AKIO HASEGAWA. HOUYHNHNM

2020.4.16 Up
Focus on

気になる服とか人とか。

Vol.20
Keep distance Keep positive mind
今回は、世界中で猛威を振るう新型コロナウィルスに対して、少しでもなにかできないかということで、とあるプロジェクトを発足。なお、今回の対談は対面ではなくLINEでのトークルーム上にて行ったものです。便利な世の中になりました。

about Keep distance
Keep positive mind

新型コロナウィルスの感染拡大防止のために、断続的なソーシャル・ディスタンシング(対人距離の確保)を啓蒙していくプロジェクト。

PROFILE

キシタトモミ

ショップのバイヤー、スーパーバイザーなどを経て2001年に独立。心に感じるプロダクトを作ろうと〈is-ness〉を立ち上げる。さまざまな人を巻き込み音楽、グラフィックデザインなども行う。

長谷川昭雄

ファッションディレクター、スタイリスト。英国の雑誌『モノクル(MONOCLE)』では創刊よりファッションページの基礎を構築。2015年にはファッションディレクターに。2012年より2018年秋まで『ポパイ』のファッションディレクターを務めた。

フイナム:長谷川さん、キシタさん、今日はよろしくお願いします。

キシタ:お願いします。これってLINEでインタビューっていうことですよね?

フイナム:インタビューというより、お二人がゆるっと話しているのをそのまま収録するという感じです。

長谷川:はい、よろしくお願いします。

フイナム:キシタさんのブランド〈イズネス〉で、「AH.H」のTシャツを何度か作ってもらっているんですよね。1回目はフイナムのフェス「HNF」で裏返したボディに「AH.H」のロゴをプリントしたもの。2回目はファンクラブイベントのとき。3回目は、幻に終わった「ほぼ日」のイベント用記念Tシャツ。4回目が今回となります。

長谷川:はい。今日はそのTシャツの話をしましょう。

キシタ:わかりました。

長谷川:まぁその前に。。キシタさんは最近何してるんですか?

キシタ:僕は事務所に引きこもってひたすら仕事をしています。

長谷川:飲みにも行ってないんですか?

キシタ:全く行ってないです。早く行きたいですね。。

フイナム:展示会はどうですか?

キシタ:合同展示会に出展する予定だったのですが、展示会自体が中止になってしまいました。。

フイナム:海外に行く予定だったデザイナーさんは、すごい暇だって言ってます。

キシタ:僕も6月末のパリの展示会はなくなりました。

長谷川:パリでやってから、東京でやってるんですか?

キシタ:そうです。

長谷川:グローバルですね。

フイナム:〈スイコック〉とか〈サスクワッチファブリクス〉と同じショールームですよね。

キシタ:はい、「Murahachibu showroom」です。

長谷川:すごい名前ですね(笑)。じゃぁ、みんなで一緒に行ってるんですね。

キシタ:そうなんです。

長谷川:それなら寂しくないですね。一人で行ってるのかと思ってました。パリってそんなにいいんですか?

キシタ:みんなで行っているので、寂しくないし、とても楽しいですね。あと、服飾専門学校時代の同級生も何人か住んでますし、僕自身も以前の職場の出張で年に2回ほど行っていました。しばらく行ってなかったんですが、久しぶりにまた行き始めました。

フイナム:キシタさんといえば「Perv(パーヴ)」のイメージがあります。

キシタ:そうですね、「Perv」時代は店長とバイヤーもやっていたので、ロンドン、パリは良く行っていました。

長谷川:で、Tシャツの話なんですが、いつも作ってくれてるTシャツのボディ、あれはいつから作り始めたんですか?

キシタ:ボックスシルエットっぽいのボディのやつですよね。3年前くらいからです。

長谷川:インラインにあったんでしたっけ?

キシタ:いや、インラインのものとは違います。プリントTのボディとして、ありモノのボディをリメイクして作りました。

裏地を表地に使った「AH.H」初のオリジナルTシャツ。「HNF」にて販売

フイナム:「HNF」でも少し販売した「AH.H」のTシャツも、そのボディですよね。

キシタ:はい。一からボディを作ると、値段が高くなってしまうので。

長谷川:インラインのTシャツでいくらなんですか?

キシタ:生地から作ると、シンプルなタイプで9000円~12000円の間くらいです。

長谷川:だいぶしますね。。プリント工賃も載せると、もっとしますよね。

キシタ:はい。やっぱり生地や縫製などにこだわるとどうしても。。オリジナルボディに刺繍やプリントを入れると15000円くらいはしてしまうかもしれません。

長谷川:服作りは値段について考え始めるとすごく大変ですよね。

キシタ:値段を考えて作るのはかなり難しいですね。僕は価格考えないで作ってしまうんです。。

こちらは逆に?そのまま表地を使ったバージョン。「AH.H」ファンクラブの集いでごく少数販売。

長谷川:服作りって、どこか適当な感じが大事なんでしょうね。抜きどころと入れるところのバランスが大事というか。ある程度余白がないと着る人にとっては窮屈だし。デザインとディテールと価格って結局、繋がってきてしまう問題じゃないですか。

キシタ:そうですね。

長谷川:手を抜くというわけじゃないけれど、ディテールを減らすことで価格も下がるし、シンプルで着やすくなって、結果喜ばれるというか。でも、たまに機能とか欲しいよなぁとか思ったりすると、すごく高くなってしまったり。

キシタ:そうなんです。つねにそのジレンマにかられています。

長谷川:「AH.H」を始めたのはその手助けをしたいからなんです。僕はスタイリストなので、人に着せてこんな感じになるんだよっていうのを買う人に見せて、その服の良さを伝えてあげて、それが服を買ってもらうきっかけになったらいいなと思っていて。どういう理由でこの値段になっているのかがわかると高く思わないと思うんです。服を作って売っているのもそう言う理由です。

フイナム:なるほど。ちなみに長谷川さんから見た〈イズネス〉はどんな印象ですか??

