PROFILE
〈グラフペーパー(Graphpaper)〉、〈フレッシュサービス(FreshService)〉、「ヒビヤ セントラル マーケット」など、様々なブランド、ショップを手がけ、ファッション、カルチャーにまつわるあらゆる領域を手がけるクリエイティブディレクター。「alpha.co.ltd」代表。
ファッションディレクター、スタイリスト。様々な媒体、広告のディレクションを手がけるなか、英国の雑誌『モノクル(MONOCLE)』では創刊よりファッションページの基礎を構築。2015年にはファッションディレクターに。2012年より2018年秋までは『ポパイ』のファッションディレクターを務めた。
THE WEEKEND SHOOTING CLUB
長谷川:最初はこのTシャツ。
南:へぇ。
長谷川:〈THE COOP〉の撮影をしたときに、重松(一真)さんがウィークエンド(THE WEEKEND CITY CLUB)のグッズをくれたの。それで毎週末撮影してるって話をしたら、シューティングクラブも作りましょうってことで作ってくれたんだ。こないだ写真展をやったときに、その名前がちょうどいいからそのまま使わせてもらって。
南:そうなんだ。
長谷川:それで編集の中川くんがずっと Tシャツを作りたいって言ってたから写真展に合わせて、Tシャツを作ろうって話になって。
南:中川くんって誰?
長谷川:たまに『AH.H』も一緒にやってるフリーの編集の子。
南:へぇ。このプリントいいね。
長谷川:これは、『ポパイ』のときに撮った写真。プリントにあんまり興味がなかったんだけど、中川くんにいろいろ説明されて、とりあえずプリントTを見に〈シュプリーム〉を売ってる店に行ったの。〈シュプリーム〉の店じゃないのに売ってる店。
南:ん?委託屋みたいな?
長谷川:そうそう。そこで〈シュプリーム〉のTシャツとかを見てると、確かにクオリティがすごくて。インクジェットとか、よくわかんないけど、そういう手法がいっぱいあるみたいなことを聞いて。
南:うんうん。
長谷川:とりあえず、それを重松さんに相談してみて。いろいろ話し合った結果、シルクスクリーンでやることになって。それでシルクを六版使って作ってもらったのがこれ。
南:いいね。普通のTシャツで六版も使うのはすごいよ。
長谷川:前も後ろもプリントで。
南:これ、ウチが永井(博)さんとやったときと多分同じだ。めっちゃ綺麗に色が出てる。
長谷川:だよね、青のグラデーションがすごいんだよ。おれもこれが出来上がったときにびっくりして、これはすごいって。
南:わかるわかる。
長谷川:本当は写真展で売ろうと思ってたんだけど、間に合わなくて。いまはとりあえず矢口くんのところで売ってる。
南:そうなんだ。
長谷川:すごいのが出来たから宣伝したいんだけど、宣伝するとあの店に転売屋がいっぱい来るからできなくて。
南:美容室に転売屋がたくさん現れるとかいやだね(笑)。でもこれ可愛い、よく出来てる。
長谷川:これを作ってみて、プリントの技術ってすごいんだなと思った。職人の技術だから、やっぱり経験も必要だったりするみたいで。版もそうだけど。
南:実はすごい技術なんだよね、プリントって。
長谷川:よく考えたら六版ってことは六種類の版を重ねるってことだからズレちゃったりすることもあるわけじゃん。それって相当すごいことだなって。
南:ほんと、アートと一緒だよ。ウォーホルもシルクスクリーンじゃん。あれはわざとズラしてたけど。これ一枚いくらなの?
長谷川:14,000円かな。
南:それくらいになるよ。ウチの永井さんのTシャツは25,000円とかだったよ。でもそれくらいやらないとちゃんと色が出ないんだよ。プリントがガビガビになるし。
長谷川:南くんのTシャツもすごいと思ったけど、ほんとに最近プリントがおもしろいんだってことに気づいた。
南:ウチのブランドもあんまりプリントしないんだけどね。
長谷川:どれぐらい技術がすごいかみたいな話はちゃんと伝えた方がいいなって最近思うんだよね。安い方がいいってみんな思うのは、当然なんだろうけど、安い方がいいって言い始めたら、中国とかそういうところで生産するしかなくなっちゃうし。でも日本には技術もあるわけだから、ちゃんと技術を理解してもらって高くても良いものを買ってもらうのがいいんじゃないかなって思う。
南:将来的に見たら高いものは全然違うよね。大事にする気持ちも変わるだろうし。
長谷川:そうだね、全然違うと思う。
Cookman
長谷川:次がこのパンツ。
南:〈レッドキャップ〉のやつ?
長谷川:ううん、〈クックマン〉っていうブランド。これはネイビーなんだけど、グリーンとかもあんの。しかも、これで4900円。プリントとかもできるんだって。
南:プリントっていうと?
