテムだから補充はされるらしいですが、ブランド的にも驚きだったと。けど、こういうめちゃくちゃベーシックなアイテムでも、ちゃんと反応があるっていい話だなって思いました。
長谷川:そうだね。本当に服が好きな人が、欲しい服なんだろうね。ただベーシックなだけだと、案外面白みがなかったりするし、クオリティがいいだけだと、なんかちょっと物足りない感じもあるよね。そのバランスが大事というか。
長谷川:〈THE ROW〉のシャツって、第二ボタンがすごく上の方に付いてるんだよね。
フイナム:本当ですね。気づかなかった。
長谷川:この感じだと、開けたときにも変にいやらしくならないと思う。閉めて着てもいいし。
フイナム:当たり前かもしれませんが、すごく計算されてますね。
長谷川:あと、前立てがないのもいいなって思った。
フイナム:上品なんだけど、どこかとっつきやすい感じがします。イタリア製だそうです。
フイナム:このジャケットもイタリアで作られています。ちなみにブランド名の〈THE ROW〉はサヴィルロウから取っているぐらいなので、テーラリングにはものすごいこだわりを持っているブランドです。
長谷川:なんか袖の付き方が独特だなって思った。
フイナム:確かに。独特の落ち感がありますよね。ブランドの方曰く「イタリア製なんですが、クラシコ的な感じではなく、かといってブリティッシュど真ん中でもなく、ニューヨーク的なところでもない、その全部がハイブリッドされているように感じます」とのことでした。
長谷川:このジャケットは、本切羽ではないんだよね。
フイナム:ですね。ものによって違うんでしょうね。その柔軟さというかファジーなところもいいなって思います。テーラリングガチガチじゃない感じが。いい意味でユニークですよね。
長谷川:スニーカーは、表がキャンバスで裏がレザーなんだよね。
フイナム:普通、逆ですよね(笑)。あとスニーカーでどこにもロゴがないのも珍しいです。
長谷川:たしかに。あとさ、こういう感じの靴って、LAかどっかにあるんだよね。多分、あえてそれをモチーフにしてるんだと思うけど、そこがいいなと思って。ラグジュアリーなものをあえてそういうデイリーなものにするところに、すごくブランドらしさを感じるというか。チャーミングさがあるなって。
フイナム:「〈THE ROW〉っていろんなテイストのファッションを経験したひとが最後に辿り着く服ですよね」ってお客さんによく言われるって言ってましたけど、なんか納得できますよね。
長谷川:そうだね。こういうブランドがないと、年齢を重ねていくとファッションから離れていっちゃうひとも結構いると思うんだよね。流行りの服なんて着たくないし、何を着ればいいのかわからないとかいろんなことを考え始めると、ファッションはもういいかなっていう気持ちになっていくっていうのはなんとなくわかるんだ。
フイナム:寂しいけど、そういうのってありますよね。どうしても優先順位が下がっていってしまうというか。
長谷川:40代ぐらいになると、今まで色々な服を着てきていると思うんだけど、もっと品があって質の高いものがないのかなって思ったときに、やっぱり〈THE ROW〉みたいな服が着たいってなるんだと思う。
フイナム:そうですね。こういうブランドが大きなグループに所属せずに、インディペンデントな立ち位置でい続けているっていうのは、ファッション業界にとってもすごくいいことのような気がします。一回行ったんですけど、パリのショールームにはとんでもない数のサンプルが並んでいるので、いつかそれも見にいきたいですね。
長谷川:そうだね。見てみたい。
INFORMATION
THE ROW JAPAN 03-4400-2656
STAFF
Direction&Styling_Akio Hasegawa
Photo_Seishi Shirakawa
Hair_Kenichi Yaguchi
Coordination_Tetsuya Hayashi
Cooperation_Kenninji Temple
Edit_Ryo Komuta、Shun Koda