長谷川:どうなんだろう。近すぎてよくわかんない。でもキシタさんっていう人そのものが出てる気はする。嘘がない。

フイナム:〈イズネス〉のコレクションも、昔とはけっこう変わりましたよね。

キシタ:以前はテーマを決めて、そのコレクションで完結していたのですが、いまはシーズンやコレクションにこだわらず、幅広く服を着て欲しいというふうに思っているので、最近のようになりました。

長谷川:まぁ、僕が服を作ることに一番最初に関わったのって〈イズネス〉なんだよね。

フイナム:そうなんですね!

長谷川:といっても1、2着だけど。

フイナム:どんな服だったんですか?

長谷川:ただのチノパンとかシャツとか。

フイナム:いつ頃ですか?

長谷川:いつだっけな。。当時は自分が関わっている服を雑誌で使うと、無償でやっているとはいえ、自作自演みたいで嫌だなって思ってたから、あまり公にはしてなくて。でも今は気にしなくなった。むしろ宣伝してあげたいというか。さっきも言ったけど、モデルカットを作って、それを見た人が服を買いたいという気持ちになるところまでの導線を作ってあげたい。そのきっかけのために服を作ってるんだというふうに気持ちが整理されたから。

フイナム:そのための場所として「AH.H」をうまく使っていきたいですね。

長谷川:そうだね。けど、僕は言うだけで、作るのはブランドの人。だから誌面で使いたい服を作って欲しいっていうだけなんだよね。世の中には意外と普通な服が存在しないから、キシタさんに作ってもらったんだ。自分にとってもすごく勉強になった。

キシタ:来年ブランドを立ち上げて20周年なので、引き続きよろしくお願いします。

長谷川:長い。。

キシタ:はい、地味に長いんです。

長谷川:キシタさんには若い頃にすごくお世話になって。「Perv」の頃、どうでもいいページしか作れなかった時代だったけど、快く服を貸していただいていました。今では美味い呑み屋に、よく連れていってもらっています。いつもありがとうございます。しかし、そう思うと知り合ってから随分経つんですね。。

キシタ:そうですね、25年以上のお付き合いですね。

長谷川:えー、そんなに!?

キシタ:はい。いつも本当にありがとうございます。今回も新型コロナウイルス対策のために、人との距離を置くよう求める「ソーシャルディスタンス」のTシャツを作ろうと誘っていただきました。「AH.H」のロゴを改変するとこで、ソーシャルディスタンスの概念や意識を視覚的に理解していただくためにはとても良い試みだと思いました。

フイナム:フイナムもロゴの文字を離そうっていう話になってます。

長谷川:フイナムのもあったらいいよね。離れたらスペル覚えられて、書けるようになりそう(笑)。

フイナム:そうですね(笑)。けど、本当にこういう試みはすごくいいですよね。

長谷川:三密を守ってる人って意外といなくて、まだみんな結構外に出かけてるんだよね。。三密を守って欲しいけど言いにくいことってあるし、そういうときにこのTシャツはいいのかなって思って。キシタさん、これってどういう風に作られてるか話せますか?

キシタ:Tシャツの工程ですよね?

長谷川:はい。大変さが伝わるほうがいいなと思って。ロゴは僕の方で「ナイジェルグラフ」にお願いして、書き下ろしてもらったんです。ほどよく離れている感じを出すために、何度も書き直してもらいました。

キシタ:まずプリントや刺繍の大きさを決めて仕様書を作り、版下やパンチを作ります。ボディはヘビーウェイトの大きなTシャツを縫製工場でイズネス用にカスタムをします。プリント工場でプリントをしてから、刺繍工場に送って刺繍を入れて、仕上げに出すと言う流れです。

長谷川:工場の人ってこんなときでも働いてるんですね。よく考えたら悪いことしてますね。

キシタ:けど、工場の方もいま死活問題みたいで、逆にありがとうございますって言われました。パートさんを雇って、うまく回しているみたいです。ちなみにこのロゴは左胸に横90㎜、縦41㎜くらいの大きさで入ります。「AH.H」が刺繍で、その下はプリント仕様になっています。

長谷川:ひとまずは一番自分が着たいと思う刺繍入りを作ってもらったんですが、本当は広めるにはプリントだけの方がいいですよね。ボディもいじらないほうが安くて早いし。でも、そうすると着たい服じゃなくなってしまって、意味ない(笑)。

フイナム:悩ましいですね。。ワンサイズですよね?

キシタ:はい、ワンサイズです。

長谷川:ファッションの人間として着たい服を作って、その上でこの言葉をアピールしたい。ワンサイズだから、ある程度幅広い人が買いやすくなると思う。

フイナム:これは「AH.H」のファンクラブ会員とか関係なしに販売する感じですよね?

長谷川:うん。誰でも買って欲しいし、バンバン転売して欲しい。

フイナム:(笑)。ひとまずは簡易的な「AH.H」のWEBショップを作ったので、そこで販売しましょう。もしかしたら別のところでも販売するかもしれませんが。

長谷川:とにかく離れようっていうのを伝えたい。

キシタ:はい、伝えたいです。

長谷川:で、みんなが着てくれて、行動に移してくれたら安心な社会になる。自分は大丈夫、みたいな人が多いけど、そういう話じゃないからっていうのを理解して欲しいなって思う。そのためのTシャツです(笑)。

INFORMATION

AH.H official EC ahh.official.ec/

STAFF

Direction_Akio Hasegawa
Edit_Ryo Komuta

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