長谷川:グラフィックを入れたりできるんだって。
南:あー、なるほど。いいね。
長谷川:セットアップもあって。
南:ジャケットもあんの? それいいね。やろうよ、『AH.H』で。
長谷川:これがXLなんだけど、多分アメリカのLサイズだと思う。日本でも2XLまで展開があって。
南:これ昔からあるよね。「カンナビス」のときからこういうの仕入れてた。
長谷川:確かに「カンナビス」ぽいね。化繊だから乾くのがすごく早くて。けど、肌触りはコットンみたいで。
南:見た目もコットンぽいね。
長谷川:ストライプのパンツはあんまり穿かないんだけど、なんかおもしろいなと思って。
南:いいね。あとテーパーがかかってんだよね、太くて。あれがいいんだよね。裾が汚れないようにつくられてるから。
長谷川:なるほどね、だからいいよね。
南:靴に被っちゃうと汚れちゃうからテーパーがキツくて。
長谷川:ブランドが言うにはこの腰のループがポイントなんだって。
南:それなに?
長谷川:ここにフックを付けてタオルを引っ掛けたり、カギも付けられるんだって。これをうまく使ってブランドノベルティを展開したりしてるらしい。
南:いいね、これはぜひやろうよ。
長谷川:うん、やろう。
Timberland
長谷川:次が〈ティンバーランド〉の靴。これは前にオーダーでイニシャルを入れさせてもらったやつ。革とか紐とかステッチの色とかを全部変えられて。わざとインラインの色に近づけたいからそうしたんだけど、このバーガンディが生産終了だか何だからしくて。でもこの色いいなと思うんだよね。アメリカぽいというか、なんなんだろうね、この赤は。どういう意味があるんだろう。
南:バーガンディ?
長谷川:うん、〈レッドウィング〉とか〈オールデン〉にもあるし。
南:確かにね。昔のアメリカの靴って、バーガンディがベーシックというか、黒より普通だよね。
長谷川:ブラウンよりもいいなって思っちゃうんだよね。
南:バーガンディはネイビーにも合うしね。グレーでもかっこいいし、結構万能なのかも。
長谷川:うん。だけど、なくなっちゃうんだって。もったいない。ステッチとかもオイルを染み込ませたものだったり本格的につくられているんだよね。
南:確かボート用とかだよね。
長谷川:これで2万円ちょっとで、すごく安いんだよね。
南:安いね。どこでカスタムしてくれるの?
長谷川:ネットでできるよ。
南:そんな簡単なんだ。ナイキID的な?
長谷川:そうそう、真っ黒とかにもできるし。
広告
長谷川:次は『広告』っていう雑誌。ちゃんとしたバージョンもあるんだけど、著作特集だから、わざとコピーしたものをつくってて。これはコピー機で印刷して製本したものを売ってるらしいの。
南:おもしろいね。
長谷川:むしろこっちの方が大変みたいでさ。こないだ知的財産権を専門にやってる弁護士の水野(祐)さんに取材したときにもらって。
南:「パクリ」って項目もある(笑)。
長谷川:パクリって香港の言葉なんだって。読んでると結構おもしろくて。
南:「パクリと中国」ってテーマ、すごいね。
長谷川:このアピールの仕方がおもしろいなと思って。本物バージョンはキャンバスみたいな生地でカバー出来ていて、それもいつもとは違ってるらしい。
南:どっちも置いてあると可愛いね。
長谷川:うん、それで水野さんがすごくおもしろいんだよね。元々はサブカルとか音楽がすごく好きだったらしくて、たまたま法学部にいて何かできないかなと思って知的財産権とかに興味を持ったらしく。そう思っても普通はできないよね、弁護士になるなんて。
南:なれない。
南:これ中身、超おもしろいじゃん。『パーフェクトブルー』と『ブラックスワン』のオマージュとか、俺の好きな椅子関係から何から。
長谷川:すごいおもしろいよね。
南:本としていいね、コピー品をもじってて。ただ、物としてはおもしろいけど読みづらい(笑)。
長谷川:壊れちゃいそうだよね。あ、パクリの語源は、「山中の勢力範囲を政府に察知されたり、管理されないことを意味していた」って書かれてる。たぶん香港のそういうところに工場があって、偽物の商品をいっぱいつくってたからパクリって言葉のルーツになったんだろうね。
南:なるほどね。
Souvenir T-shirt
長谷川:いつかこういうTシャツを作りたいと思ってて。
南:やばい、それ。JAPANって(笑)。
長谷川:こういうお土産屋に売ってるようなダサいやつをベースにモノを作れないかなと思ってるんだよね。
南:いいね。
長谷川:これはさすがにダサすぎるけど、もうちょいブラッシュアップさせて。ニューヨークとかにあるお土産のTシャツって結構いいのあるよね。
南:気が利いてるのがある。
長谷川:ドイツのライン川沿いにあるお城をイラスト化してるTシャツとか、イラストがかっこ良かったりして。それにドイツ語がかっこいいんだよね。
南:もう文字がね。ずるいよね。
長谷川:だからお土産Tシャツみたいなジャンルでダサいけどかっこいい、みたいなものを作れたらいいな。
南:なんか俺ももうちょっとラフなものを持って来れば良かった。しっかり選んできたから、なんか紹介するの恥ずかしいじゃん(笑)。これって普通ってコンセプトじゃなかったっけ?
長谷川:これも普通だよ(笑)。