PROFILE
イギリス・ベッドフォード出身。1996年より音楽レーベル、Mo’Waxに勤務。 XLレコーディング内にレーベルを立ち上げ、ディジー・ラスカルと契約を結ぶ。ロンドンでの弁護士事務所勤務を経て、2005年に事務弁護士資格を取得。 2011年、スケートシング氏、菱山氏とともに洋服ブランド〈C.E〉を設立。
ファッションディレクター、スタイリスト。様々な媒体、広告のディレクションを手がける。英国の雑誌『モノクル(MONOCLE)』では創刊よりファッションページの基礎を構築。2015年にファッションディレクターに就任。2012年より2018年秋まで『ポパイ』のファッションディレクターを務めた。
about GUERNSEY SWEATER
フイナム:コットンキャバのトレンチコートやミリタリークロスのモッズパーカなど、英国的な冬服ってなんだか寒そうですよね?
長谷川:イギリスの服って、目の詰まった物が多いよね。高密度のシャツとかベンタイルとか、セーターとかも。で、それを重ね着している印象があるなぁ。トビーさん、どうでしょうか?
トビー:そうですね。(着用しているガンジーセーターを指して)これは温かいですよ。
フイナム:いわゆるガンジーセーターですか?
トビー:そう、僕は若い頃からスウェットよりニットが好きで、よくガンジーセーターを着ていました。
フイナム:イギリスにおける普通のアイテムですか?
トビー:若い人で着ている人は少ないのかもしれないですが、馴染みあるアイテムだと思います。
長谷川:カシミヤの方が柔らかいし、ゴワゴワしませんか?
トビー:うん、昔はそれがイヤだったんですけど、すぐ慣れますよ。カシミアのセーターを買うこともありますが、そんなに長持ちしないですよね。
長谷川:カシミヤに比べたら、たしかに頑丈そうですね。
トビー:そう、タフだから気に入ってます。
about BUILDER’S TEA
長谷川:やっぱり紅茶を飲む人が多いですよね。ロンドンの撮影スタジオに行ったときにイギリス人スタッフたちはみんな、ティーバッグを入れたソーサー付きのカップを両手で持ちながら立ち話をしていたのを覚えています。
トビー:そうですね。でも若い人はコーヒーの方が多いかもしれません。
長谷川:スターバックスの紅茶版みたいなテイクアウトもあるんですか?
トビー:昔はあったみたいですけど、今はどうなんでしょう。サンドイッチショップで、紅茶をテイクアウェイすることはありますが。
長谷川:持ち歩きするにはティーバッグが邪魔ですよね。ずっと入れておくわけにはいかないし。
トビー:それは人によりますね。ティーバッグを入れっぱなしにする"ビルダーズティー"というスタイルもあります。
長谷川:へー。 "ビルダー"は"労働者"という意味ですか?
トビー:そう。ビルダーが休憩に飲む紅茶という意味です。
フイナム:なるほど。庶民の味ということですね。
about SNEAKER
フイナム:イギリスとアメリカでは人気のスニーカーが違いますよね。
トビー:イギリスにはバスケットボールの文化があまりないので、「エア フォース1」みたいなバスケットボールシューズの人気はないですね。
長谷川:「エア マックス」を履いているイメージがあります。
トビー:イギリスではスニーカーのことを“トレーナー”と呼びます。イギリスで人気のトレーナーというと、「エア マックス」みたいなランニングシューズということになるのかもしれません。
フイナム:あと「リーボック クラシック」も多くないですか?
トビー:はい。ステレオタイプのストリートシューズですね。
長谷川:なんであれ、皆好きなんでしょうか?
トビー:値段が高くなくて、どこでも手に入るからじゃないですか。
長谷川:〈アディダス〉も人気ありますよね?
トビー:〈アディダス〉を履いているのは、リバプールやマンチェスターなどイギリス北部のカジュアルズ(フットボールファン)のイメージがあります。
フイナム:ロンドンではあまり見かけませんか?
トビー:ライバルチームのファンと同じものを履きたくないという心理から、ロンドンでは〈リーボック〉や〈ナイキ〉に落ち着くんじゃないですか。
about OILED JACKET
フイナム:オイルドジャケットみたいな英国的なクラシックアイテムを実際に着ている人はいるんですか?
トビー:いますよ。僕のお父さんとか(笑)。田舎の人は普通に着ています。
フイナム:どちらかというと、ファッションアイテムではないということですか?
トビー:いや、カジュアルズが着ていたこともあり、ファッションアイテムとしても認知されています。
フイナム:そうなんですね。
トビー:イタリアでイギリス的なウェアとして、一時期〈バブアー〉のオイルドジャケットがお洒落なアイテムになったんですよ。その影響でイギリスのカジュアルズたちがファッションとして着ていました。
長谷川:イギリス人のなかには、イタリア好きが多いんですか?
トビー:それはあると思います。イタリア人もイギリスが気になるんじゃないですか。
長谷川:それはサッカーがリンクしているんですか?
トビー:そういった部分もありますし、テーラリングの世界でもお互いを意識し合っているところがあると思います。
長谷川:そうなんですね。